恋に恋する乙女たち ~恋する小学生とじゅうななさいの聖女~
音無 雪
第1話 百合さんと世界樹
学校からの帰り道
住宅街のゆるやかな坂道
登り切ったに丘の上 ひときわ大きな木が目に入ります。
学校からも見える大きな木『世界樹』です。
大きな空を支える太い枝
木陰には妖精さんが住んでいる世界樹です。
私が名前を付けました。 センスいいでしょ
世界樹の下には教室よりちょっと大きめの広場
ブランコやお砂場はありません。
石で作られた椅子とテーブルが2セット
緑色の石がつやつやに磨かれて世界樹を映しています。
草花が植えられて、小鳥の声も聞こえます。
いつもきちんと清掃されて汚れていることはありません。
まるで小さな森みたい。
静かな広場を世界樹が屋根のように守っています。
静かで気持ち良い場所なのでお友達ともいつも遊びに来るんですよ。
私のお母さんや近所のおばさまも集まっておしゃべりしていたりします。
大人の社交場です。
五年生にもなった私のような大人の淑女にはぴったりの場所ですね。
残念ですが同じ学校の男子が騒いでいることもあります。
男子は世界樹の聖なる力をわかっていませんからしかたありません。
おこさまですね。大きな心で許してあげるのも淑女の嗜みです。
――――
今日は誰もいませんね。
ランドセルを置いて椅子に座ると木漏れ日が綺麗です。
借りていた本を読もうかな。そういえば宿題も出ていました。
でも今日はお話ししたいです。
「百合さん こんにちは」
私の好きなお姉さん 今日は会うことができました。
お話ししたいって考えているだけでお姉さんが来てくれます。
不思議でしょ
小さなころから一緒に遊んでくれる雪ねえさま
お気に入りの世界樹広場
実は雪ねえさまのお屋敷です。
雪ねえさまのお父さんがお庭の一部を広場のようにしてくれました。
誰が使っても良いのですよ。
雪ねえさまのお母さんがいつも掃除をしているんです。
お花は近所の人たちみんなでお世話しています。
みんなで大切にしているからいつでも素敵な場所なんです。
「こんにちは 雪ねえさま」
静かに隣に座る雪ねえさま
どうして私がいることがわかったのですか。
「防犯カメラから見えるのよ」
違いますね。だまされませんよ。防犯カメラなんてどこにも見当たりません。
本当は『聖なる結界』にふれたので私が来たことがわかったのです。
世界樹広場の周りには聖なる結界があるので安全に遊べるのです。
お母さんも学校の先生もここで遊ぶのが一番安全だと言っているくらいに安全です。
聖なる結界はすごいのです。
隠していますが雪ねえさまは『聖女さま』なのです。
聖なる術が使える聖女さまです。
びっくりでしょ
聖女さまはアニメやお話の中だけではないのです。聖女さまは本当にいるのです。
私が『聖なる癒しの術』を見てしまいましたからね。間違いありません。
でもないしょのひみつですよ。
雪ねえさまの長い黒髪は聖女さまである証拠です。
聖女さまと言えば長い髪ですからね。
こんなところでも発覚するとは雪ねえさま わきが甘いですよ。
雪ねえさまにあこがれて伸ばしている私の髪はようやく肩を超えました。
腰を隠してしまうほどの長い黒髪の雪ねえさま
まだまだ追いつきそうにありません。
その代わり前髪は切りそろえておそろいのぱっつんです。
将来は黒髪美人姉妹として有名になってしまいます。どうしましょう。
まだ小学生ですから結婚をお断りできますが、将来が心配です。
雪ねえさまは男子にモテるのです。私のクラスでも人気です。
それでも婚約者を作らないのはないしょのひみつがあるはずです。
聖女さまですからね。
そんな雪ねえさまのお歳は十七歳 私よりずっと年上のお姉さん お年頃です。
遠くの学校に通われていたのでなかなか会えなかったのですが、少し前にお屋敷に戻っていらっしゃいました。
あれ・・・ 気が付いてしまいました。ちょっとおかしいです。
十七歳って高校生ですよね。
卒業のお祝いにお呼ばれしましたよ。
あの時は大学卒業のお祝いだったはずです。不思議ですね。
お母さんに聞いたら「おとめのじじょう」だから聞いちゃダメって言われました。
聖女さまは『聖なる力』で十七歳でも大学を卒業できるのかも知れないです。
ざんねんですが私の読んだぶんけんには情報がありませんでした。
それにお屋敷で何をされているのかもわからないです。
お勉強しているのでしょうか お仕事でしょうか。
今日みたいに学校がある日でもお話してもらえますし、ふといなくなると何日も会えないのです。
きっと異世界で聖女さまとして活躍されているのですね。
もしかしたらお母さんは雪ねえさまが聖女さまだと知っているのでしょうか。
くちをにごしているのはあやしいです。
実は雪ねえさまのお友達もあやしいのです。
お友達は雪ねえさまが『聖女の術』を使えることを知っています。
くちをすべらせたところを聞いてしまいました。
聖女さまはないしょのひみつがおおいのです。
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