第2話

 城の中に入ると、そこは広いロビーになっていた。

 壁や床は大理石のようなもので出来ており、天井からはシャンデリアがぶら下がっている。

 そして、奥には階段があり、その上に玉座があった。

 おそらくあそこに主催者がいるんだろう。


「ねえ、あそこに行ってみようよ」


 そう言って、少年は階段を上っていった。

 俺も後を追いかける。

 階段を上りきると、そこには一人の少女がいた。

 見た目は中学生くらいで、腰まである長い黒髪が特徴の少女だった。

 少女はこちらに気づき、振り向いた。


「ようこそいらっしゃいました。私の名はミライです。どうぞよろしくお願いいたします」


 そう言って、ペコリとお辞儀をした。

 礼儀正しい子だな。


「こちらこそよろしくね」


 少年も挨拶をする。

 すると、今度は俺の方を見て話しかけてきた。


「あなたは、お名前は何というのですか?」

「俺の名前は、御剣零時だ」

「そうですか。では、レイジさんとお呼びしてもよろしいですか?」

「別に構わないぞ」

「ありがとうございます。それでは、私からいくつか質問をさせていただきますので、正直に答えてくださいね」

「分かった」


 それから、質問が始まった。

 好きな食べ物は何か、趣味は何なのか、など色々なことを聞かれた。

 俺はそれに全て答えた。

 どうやら、彼女は俺のことを知っているらしい。だが、俺には彼女に関する記憶は無かった。

 一体、何者なんだ? そんなことを考えているうちに、質問が終わったようだ。


「ご協力ありがとうございました」


 そう言うと、また一礼する。


「ところで、ここはどこなんだ?」


 ずっと気になっていたことだ。いきなりこんな場所に連れてこられたんだ。それくらい教えてくれてもいいだろう。


「ここは、転生者が集まる場所です」

「どういうことだ?」

「そのままの意味ですよ。ここには、様々な世界から集められた人たちがいます」

「なるほどな」


 ということは、他にも同じような奴がいるのか。

 少し興味があるな。


「そういえば、お前らも転生者なんだよな?」

「はい、そうですけど……」

「じゃあ、どうやってここに来たんだ?」

「それはですね……うーん、どう説明すればいいんでしょうか……?」


 何故か言い淀んでいるようだった。何かあるのだろうか?


「どうした? 言えないことなのか?」

「……いえ、そういうわけではないのですが……」

「なら、言えるよな?」

「…………分かりました。お話します」


 そして、少女は語り始めた。

 少女の話によると、こうだそうだ。

 まず、この少女には前世の記憶があるらしい。そしてその前世で死んでしまい、神様に出会ってこの異世界に転生したそうだ。

 そして、この世界に来て最初に出会ったのがこの少年だったらしい。彼はこの城に一人で住んでいて、最初は警戒していたが、すぐに打ち解けて仲良くなったらしい。それから二人で生活するようになり、現在に至るというわけだ。

 さらに、その少年は自分の能力を明かしたらしい。それが【創造】の能力で、どんなものでも作り出せる能力だという。その能力は万能で、武器でも乗り物でも何でも作れるらしい。しかも、素材さえあれば生き物でも作れると言っていた。

 その話を聞いたとき、俺は思った。チート過ぎるだろ! と。

 まあ、俺も人のことは言えないのだが。

 そんなわけで、俺たちは今ここにいるということだ。

 話を聞き終わると、少年は自己紹介を始めた。


「僕の名前は、如月和馬だよ。よろしくね」

「ああ、よろしくな」


 俺も挨拶を返す。

 しかし、気になることがある。何故こいつは自分の名前を偽っているのか。もしかしたら、理由があるのかもしれない。

 だから、聞いてみた。


「なあ、なんでお前は名前を隠してるんだ?」

「え? ああ、それね。実は、僕はある組織に追われているんだ」

「ある組織?」

「うん。その組織の名前は【神の使徒】っていうんだ」

「神の使徒か……」


 随分と物騒な名前だな。もしかして、こいつらは危ない奴らなのか? 俺がそう考えていると、ミライが口を開いた。


「大丈夫ですよ。私たちは怪しいものではありません」


 そう言われても、簡単に信用することはできない。なんせ、初対面だからな。

 俺が疑いの目を向けていると、ミライはさらに言葉を続けた。


「そうですね。では、私たちの目的を教えましょう」

「目的だと?」

「はい。私たちが【神の使徒】と戦う理由です」

「それを教えてくれるのか?」

「ええ、もちろんですよ」


 そう言って微笑むと、話し始めた。


「私たちの目的は、神を殺すことです」

「……は?」


 今、こいつなんて言った? 殺すって言ったのか?


「ちょっと待て! 殺すってどういうことだよ!」

「言葉の通りです。神を殺して、この世界を壊すんですよ」

「そんなことできるわけないだろ!」

「いいえ、できますよ」

「なんでそう言い切れるんだよ!」

「それは、私が【創造】の力を使えるからです」

「どういう意味だよ?」

「私は、あらゆるものを作れるんです。それこそ、生物でも何でも」

「マジかよ……」


 こいつ、チート過ぎだろ。そんなの勝てるわけがない。


「まあ、そんなに怖がらないでください」

「無理言うな!」

「まあまあ、落ち着いてください」

「落ち着けるかよ!」


 もう何が何だか分からない。頭が混乱してきた。

 そんな俺を落ち着かせるためか、少年は俺に話しかけてきた。


「大丈夫だって。なんとかなるよ」

「はあ!? 何を根拠にそんなこと言ってるんだよ!」

「なんとなくかな?」

「ふざけんじゃねえぞコラァ!!」


 ダメだ、こいつと話してると疲れる。

 俺は大きく息を吐くと、気持ちを切り替えた。


「もういい。とりあえず、今はこのゲームに参加するってことでいいんだな?」

「うん。それでいいよ」

「分かった。じゃあ、早速始めようぜ」

「ちょっと待って」

「なんだよ?」

「その前に、ルールを話さないとね」


 ルール? そんなものがあるのか? 疑問に思っていると、少年が説明してくれた。


「まず、今回のゲームについて説明するね。今回のゲームの参加者は四人だけ。そのうち二人は僕たちだね」


 そう言って、俺とミライを指差す。

 残りの一人が誰なのか気になったが、今は聞かないことにした。


「それで、勝利条件は単純明快。最後まで生き残れば勝ちだよ」

「それだけなのか?」

「そうだよ」


 思ったより簡単そうだな。これならいけるかもしれない。


「それと、もう一つ注意事項があるんだ」

「なんだ?」

「僕たちはチームを組んで行動することになるんだけど、もし他の二人が死んだ場合は失格になるから気をつけてね」

「了解した」


 つまり、味方と協力して戦うってことか。なかなか面白くなってきたじゃないか。

 そう思っていると、ミライが声をかけてきた。


「それでは、そろそろ移動しましょうか」

「どこにだ?」

「決まっていますよ。戦場です」


 そう言って、ニヤリと笑うのだった。

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