非日常な日常を送る保護猫カフェに就職しました。

せん猫

ラノベやん(やんとは言っていない)

 渋谷のスクランブル交差点は多くの人が行き交う。


 思いつきで来たもののなにもすることがない。


 ふらふらとするしかない。


 本当に渋谷は人が多い。人を避けて歩くだけで疲れた。


 ふと猫カフェの看板が目に留まった。


 猫に興味はなかったけどなぜかその猫カフェに惹かれドアを開ける。


 急に目を開けていられないくらいの強い光に包まれ思わず顔を手で覆い隠す。しばらく経って恐る恐る目を開ける。


 何事もなかったかのように笑顔で店員さんが出迎えてくれた。


「いらっしゃいませ。ようこそ。保護猫カフェオハナへ。初めてのお客様ですね。お店の名前オハナは家族って意味なんです。お客様もスタッフも猫たちも家族のように親しんで自分のお家みたいにくつろいでくださいね。そして保護猫の家族になれればなってあげてくださいね」


 店内へ入ると可愛らしい女性が出迎えてくれた。勢いで入ったのとまぶしい光にびっくりしたので少し挙動不審になってしまっていると。


「はじめてのお客様ですよね……?」


「あ、え、は、はい」


明らかに挙動不審すぎる。絶対に変なやつと思われたに違いない。


「当店は保護猫のカフェですが飲食だけでも気軽にできるようになっております。両方でもかまいません。まずはこちらへどうぞ」


 思いのほか普通に対応された。よくできた店員さん。


 奥のカウンターへと案内をされる。


 ふと横を見ると猫さんたちは隣の部屋にたくさんいる。みんなゴロゴロしていてかわいい。


 カフェエリアと猫エリアは別部屋になっているから安心してごはんが食べられそう。せっかくだからなにか食べてから猫カフェ入ろうかな。高くなければいいけど……。


 ……?

 

 知らないメニューが多い……。

 

 コーヒーはわかるけど、ええと……アッポジュース? りんご? 次のはオリカンジュース???ユノス茶?エールってなんだろう?コーヒーは飲めないからなぁ。


 食べ物は……あ、サンドイッチがある。他にはロコモコ。これってハワイのやつだよね。スパムむすびもある。


 他は……またなにかよくわからないメニューがある……。

 

 たぶん多国籍ってやつ。

 

 猫カフェって言ってもおしゃれ系カフェ。

 

 とりあえず注文をする。


「あの。すみませんー注文お願いします」


「はーい」


 注文を受けてくれたのは出迎えてくれた女の子と別の女性。すらっとしている。流石渋谷にあるお店。店員さんもレベルが高い。


「おまたせしました。お決まりですか?」


「はい。ええとサンドイッチと、あと飲み物が欲しいんですが聞いたことのない飲み物が多くて……オレンジジュースみたいなものはありますか?」


 と、急に店員さんの顔色が変わる。


「あの……」


 と声をかけようとしたとき目の前を猫さんが通った。


「おーい。ツムギ。なにとまってんダ?」


「!!??!!??」


 突然その猫さんがしゃべった。東京の猫さんはしゃべられる?いや。そんなことはない。きっと他の人がしゃべっていたはず。


「オウ。おきゃくサンか。いらっしゃい。ゆっくりしてってナ。で、ツムギはいつまでとまってんダ?」


 気のせいじゃなかった……。なぜか猫さんの言葉がわかってしまった。いや、わかるわけがない。

 

 たしかに最近色々有りすぎて疲労が溜まっていたんだろう。


 私には両親がいなくてずっとおばさんのうちに居候していた。


 親族に無理やり私を押しつけられたみたいでいつも強く当たられていた。私自身も自分の家じゃないとわかっていたから肩身せまくて……。限られたお小遣いでラノベを買ったりスマホで読みながら自由な将来を夢見ていた。東京の高校に入学するために引っ越しの手続きを済ませ、自由な一人暮らしを始めることを楽しみにしていたのですが、引っ越し先に到着したら荷物が全く届いておらず、間違って学校の寮に行ってしまったのではないかと心配になり、慌てて学校に向かったのですが、なぜか入学手続きができておらず、学校に入ることすらできなかった。アパートに戻ろうとしたものの、急いできたため道に迷ってしまい、最終的には何度か訪れたことのある渋谷まで来てしまった。しかし渋谷まできたものの何をすればよいか分からなくなってしまい、「とりあえず休憩したい」と思い、目に入った猫カフェに突然入った。


 うん。たしかに自分でもテンパっていたと思っている。


 で、その猫カフェの猫さんが日本語をしゃべっていた?いやいや。そんなわけがない。


「ええとね。デンさん」


 店員のお姉さんが猫さんに話しかけた。猫さんとしゃべられるお姉さんだった!いや、だからそんなわけがない。完全に私はおかしくなってる!夢に違いない。どこから夢?さっき猫カフェのドアを開けたときにまぶしいと思っていたけどあれは頭をぶつけて目がチカチカしていたんだろう。気絶していた?うん。きっとそうだ。これはやはり夢だ。


さぁ目覚めよ。


「この子ね。もしかすると日本の子かもしれないの」 


「ホウ?つむぎたちとおなじか」


 日本の子?ここは日本ですよね?なにが同じなのかさっぱりわからない。


「ね。あなたはどこの場所からきたの?」


「うう?ごめんなさい。私はたしかに頭がおかしいみたいです」


 頭を抱えながら答える


「いえ。大丈夫よ。落ち着いてね。ゆっくりでいいから。すぐに答えなくてもいいから。どこからどうやってこのお店にきたのですか?」


 優しい店員さん。そして猫さんが落ち着かせてくれるためかスリスリしてくれる。とても癒やされる。


「私ですか……どこってさっき渋谷でたまたま見かけたこのお店に入っただけなんです」


「やっぱりね……」


 なにがやっぱりね。なんだろう?頭がおかしいってことですか?


「落ち着いて聞いてね。今あなたがいるのは渋谷にある猫カフェじゃないの。日本でもないの」


「ははは。お姉さん面白いですね。日本じゃないって。なら猫さんが喋ってるし異世界とかでも言うのですかーそんなこと。まさかそれじゃラノベじゃないですか。ははは」


 店員さんはうつ向いて黙ってしまう。


 その姿を見て慌てて外へ飛び出す。人はたくさんいるけど……建物が全然違う。


「あれ……渋谷のビルはどこ……さっき入った……のに……」


 猫カフェを見る。さっきはビルの一階にあったはずが木造の建物になっている。理解できず私はその場に座りこんでしまった。


「ん?お嬢さん。見ない顔だね。そんなとこにいると危ないよ」


 そう言って手を差し伸べてくれたのはすごいイケメンさん。


 しかし、耳の先がとても長い。とても長い。これはどうみてもエルフです。


 ふと、周りを見るとエルフの他にゴブリン。リザードマン? 人っぽい人もいる。異世界だなぁ……。


「ティリさん。こんにちは。その子うちの関係者なんです」


 と、さっきの保護猫カフェの店員さんが出てきた。


「あ、オーナーさん。そうでしたか。大丈夫そうなのであとはおまかせして私はお店へ入って大丈夫ですか?」


「はい。どうぞ」


 そう言ってティリさんと言われたイケメンさんは保護猫カフェへ入っていった。そしてこの人は店員さんではなくオーナーさんでした。


「ええと。混乱していると思いますが、一旦お店へ戻りませんか?」


 オーナーさんに連れられて再び店内へと戻る。改めて店内をみるとやはり日本にあるようなお店にしか見えない。日本で見覚えのあるものも多い。あちこち見ていると。


「たぶん。日本っぽいと思われてますよね」


「はい。外や町の人たちはどうみても異世界なんですがここだけなにか落ち着くというか日本だなぁって」


「やはりそうでしたか……。私は元井紬といいます。実はニ年ほど前に私も日本、東京からこのお店へ転移してきたのです。保護猫たちも日本にいたときの子が多いんですよ。少しお話をしませんか? さっき注文したものを食べながらね」


 そう言って私をカウンターへと案内してくれた。作ってもらったサンドイッチを食べてオレンジジュースみたいな飲み物を飲む。どちらも味は日本の物と変わらない。あっという間に食べきってしまった。


「ごちそうさまでした」


「ホットココアは飲めれるかな?サービスだから」


 オーナーさんが声をかけてくれる。大丈夫ですと答えるとすぐ出してくれた。受け取って少し飲む。これも日本で飲むのと変わらない。


「おちついたカ?? クッキーもあるけどたべるカ?」


「ありがとうございます。少し落ち着きました」


 返事をしたもののクッキーを差し出してくれたのはさっきの猫さんだった。猫さんと会話できました。


 猫さんからクッキーを受け取ると、オーナーさんがご自身のことを話してくれた。


 いつものようにお店で猫のお世話をしていたときに突然外が明るくなり気づくとこの国に来てしまったこと。そして紬さんより先にこの国へ来て王様になった内藤さんという方に助けられてこの国で保護猫カフェを続けていること。


この世界の形や地名が日本に似ているけど住んでいる人たちは様々な種族がいてとても平和だということ。


そして日本へ戻る方法はいまだわからない。ということだった。


「そうですか……日本へは戻れないんですね」


「ええ。ごめんなさい。探してはいたのですがどちらかというと国王も私もこの国で暮らすことを選んでしまって方法を探すことをやめてしまっていたのです。でもあなたが来てしまったからにはまた方法を探すわ」


「あ、それはいいです」


 即答してしまった。

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