クラフター大会を満喫する10

 塔の外へ出ると太陽から放たれる鋭い光が目に刺さってきて目の前の景色が白くぼやけています。そんな体験もゲームで出来ちゃうCAOはやっぱりすごいですね。外へ出たところでセーフタイムの1時間が終わりいよいよPvPタイムです。ようやく本編が始まり今一度心を切り替えながら、悔いのないように頑張りたいと思います。


 塔を出て30分、道らしい道を歩いて中央にある世界樹方面へ向かっています。道中の遭遇戦なら落ち着いて対処できそうですが横道から奇襲されてしまったらメイジとクラフター(侍)だと守り切れなくて勝率は少ないです。だから二人とも間隔をあけてどちらか片方が強襲されてもカバーできるように歩くことを決めました。このまま世界樹まで戦闘になることを避けたいですがちひろがいきなり止まりました。


「声を出さずに聞いてくれるかしら? この先の道にヒールを履いたプレイヤーがいるわよ! 地面にぽつぽつと穴が開いているからほぼ確定よ。より一層気を付けるのよ。もし見つけたら先制攻撃をして脅かしましょう」


 うんうんと首を縦に振るとちひろはまた歩き始めました。もう緊張はしないようにと心に決めたのにドキドキが止まりません。もし足を引っ張ったらとか動きが悪くて先にダウンしたらとか色々考えちゃいます。


「避けなさい。攻撃が来るわよ」


 ぼーと考え事をしている私の近くでちひろが大声で警告してくれました。そして肝心な相手の攻撃は私の体1.5分くらい右にずれました。もし避けろと言われなかったら火の球が直撃していたと思うと寒気がします。


「あら、これはクラフター様と腹黒メイジじゃありませんの。このようなところで出会うなんて思いもしませんでしたわ」

「私も同じことを思っていたわよ。まさかこんなところで変態お嬢様に出会うなんて思いもしなかった」

「お口を動かす余裕はあるみたいで安心しましたわ。思う存分ぼこぼこにしてあげますわ」

「あのー二人とも何でそんなに熱くなっているんですか!」

「「あなたのせいよ。ですわ!」」


 やっぱりこの二人は仲がいいように思ってきました。それにしても私のせいなんて心あたりが全くないので何か書く仕事でもあるんですかね?! でも知ってる人だからこそ負けたくないです。だから全力でマインさんと戦います。


『CAOPvPDUO大会最初の戦闘が発生しました。まもなくライブ中継を始めます。大会不参加の皆様は大スクリーンでもご視聴できるのでお楽しみくださいませ』

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る