番外編初めての買い物

「あ、あのータピオカティーを飲みに行きませんか? 私飲んだことなくてちひろさんならよく飲んでそうだし案内してくれそうなのでだめですか?」

「いきなりそんな顔でお願いしてくることがタピオカティー飲みたいなんてあなた少し変わってるわね。でも今日はちょうどオフだしいいわよ。行きましょう」


 この子から発せられるオーラは他の人たちは違う有名人と仲良くなりたいというものじゃなくて、あくまでタピオカティーを飲みに行く友達を欲しがっているように感じるわね


「これがコンビニですか! 中はどうなってるんですか? 少しだけ立ち寄ってみてもいいですか?」

「ええ、いいわよ。コンビニを利用したことないとか貴女はどんな家の出身かしら?」

「いやいや、私の家は普通ですよ? ただ外へ遊びに出してもらえなかっただけです」

「それは普通じゃなくて箱入り娘じゃないかしら?」


 問い詰めていくたびにクワナはあたふたして頓珍漢な答えをしてくるようになった。不覚にもその焦り方は面白くて少しだけ意地悪したくなった私もいたわよ。


「はいここがタピオカティーのお店よ? この時間は空いていて入りやすくていいわね。ほら好きなの頼んで会計は私が出すから気にしないでいいわよ」

「そんなの悪いです。私が払います。ここは払わせてください。払ってみたいんです。はじめてのおつかいみたいで楽しみにしてたんです。自分で会計をしてみたいんです!」

「落ち着いてそんなに大声を出したら注目の的よ? ほら周りの人もこちらを見ているわよ?」

「あ、ごめんなさい。今回は私が払うので次回はお願いします」


 クワナの財布から取り出されたのは黒いカードだった。この子もしかして私よりもお金に困ってなさそうね。それより初めての会計とかどういう訳なのよ?!


「お嬢様ようやく見つけました。もうすぐ稽古のお時間ですのでお乗りください」

「はいごめんなさい。はじめて出来たお友達と一緒にタピオカティーを飲みに来たくてついつい抜け出してしまいました」

「いえ、そのような体験をするのは旦那様も奥様も望んでいるので大丈夫です。次回からは事前にご連絡をお願いします。これは水無瀬ちひろ様でしたか、クワナお嬢様のお友達ぴったりといったら失礼かもしれませんが貴女でよかったと思います。今日はエスコートしてくださり主人に変わりお礼申し上げます」

「ちひろさん今日は楽しかったです。また今度遊びましょう!」

「は、はい」


 私はこの数時間で友達(お嬢様)と知り合いになったみたいだわ。


 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る