ふわふわ系クラフターが行く!~クラフターオールズオンライン

ヒゲツ

クラフターパンを量産する

 初めましてゲームよりも読書が好きで読書より寝ることが好きな怠け者の威瀬桑名いせくわなと申します。ついにきましたよ! 完全フルダイブ型MMORPGで視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚の五感が実装された世界で最初のゲームCAO:クラフターオールズオンラインです。 倍率500倍で世界から大注目のゲームです! どうせ落選だろうと思っていたらなんと! ヘッドスタートに当選しました。そして今日からヘッドスタートです。よく読むライトノベルでスタートして前線で活躍するのが夢で憧れだったので、すごく楽しみにしてました。




「ようこそCAOの世界へ。私はアシスタント精霊のニヴと申します。ヘッドスタート権を確認しましたのでこれより冒険することで必須なジョブを決めるためのサイコロを振りたいと思います。クワナ様はこれより先リセットできないことに同意しますか?」




「はい、します」




「かしこまりました。 サイコロの結果は0です。 おめでとうございます。可能性のジョブクラフターを授けます。これよりCAO始まりの街へワープを開始します。そこでは世界各地のプレイヤーたちが己の野望のために冒険をスタートすることでしょう。リアルタイム翻訳やその他機能もあり十分なアシスタントをできると思いますのでこの機会にお試しください。それではクラフターオールズオンライン始まりの街エピソードへ行ってらっしゃいませ」




「ちょっと待って、待ってください。クラフターって事前評......」




 そう、私が前線で無双する夢はここで終わりました。




 急いでログアウトを押しました。そしてスマートゴーグルから友達の親友のちひろに電話をかけます。




「どうしたの? そんなに声が震えてるけどCAO今日からでしょ? 私はメイジを引いたけどクワナは何だったの?」


「クラフターです」


「ご愁傷様。でも身近にクラフターがいるなら装備とかアイテムには困らないと思うからありかもしれないわ。倍率500倍のゲームで外れのクラフターねー。面白いことになりそうね。」


「面白いことじゃないですよ! 少しは慰めの言葉くらいくれてもいいじゃないですか! 私だってこんなことになるなんて思ってもいなかったんですよ?」


「落ち着きなさい。私もからかいすぎたわごめんなさいね。私は今から撮影だからクワナは先にプレイして感想を聞かせてね。明日からはゲーム三昧のスケジュールになってるから一緒にプレイしましょう。 それじゃーまた明日。」




 仕事の休憩中に電話をしても出てくれるなんて優しい人ですね。




 日本で五本の指に入る女優で親友の水無瀬ちひろは大忙しである。




「ご飯OK。飲料水OK! それじゃ改めてゲームスタート!」




 目を開けるとそこには現実世界と区別がつかないリアルに感じる世界が広がっています。これがフルダイブ型、第四世代VRってすごいですね! そして街に近づいていくと焼き立てパンのいい匂いが鼻孔をくすぐってきます。夕ご飯を食べたのにぐううとお腹が鳴ってしまったので、匂いテロされたパン屋さんでご飯を食べることにします。でもまずはステータス確認からしましょう!




「ステータスオーーープン」




〔ステータス〕


【名前】クワナ


【職業】見習いクラフター


【性別】女性


【所持金】0




【HP】5/5


【MP】0


【ATK】1


【DEF】1


【MAT】0


【INT】0






 覚悟は決めてましたが、実際にステータスを見ると私ってやっぱり弱いですね。はぁーこれからどうやって生きていけばいいのでしょうか。でも今はお腹が空いているので、パン屋さんに急ぐことにします。




「お金が足りないです」




 やっぱりお金かかりますよね。始まりの街だから無料なのではないかと少しだけ期待してましたがダメでした。落ち込みながらお店を出ようとすると冒険者ギルドでチュートリアルクエストをクリアしたらまたおいで! と店主のおじさんは優しく声をかけてくれました。こんなところで落ち込んでる暇はありません! パンを食べるために冒険者ギルドに向かいます。




「こちらがチュートリアルクエストになります。こちらを無事クリアすると他のプレイヤー様たちと合流できるようになるので頑張ってください。あと最弱モンスターとはいえ最初の戦闘なので慣れないことがあると思いますので慢心せずにお気を付けください」




 これなら最弱ステータスの私でも達成できるクエストだと思います。慢心は命取りになりますのでお気を付けてくださいとギルドのお姉さんは言ってきましたが、どんなゲームでも最弱と言われているモンスターに負けるわけありません! 早く達成して美味しいパンを食べたいです!




「よーしスライムを倒してパンを食べるぞ」


『スライムの攻撃により戦闘不能になりました。エピソードに転送します。ファーストデスなのでペナルティはありません』


『スライムの攻撃により戦闘不能になりました。エピソードに転送します。デスペナルティが発動しました。攻撃力-2されます』


『スライムの攻撃により戦闘不能になりました。エピソード(ry』




 はい、どうも! 世界最弱のスライムちゃんに三連敗しました。どうやら私の攻撃はスライムより弱いせいで持久戦をしてもHPを削ることができませんでした。それなのに二回目のデスペナルティが攻撃力マイナスですよ? 一しかない攻撃力がマイナスになったんだから三回目の挑戦は無謀でした。まさかここまで不遇職なんて思ってなかったです。それにこのスライム討伐クエストをクリアしないと、他のプレイヤーさんと合流ができないようで、このままだとチュートリアル空間に一生閉じ込められてしまいます。ぐぅぅー、それよりお腹がぺこぺこです。




「はぁー、パン食べたいです」




 低レベルのデスペナルティはゲーム内時間三十分、リアル時間十五分ほどで解除されるということので、街を探検していると街はずれの森の中にぽつりと建っている小屋があったのでお邪魔することにしました。決して不法侵入じゃないです。誰も住んでいないようだったのでお邪魔しただけです! 中を物色していると見習い万能作業台、見習い万能調理台、がありました。一通り使えることは確認することができましたがレシピは見習いクラフターにならなければ解放されないと警告が出てきたので大人しく諦めることにしました。そして探索を再開して奥の部屋に入るとそこには椅子と机が置いてありました! そんなところで喜ぶなと思うかもしれませんが、その上に私の大好きな本が置いてあるんですよ? 今はデスペナルティ中でチュートリアルクエストもクリアできない、それなら本を読んで時間を潰すことが最適だと思いませんか? 私は思います! いざ読書の世界へ。


 


 


『ユニーククエスト見習いクラフターへの道を受けますか?』


『承諾を確認しました。前提条件をクリアしているのでクエスト達成です。おめでとうございます。』


『見習いクラフターを解放しました。詳細を確認してください』




 ぱんぱかぱーん、どうやら私見習いクラフターになりました! 前提条件がデスペナルティ中に見習いクラフターの最後まで読むということでした。まさかこんな条件があるなんて気づく人はいるのでしょうか? 私は下手くそだからたまたまクリアできたのかもしれません。とりあえず見習いクラフターについてある程度理解ができました。




 見習いクラフター


 ・レシピがなくても低品質の物を製作可能。


 ・見習い万能作業台、見習い万能調理台の使用が可能。


 ・ユニークアイテム(最低)を製作可能。






 ……、理解が落ち着けません。こういう時はあれです。と、とりあえず実際に使ってみて覚えることにしましょう。見習い万能作業台を選択して製作可能アイテムアイテムにある見習いクラフター装備一式というものを製作してみます。




『見習いクラフター装備一式が完成しました。スキル万能見習いクラフターを取得しました』




 よく分からなくなってきたのでステータスを見てみます。




〔ステータス〕


【名前】クワナ


【職業】見習いクラフター


【性別】女性




【HP】5/5


【MP】0


【ATK】2 (4)


【DEF】4


【MAT】0


【INT】0




【スキル】


・アーティファクトクラフター


・万能見習いクラフター




 【装備】


・武器:見習いナイフ




・頭:見習い頭巾




・胴体:見習いローブ




・腕:なし




・足:見習いブーツ




 さっきに比べるとステータスに装備欄が増えました。もしかして私パンを早く食べたいあまりに、色々なチュートリアルを飛ばしてスライム挑んちゃいました! ってやつですよね。それよりもまだデスペナルティは解除されてないみたいなので、次は万能調理台を使ってみましょう。ここへ来る前に拾った小麦を選択して、小麦粉に変換します。そして小麦粉ができたら調理可能タブに出てきたのは『パン』! 連打連打連打10個くらい作ってましたが、全部食べるので問題ありません。




『パンができました。スキルクラフト調理を取得しました』




 パン、パンですよ! ついにパンができました。私は知っています真っ白な食パンは美味しいはずです。ではいただきます。




 今まで食べてきたパンじゃ味わえないほど美味しいです。これがお手製の味というのでしょうか。そこからの私は食べては作って食べては作ってを繰り返してました。知ってます? いくら食べても太らないなんていいことですよね。




『パンができました』


『パンができました』


『パンができました』


『パンができました』


『パンができました』


『パンができました』


『黄金パンができました』




『おめでとうございます。匿名のプレイヤーがユニークアイテム黄金パンを製作しました』


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る