10. 夜道は危ないもんね
10. 夜道は危ないもんね
そしてサキちゃんと一緒にお茶を楽しんだあと、帰りに本屋に寄ることにする。するとサキちゃんが一冊の小説を手に取る。
「可愛い表紙だね。恋愛小説かな?」
「ん?【青い春の風】。えっと……。それ百合小説だよ?」
「それって女の子同士の恋愛物?へー。ここに並んでるならすごく人気あるのかな?読んでみようかな……。」
「え!?サキちゃんが!?興味あるの!?」
「声でか!静かにしてよ凛花。他のお客さんに迷惑だよ。そんなに驚くことないじゃん。興味あるとかじゃなくて、ここに並んでて人気っぽいから読もうかなと思っただけだよ。」
少しムッとした表情でサキちゃんが答える。ごめんなさい。でも……ちょっと意外かも。まさかサキちゃんがそういうのに興味を持つなんて……。
それからあたしたちは会計を済ませて本屋を出た。時刻は既に18時半を過ぎている。すっかり遅くなったので急いで帰ろうとしたのだが、ここであたしは気付いてしまった。今朝の事を……。そういえばあたし小鳥遊先パイの連絡先知らないな。
あたしはそのままお母さんに遅くなる連絡をして小鳥遊先パイの家に向かうことにした。何でだろう。自然と足が動いていた。
ピンポーン……ガチャ インターホンを押して暫く待っているとドアが開いた。そこにはエプロン姿の小鳥遊先パイがいた。あれ?この人本当に小鳥遊先パイだよね?何かイメージが違うような……。
「あら凛花?何か忘れ物?」
あたしは思わず固まってしまった。どうしよう……。勢いで来ちゃったけど。これじゃまるでストーカーみたいじゃん……。でもこのまま帰るわけにはいかないし。よし!あたしは意を決して言う事にする。
「小鳥遊先パイ!その……連絡先教えてください!あと昨日の事も謝りたいんです!」
「えっ?そんなこと?明日部活の時で良かったのに。とりあえず中に入って」
リビングに入るとテーブルの上には料理が並べられていた。とても美味しそうだ。小鳥遊先パイ料理得意なんだ……いいお嫁さんになりそう。そしたらあたしも毎日……ってまた何考えてるんだあたしは!
「もし良かったら凛花も食べる?」
「え?いいんですか?」
「ええ。今作ってあげるから、ちゃんと親御さんには言っておくのよ?」
「それなら……泊まっていこうかな……」
「別に構わないわよ。着替えくらい貸してあげるし」
何言ってんだあたし!?普通に泊まる流れになってない!?いや!違うんですよ!ただ連絡先を聞きに来ただけですから!!でも……泊まっていこうかな。あたしは可愛いJKだし夜道は危ないもんね。そう危ないから。
あたしはお母さんに連絡して、小鳥遊先パイが作った料理を食べることになった。見た目も綺麗だし凄く美味しい。普段自炊をしているらしいから納得だ。
ご飯を食べ終わり、小鳥遊先パイは洗い物をしている。あたしはソファーに座ってぼーっとしていた。すると目の前にマグカップが置かれた。中身を見るとホットミルクが入っていた。
そしてあたしの隣に腰掛け、小鳥遊先パイは話しかけてくる。
「そう言えば昨日のこと謝りたいって?中途半端で身体がうずいてるから、もしかして私に抱かれたいって事?」
「違います!そっちじゃなくて!キスですよキス!演技とはいえ、あんな……舌を……。」
「あぁ……その話ね。正直私は気にしてないから大丈夫よ。それに私あなたの事好きだし。」
えっ?今小鳥遊先パイ好きって言った!?どういう意味だろう。友達として好きなのかそれとも……。すると小鳥遊先パイはあたしの肩に手を置いて顔を近づけてきた。そして耳元で囁かれる。
「凛花。あなた今……すごくドキドキしてるでしょ?」
そう言われて自分の心臓が高鳴っているのを感じる。顔も熱い。どうして……。小鳥遊先パイは女なのに……。嫌じゃない私がいる。
「ふふっ。先にお風呂どうぞ。私はまだやることあるから。」
「あっ……はい。」
あたしは逃げるように浴室へと向かった。服を脱ぎながら考える。なんでだろう。こんな気持ち初めてだ。まだ……自分はあの【日向に咲き誇る】の日咲凛花なのだろうか……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます