(二)-14

「どうもだいぶ儲けていたらしくて、自宅に高級外車が二台も持っていたらしいんですよ。ザマぁねえですよ」

「うらやましいねえ」

「ですね」

 そうして訪れた一瞬の沈黙の後、渋沢はいつの間にかほとんどなくなってしまった鍋の中身を補充するために、脇に置いてあった平皿を斜めにして具材を落ちるままに鍋に放り込んでいった。

 三十四インチの液晶テレビは旅番組に変わっていた。下町旅情と飲食店の紹介をしながら東京スカイツリーで開催中のイベントの紹介をしていた。

「あれ、東京タワーよりもデカいんですってね」

 謙吉が、ビールを自分のグラスに注ぎながら言った。

「らしいな。行ったことないけどな。孫でもいれば行くのかもしれないが」


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る