2話(21)

 「おい!! 危ないぞ!!」


 「花瀬さん、早く伏せて!!」


 「ありす、待って!!」


 私たちの叫びは届かず、ありすはズンズンと花子さんの方に向かっていく。


 ありす、何を考えているの。

 死んじゃったら、どうするの。


 「……ねえ」


 ありすがポツリと花子さんに話しかける。


 「おい、そんなことしたらどうなるか」


 「あなた、髪綺麗だね」


 え?


 「私、癖っ毛なの。あなたが羨ましい。」


 ありすは恐ろしい花子さんに話しかけているとは思わせないほど、ゆっくり、優しく声をかける。


 「ねえ、友達にならない?

 花子さん……じゃなくて、本当の名前も教えてほしいな」


 ありすがそう言った瞬間、辺りは光に包まれた。



 *


 「ん……」


 「ここは……?」


 目を覚ますと、空は夕暮れ。グラウンドには運動部の掛け声。校舎からは吹奏楽の音色が聞こえる。


 いつもの学校だ。

 戻って、これた。


 屋上を見渡す。樹理ちゃん、鈴木先輩、鬼龍院先輩、それにありすもいた。


 みんな、無事だ。

 

 私は安心して膝から崩れ落ちた。


 *


 「もう、ありす! なんで一人であんな危ないことしたの!」


 「だって、私が役に立つのを証明しないといれてやらないって……」


 「だからってあれはやりすぎだよ!!」


 今は無茶なことしたありすに、部室で説教タイム中。もう二度とこんなことがないようにみっちり説教してやる!


 「もう、しょこらちゃん、そんな怖い顔しないで。花ちゃんも怖がってるでしょ」

 

 「は、花ちゃん?」


 「そう、花ちゃん。でておいで」


 ありすがそう呼ぶと、ありすの後ろからヒョコッと小さい女の子が顔を出した。


 「……って、花子さん!?」


 「花子さんじゃないよ、花ちゃん。

 名前、花ちゃんって言うんだって」


 まさかの展開に、部室のみんなはあんぐり。


 というか、花子さん、花ちゃんって言うんだ……。たったの一文字違いだ。


 「……じゃなくて!! なんでここにいるの!? そもそもこんなにちっちゃくなかった気が……」


 「んー。よくわからないけどちっちゃくなっちゃったんだって。ね、花ちゃん」


 花子さん……じゃなくて花ちゃんは、コクリと頷く。

 うーん、酒天童子といい、この子といい、一体何でなんだろう。


 「あ、そうだ。花ちゃんがみんなに言いたいことあるんだって」

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