俺にもモテ期が来たかと思ったらヤンデレ地獄だった件

NAZUNA

第1話全ての始まり

 モテ期なんてどうせただの幻想だ。青春なんて初めから無いに等しかった。

 俺、佐藤優吾は数学の参考書のページを捲りながら深くため息をついた。

 俺が通っている学校は自称進学校で課題の量も多く、小テストも殆ど毎日行われる。定期試験だけじゃなくて、小テストにまで赤点というものが設定されているからちゃんと勉強をしなければ詰んでしまう。

 こんな高校に入ったのだ。彼女を作ったり友達と文化祭で楽しくはしゃぐなんてことは到底出来なかった。


「あーあ、毎日毎日小テストばかりでダルいぜ…」

 前の席に座っている友人の京平が大きく欠伸をしながら言った。

「なあ優吾、俺たちって高校選び間違えたよな…。」

「本当だよな…入学早々、全国模試をやらされるし、電車が止まったって通常授業だし、何より校則はやたらと厳しいし。」

 2人で学校への不満を言い合いながら天を仰いだ。俺たちの通っている高校は県内外からも自称進学校だと有名だった。定期的に模試はあるし、中間期末テスト以外にも実力テストというものまである。


 例え、連日の大雨で電車が止まったとしても平気で7限目まである。

 少し大きい地震があったとしても通常登校は当たり前。酷い時には台風が直撃しても通常授業だった。


「あーあ、俺も他の高校みたいに青春したいぜ…。彼女作ってデートもしたいしな〜」

 俺がため息混じりに言うと京平が声を潜めて

「あんまり焦るとメンヘラとかヤンデレに引っ掛かっちまうから気長にいった方がいいぞ。」

 と言う。メンヘラとヤンデレはアニメや漫画などで見かけたことがある。けれど、ああいうタイプって実際に居るのだろうか?

「メンヘラは百歩譲って良いとして、ヤンデレはヤバいぞ。」

 俺は京平の言っていることがよく分からずに首を傾げてしまう。

「メンヘラは何とか逃げれるけれど、ヤンデレに好かれたらもう終わりだ。逃げ場なんてどこにもない。」

「ちょっと待てよ。俺、そもそもヤンデレとメンヘラなんてものが分からないんだけど。」

 一人で語り出す京平を一旦黙らせる。京平は普段から小説やマンガを読んでいるからそういう属性について詳しいのだろう。


「いいか?メンヘラというのは承認欲求が強くて色んな人に愛してもらいたがる。つまり愛してくれるのならば誰でもいい訳だな。だから仮に好かれたとしても、メンヘラにとってより良い相手が見つかったら今までのことが嘘だったかのように離れていく。」

 京平の語りに圧倒され、俺は軽く頷くことしか出来なかった。

「問題はヤンデレの方だな。ヤンデレは特定の人に対して強い好意を抱く。そして対象に対して重すぎる愛情を注ぎまくる。恐ろしいのはここからだ。ヤンデレは好きな人をとにかく独り占めにしようとする。浮気なんてしようものならば物理的に殺されるか社会的に殺されるかのどちらかだ。」

「どっちも怖いな…。」

 俺は軽く頭を抱えながら机に伏せた。ヤンデレとメンヘラか…。多分俺にはどちらも縁のないものなんだろうな。そう思いながら参考書を机にしまった。


 今日は小テストが終わったら放課だから、早く帰って幼なじみの春夏と最近SNSで知り合った沙友理さんにでも学校の愚痴を聞いてもらおう。

そう思ったらしんどい学校も少し頑張れるような気がした。



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