7/7 幸せなユニコーン
「お疲れー」
「おう、お疲れー」
「てかお前さっきの現場キマイラと一緒だったってマジ?」
「あー、うん」
「どんな感じだった? やっぱりコンビ仲悪い感じ?」
「それがそうでもなかったんだな」
「え、そうなん? あのライオンが全部仕切ってる感じじゃないん?」
「まあ仕切ってるっちゃ仕切ってるけど、黒幕は別にいるみたいな」
「え? どっちどっち? やっぱヘビ? 気に入らんことがあるとヘビがライオンとヤギの頭に巻き付いて言うこときかすみたいな?」
「まあそのやり取りもあったと言えばあったけど、実態はもっと入り組んでたな」
「え? 入り組んでたってどういうこと?」
「まず表向きのリーダーがライオンで、裏のリーダーがヘビ、これは確定。でもヤギの影が薄いかと言ったらそうでもなかった。ヤギが優れているのは中庸のバランス力。あのコンビライオンとヘビがしょっちゅう揉めてるじゃん? 舞台でもプライベートでも。プライベートの失態を舞台でネタにして客を笑わしがてら禊して、しれっと謹慎回避してメディアに出続けるというのがある意味お家芸化してるじゃん?」
「うん」
「おれはその是非を今述べるつもりはないんだけど、ヤギがそのご意見番の立場というか、視聴者の立場で、舞台から降りた瞬間に突っ込むわけよ」
「え? それしょっちゅう文句言ってるってこと?」
「うん。30秒に一回は何らかの小言を言ってるな。計ったことないけど1分に一回行ってるのは確実。何なら20秒に一回かもしれん」
「体感で?」
「うん体感で」
「それきついな。マネージャーよりウザイやん」
「てかあのコンビマネージャーいないだろ。実質ヤギがそういう風にマネジメントしてるからいらんのよ」
「ある意味経費削減?」
「うん、表も裏も知り尽くしてる最強のマネージャーやな」
「えーライオンとヘビはそれでいいと思ってんの?」
「そこが奇妙な話だけどな、首絞められてるけど受け入れてるらしいのよ」
「ライオンはこの前のユニコーンとの密会の件で、『お前また別のキマイラ作るつもりか!』って、ヤギが珍しくキレてたのは分かるけど。てかユニコーンってライオンと別れた後ちゃっかり玉の輿だったな」
「ライオンってああ見えて意外と小心者だった。よく言えば親切で親しみやすいけど、悪く言えば顔と迫力だけ。だから周りに女侍らすんだろうな。ヘビは何と言うか、自己嫌悪を拗らせてアブノーマルスタイルで自衛してるタイプ。直接的な暴力でライオンとヤギの首絞めてるけど、あれは芸風の一種で、周りがお膳立てしてるから演じてるだけ。裏では二人にめっちゃ謝ってた。意外と苦労人らしいし、根は優しいとおれは思う」
「俺友達になるならヘビがいいな」
「おれもそうだな。ライオンもまあ。ヤギはちょっと、おれは無理だわ」
「俺もヤギ無理。話聞いてたらあのほっそい目が信用出来んくなってきた。まあ最初から大して信用してないけど」
「ヤギ昔めっちゃグレてたらしい」
「あー」
「何なら今も繋がってる説ある。下手に機嫌損ねたら埋められる。てか落とされる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます