それは優しさではなく
目の前でハンプティ・ダンプティを彼方の空へ打ち上げた葉月を見て、シロウサギは思う。
(また・・・助けられてしまった)
そのおかげで今自分の命はここに在る訳だが、その事による安堵よりも自分の無力さへの憤りの方が彼の心を占めていた。
(僕は、なんて・・・情けない・・・・)
そうして黙ってうつむくシロウサギに葉月は、
「うさぎさん」
と話しかけた。
シロウサギははっと我に返る。
「あっ・・・ハヅキ、僕は貴女に何とお礼を言えば、」
「そういうのはいいから。わたしはわたしの目的の為に行動してるんだから」
「でも・・・」
「あー、君は真面目だなあ。────いい?わたしは君を利用してるの。君は女王の居場所を知ってるはずだ。君は女王に会いに行くと言う。それならわたしは君に付いて行けば自動的にわたしも女王に会えるって寸法。わかった?」
わたし一人じゃこの国の事、何にも分からないんだからさ。と葉月は言う。
「・・・・・・・」
嘘だ、とシロウサギは思った。
彼女が初めて自分を助けてくれた時、彼女は自分の事情なんて知らなかったはずだ。
それでも彼女は見ず知らずの自分を助けてくれた。
(それに・・・彼女ほどの戦闘能力があれば、この国の住人を力ずくで屈服させて女王の居場所を聞き出す事なんて容易いはず)
それなのにわざわざ今、この国で最も面倒な立ち位置にいる自分のそばにいてくれている。
それはきっと、同情だけではできない事で。
「・・・ハヅキ、僕は」
「あー、疲れたなあ!」
「!?」
葉月は唐突にそう言ったかと思えば、とことことシロウサギのそばに歩み寄ってきた。
そうして彼を見上げて両手を広げる。
「抱っこ」
「は!?」
「わたし寝てるから。ここから移動しないと他の奴らが来るでしょ?だから運んで」
はきはきとそう言ってにっこり笑う少女。
「・・・・・・・・・・・・・・・」
────こいつ。
シロウサギは何とも形容しがたい表情を浮かべたが、やがてため息を吐いて、「・・・分かったよ」と言った。
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