得体の知れない




「あなたは・・・」


呆然と呟く。

切れ長の瞳が印象的な少女を見つめ、シロウサギが続きの言葉を口にしようとした時、先程少女に吹き飛ばされた双子が遠くでがばりと起き上がるのが見えた。


「お嬢さん!!下がって!!」


シロウサギは少女をかばうように前に出ようとして────できなかった。

彼の表情の変化を見た少女が素早く背後を振り返り、瞬く間にこちらとの距離を詰めていた双子を再び吹き飛ばしたからだ。金色の棒を自在に操って。

そして今度はそれだけでは終わらない。

裸足で地を蹴って走り出したかと思いきや、彼女はそのまま跳び立って宙をぐんぐん突き進んだ。

そのスピードは吹き飛ぶ双子よりも速く、たちまち彼らに追い付いた少女は金色の棒を手中で高速回転させながら腕をぐるんとぶん回し、




その場から双子を真下の大地へ叩き落とした。




「「が――――ッ!!」」


凄まじい勢いで大地と激突した双子はたちまち意識を失ったのだった。

その様子を遠くから見ていたシロウサギは混乱の極みにあった。

あれは────何だ。あれは、何だ!?


(あの厄介な双子をあっという間に倒してしまった)


どういう事だろう。彼女は、僕を排除しないのか?


(敵じゃ、ない・・・?)


だが味方であるはずがない。

だって今、この国の住人が自分の味方をする事など有り得ないから。


(じゃあ、彼女は一体、)


ぐるぐるとめまぐるしく思考していたシロウサギの前に、宙から少女が着地した。

どうやら彼の元へ戻って来たらしい。

何の、ために?


「・・・あ・・・・」


心臓がどくんと鳴る。

逃げなければ。逃げなければ。逃げなければ。

けれど体が動かない。

真紅の瞳が恐怖に染まるのを見て、少女は静かにまたたいた。





つづく

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