竹林の少女と人間の少年 〜竹龍の選んだ者たち〜

デバスズメ

本文

ミドリは竹林に住むバンブーエルフの少女だった。彼女は竹を使って様々なものを作るのが得意で、竹槍を持って狩りに出かけることもあった。竹林は彼女にとって安全で快適な場所だったが、そこから外に出ることはめったになかった。竹林の外には人間が住む村があったが、バンブーエルフと人間はあまり交流がなかった。


ある日、ミドリは長老から呼び出された。長老はミドリに人間の村に行くように命じた。人間の村では、最近凶暴なクマが出現して村人を襲っていたという。長老はミドリにクマを倒すように頼んだ。ミドリは驚いたが、長老の言うことに逆らえなかった。彼女は竹槍を持って竹林を出て、人間の村に向かった。


人間の村に着いたミドリは、村人たちの恐怖と不安を感じた。彼らはクマの襲撃に備えて家に閉じこもっていた。ミドリはクマの気配を探して村の周りを歩き回った。やがて、彼女は森の中から大きな唸り声を聞いた。それはクマの声だった。ミドリは勇気を振り絞って森に入っていった。


森の中でミドリはクマと対峙した。クマは巨大で凶暴で、ミドリを見つけるとすぐに襲いかかってきた。ミドリは竹槍を構えてクマの動きに対応した。彼女は身軽で素早く、クマの攻撃をかわしながら竹槍で刺し続けた。やがて、クマは力尽きて倒れた。ミドリは息を切らしてクマの死体を見つめた。


そのとき、森の外から人間の声が聞こえてきた。「クマが倒れているぞ!」「誰かがやっつけてくれたんだ!」「すごい!感謝しなくちゃ!」

ミドリは声の主を見ると、村人たちが森に入ってきているのを見た。彼らはミドリに気づいて驚いたが、すぐに感謝の言葉を述べてきた。「ありがとう!君がクマを倒してくれたんだね!」「君はどこから来たの?バンブーエルフだろう?」「君は本当に勇敢だ


ミドリは村人たちの言葉に戸惑った。彼女は人間と話すのに慣れていなかったし、自分のしたことがどういう意味を持つのか分からなかった。彼女は長老に報告するために竹林に戻ろうとしたが、村人たちは彼女を引き止めた。「待ってくれ!君はもう少し村にいてくれないか?」「君のおかげで村は平和になったんだ。感謝の気持ちを伝えたいんだ」「君は竹林から来たんだろう?竹林について教えてくれないか?」

ミドリは村人たちの願いを断れなかった。彼女は竹林に住むバンブーエルフとして、人間と仲良くすることが大切だと思った。彼女は村人たちについていって、村の中を見て回った。村人たちはミドリに色々なものを見せてくれた。食べ物や衣服や道具やおもちゃなど、ミドリにとって新鮮で興味深いものばかりだった。ミドリは村人たちの暮らしに感心した。


一方、村人たちはミドリに竹林について聞いた。ミドリは竹林での生活や文化や歴史を説明した。竹林はバンブーエルフにとって神聖な場所で、竹は彼らの命の源だった。バンブーエルフは竹を大切にして、竹と共に暮らしていた。ミドリは竹林の美しさや楽しさを語った。村人たちはミドリの話に興味を持った。


こうして、ミドリと村人たちは互いに知り合って、友情を深めていった。ミドリは人間の世界に触れて、自分の視野が広がったと感じた。村人たちはバンブーエルフの存在に感謝して、自分たちの隣人として尊重した。ミドリは長老に報告することを忘れて、しばらく村に滞在することにした。


ミドリは村に滞在するうちに、村の長老の孫息子であるユウタと仲良くなった。ユウタはミドリと同じ年くらいで、好奇心旺盛で明るい性格だった。ユウタはミドリに村のことや人間のことを教えてくれたし、ミドリはユウタに竹林のことやバンブーエルフのことを教えてあげた。二人は一緒に遊んだり話したりして、楽しい時間を過ごした。


ある日、ユウタはミドリに竹林に連れて行ってほしいと頼んだ。ユウタは竹林に興味があったし、ミドリの故郷を見てみたかった。ミドリは最初はためらったが、ユウタの願いを聞き入れて、竹林に連れて行くことにした。二人は竹槍を持って村を出て、竹林に向かった。


竹林に着いたユウタは、目を輝かせて周りを見回した。竹林は静かで神秘的で美しかった。ユウタは竹林の中を歩いて、竹の音や匂いや感触を楽しんだ。ミドリはユウタに竹林の見どころや注意点を教えた。二人は竹林で探検したり狩りしたりして、自然の魅力に浸った。


そのとき、二人は竹林の奥にあるバンブーエルフの集落に近づいていることに気づかなかった。集落では、長老がミドリの帰りを待っていた。長老はミドリが人間の村に行ってからずっと戻ってこないことに不安を感じていた。長老はバンブーエルフの者たちに探索隊を組ませて、ミドリを捜すように命じた。


探索隊は竹林の中を捜し回ったが、なかなかミドリの姿を見つけられなかった。やがて、探索隊の一人が奇妙な声を聞いた。それは人間の声だった。探索隊の者は声の方向に向かってみると、そこにはミドリと一緒に歩く人間の少年がいた。探索隊の者は驚いて、すぐに長老に知らせるように仲間に伝えた。


長老は探索隊の者からの報告を聞いて、怒りと悲しみに満ちた。長老はミドリが人間と仲良くなって、竹林に連れてきたことに憤慨した。長老は人間をバンブーエルフの敵とみなしていた。人間は竹林を荒らして、バンブーエルフを追い出そうとしていたと信じていた。長老はミドリを裏切り者と呼んで、彼女を罰することを決めた。


長老は探索隊の者たちに命じて、ミドリとユウタを捕まえるようにした。探索隊の者たちはミドリとユウタに近づいて、彼らに襲いかかった。ミドリは突然の襲撃に驚いて、ユウタを守ろうとした。ユウタはミドリの仲間たちがなぜ敵対的なのか分からなかったが、ミドリの危機を感じて、彼女を助けようとした。二人は竹槍で応戦したが、数で劣っていた。


やがて、二人は探索隊の者たちに囲まれてしまった。探索隊の者たちはミドリとユウタを縛って、集落に連れて行った。集落では、長老が厳しい表情で二人を待っていた。長老はミドリに対して怒鳴りつけた。「なぜ人間を竹林に連れてきたのだ?」「お前はバンブーエルフの仲間ではなくなったのか?」「お前は人間に魅了されて、我々の敵になったのか?」

ミドリは長老の言葉に涙がこぼれた。彼女は長老に対して反論した。「私は人間を竹林に連れてきましたが、それは彼が私の友達だからです」「私はバンブーエルフの仲間であり続けますが、それと同時に人間とも友達になりました」「私は人間に魅了されませんでした。私は人間とバンブーエルフが仲良くできることを知りました」


長老はミドリの言葉に耳を貸さなかった。長老はミドリが人間に洗脳されて、バンブーエルフの敵になったと思った。長老はミドリに対して冷酷な判決を下した。「お前はバンブーエルフの裏切り者だ。お前は竹林から追放される。お前は二度と竹林に戻ってくることはできない。お前は人間と一緒に行け。お前はもう我々の仲間ではない」


ミドリは長老の判決に絶望した。彼女は竹林を離れることができなかった。竹林は彼女の故郷で、彼女の命だった。彼女は長老に懇願した。「お願いします。私を追放しないでください。私は竹林を愛しています。私はバンブーエルフを愛しています。私は人間とも友達になりたいだけです」


ユウタはミドリの悲しみに心を痛めた。彼はミドリが竹林を離れることを望んでいなかった。彼はミドリが竹林で幸せに暮らすことを望んでいた。彼は長老に対して訴えた。「お願いします。彼女を追放しないでください。彼女は何も悪いことをしていません。彼女はクマを倒して、私たちの村を救ってくれました。彼女は私の友達です」


しかし、長老も村人たちも、ミドリとユウタの言葉に耳を傾けなかった。彼らは人間を嫌っていて、ミドリが人間と仲良くすることを許せなかった。彼らはミドリとユウタを竹林から追い出そうとした。


そのとき、竹林の外から大きな音が聞こえてきた。それは人間の村からの音だった。人間の村では、火事が起きていて、村人たちが悲鳴を上げていた。火事の原因は、クマの仲間たちだった。クマの仲間たちはクマが倒されたことに怒って、復讐のために村に攻め込んできたのだった。


ミドリとユウタは人間の村からの音に驚いた。彼らは人間の村が火事になっていることに気づいた。彼らは人間の村に助けに行こうとしたが、バンブーエルフの者たちに邪魔された。バンブーエルフの者たちは人間の村が火事になっても無関心だった。彼らは人間の村が滅びても構わないと思っていた。


しかし、ミドリとユウタは諦めなかった。彼らは竹槍でバンブーエルフの者たちと戦って、竹林から抜け出そうとした。彼らは人間の村に住む友達や家族を助けたかった。彼らは人間の村とバンブーエルフの集落が仲良くできることを願っていた。


そのとき、竹林の中から別の音が聞こえてきた。それは竹林を守る神様である竹龍(ちくりゅう)の声だった。竹龍は竹林に住む巨大な龍で、バンブーエルフにとって最高の存在だった。竹龍は普段は姿を見せなかったが、竹林に危機が迫るときに現れて、バンブーエルフを助けてくれた。


竹龍はバンブーエルフの者たちに対して怒りの声を上げた。「何をしているのだ?人間の村が火事になっているのに、助けに行かないのか?」「人間はお前たちの隣人だ。お前たちは人間と仲良くするべきだ」「お前たちはミドリを追放しようとしたが、それは間違っている。ミドリは人間と友達になって、お前たちに新しい道を示そうとした」「お前たちはミドリを尊敬すべきだ。ミドリは竹龍の選んだ者だ」


バンブーエルフの者たちは竹龍の声に驚いて、頭を下げた。彼らは竹龍の言葉に従わなければならなかった。彼らはミドリとユウタを解放して、謝罪した。「ミドリ、ユウタ、ごめんなさい。私たちは間違っていました」「私たちは人間を敵だと思っていましたが、それは違っていました」「私たちはミドリが人間と友達になったことを認められませんでしたが、それは素晴らしいことでした」「私たちはミドリを追放しようとしましたが、それは許されないことでした」


ミドリとユウタはバンブーエルフの者たちの謝罪に感動した。彼らはバンブーエルフの者たちに対して笑顔を見せた。「ありがとう。私たちは許します」「私たちはみんな仲間です。私たちはみんな友達です」「私たちは人間の村に助けに行きましょう。私たちは人間の村を救いましょう」


竹龍はミドリとユウタの言葉に満足した。竹龍は彼らに対して優しい声で話しかけた。「ミドリ、ユウタ、よくやった。お前たちは竹林と人間の村の架け橋になった」「お前たちは竹龍の選んだ者だ。お前たちは竹龍の力を受け取ることができる」「お前たちは竹龍の力を使って、人間の村を救え。お前たちは竹林と人間の村の平和を守れ」


竹龍はミドリとユウタに竹龍の力を与えた。竹龍の力は竹槍に宿って、光り輝いた。ミドリとユウタは竹槍を持って、人間の村に向かった。バンブーエルフの者たちも彼らについていった。彼らは人間の村を救うために、一致団結した。


人間の村では、火事が広がっていて、村人たちが逃げ惑っていた。クマの仲間たちは村を破壊して、村人たちを襲っていた。村人たちにはクマの仲間たちに対抗する力がなかった。


そのとき、竹林から助けがやってきた。ミドリとユウタとバンブーエルフの者たちが現れて、クマの仲間たちと戦った。彼らは竹槍でクマの仲間たちを倒していった。特にミドリとユウタは竹龍の力でクマの仲間たちを圧倒した。


やがて、クマの仲間たちは敗走した。火事も消し止められた。人間の村は救われた。


村人たちはミドリとユウタとバンブーエルフの者たちに感謝の言葉を述べた。「ありがとう!君たちがいなかったら、私たちはみんな死んでいたかもしれない」「君たちは本当に勇敢だ。君たちは私たちの英雄だ」「君たちは竹林から来たんだね?竹林についてもっと教えてくれないか?」


ミドリとユウタとバンブーエルフの者たちは村人たちの言葉に笑顔を見せた。「どういたしまして。私たちはみんな仲間です。私たちはみんな友達です」「私たちは竹林から来ました。竹林は私たちの故郷です。竹林についてお話ししましょう」


こうして、ミドリとユウタとバンブーエルフの者たちと村人たちは互いに知り合って、友情を深めていった。ミドリとユウタは竹林と人間の村の架け橋になった。彼らは竹龍の選んだ者だった。


これは、バンブーエルフの少女「ミドリ」と人間の少年「ユウタ」と竹龍(ちくりゅう)の物語である。


おしまい。

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