幕間 王子クリスティアン2(魔紋)
クリスティアン王子はあっさり引き下がった訳ではない。
だってそうだろう。伝説の女神が自分の目の前に降臨したのだ。降臨した女神を手に入れればどうこうという伝説はクリス王子にはどうでも良かった。
国の為、世界の為という大義名分もどうでも良い。
とにかく自分のものにしたい。異世界に帰すつもりはもちろんない。今まで望まぬモノに魅了をかけられて苦しくて仕方がなかった。それらをすべて取っ払ってくれた乙女をどうして愛さずにいられよう。
異界の乙女であればなおさらに。さらにさらに、見てしまったのだ、彼女のオールヌードを──。
目が釘付けになった。あの美しい裸体を、肢体を、自分以外の者に渡す訳にはいかない。絶対にだ──。
彼女は今眠っている。深く深く深く。薬ではなく、クリス王子の睡眠魔法で梨奈はあっさりくったりと眠ってしまった。
「ジェリー」
『はーいー』
「リナにこの世界にいて欲しかったら、私に協力しろ」
『食べないー、主は食べられないよ―』
「食べるんじゃないっ!」
まったく、この魔物は頭がいいのか悪いのか。
「リナに魔紋を刻む、私以外を受け入れないように」
『あんたー、ソレって大概だな―』
「リナが異界に帰ってしまってもいいのか」
仕える主は非常に美味なフェロモンをくれる。元の異界に帰ってしまえば永遠にあり付けなくなる。頭のいいスライムは王子の言わんとする事が分かった。
この王子は主と交尾をしたいのだ。交尾をすればスライムの好物のフェロモンがたっぷり出る。ウィンウィンの関係だ。
『分かった―』
ジェリーは案外簡単に承諾して、仕切りの枕からずるりと降りた。
クリス王子は梨奈の服を脱がしにかかる。部屋着の前ボタンを手早く外して、下着に手をかけ引きずり下ろす。梨奈の白い下腹部が曝された。
『あんた―、手慣れてるな―。そこは淫紋付けるとこー?』
ジェリーが脇からピンクの頭をもたげて覗いている。
「貞操の魔紋だ。スライムの癖によく知っているな」
『何度か―、襲われたしー』
ジェリーはピンク頭のヒロインになって、色々な男を魅了していた。襲われる様な事もあったのか。元がコレでも外側が可愛い女の子だったら襲うのか。
王子は何ともいえない顔をしながらも、梨奈の下腹部から目を離さないで、魔法で魔紋を形作って刻み付けて行く。
「お前の方が襲ったりして、いないだろうな」
『食べてもいい奴はー、食べた―』
「食べたのか……」
『あーそうかー、あんた見ていたのか―』
「夢でな。食べる所は見ていないが」
クリス王子が梨奈の下腹部に手を置いて呪文を唱えると、王子の瞳と髪の色をした魔紋が浮かび上がる。
「定着──」
手をかざして魔力を流すと白く光って、梨奈の身体の中に吸収されて消えた。
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