スマホゲーム王

ルンルン太郎

第1話

葉山裕二は毎朝5時に起きる。それは何故かスマホゲームのデイリーの更新がその時間だからだ。仕事が終わった後でもいいのではないかと思うだろうが、いち早くゲームに触れていたいからである。


「おはようございます」


早朝から誰か起きていないかとコメントを残してみると直ぐに返答があった。名前はマリエルだ。女性だろうか。


「おはようございます。起きるの早いですね」


「ははは、いつもの事です。デイリー消化したくて」


「私も毎朝デイリーこなしてます」


「仲間ですね。まあ、このゲームしている人は全員仲間ですが。廃課金している方々は神ですけどね」


「それわかります。私は無課金なのですがプレイできてるのは課金して下さる方々のおかけですから」


「ですよねー」


葉山裕二とマリエルの会話は初対面なのに長く続いてる方だ。普通は挨拶して終わりでそのままデイリー消化だ。たまたま話す気になったのかも知れない。


「それではそろそろデイリーしてきますね。また明日」


「私もそろそろ。また明日この時間にお会いしましょう」


葉山裕二はチャット画面を閉じて日課のデイリー消化に移った。15分ほどで終わると、今度は小説サイトを覗いてみた。


「お、読者が150人も増えてる。順調だな。このぶんなら課金できるひ日も近いかも知れない」


葉山裕二は今現在無課金ユーザーである。課金は小説サイトで稼いだ金でしようとしている。その理由は別のゲームにガッツリ課金している為だ。


葉山裕二がプレイしているスマホゲームは2つ1つはこのゲームメフィストエレメント通称メフェエレである。ガッツリ課金している方のゲームは刑務所無期懲役という名前で通称刑期無だ。


「さて次はケイキムだ」


葉山裕二は刑期無を開始した。


「小説の読者150人増えて合計5058人になった」


葉山裕二はまたデイリーを始める前にチャットにコメント投稿した。今度は誰からの返事もない。刑期無は刑務所のゲームと独特なので過疎っている。メフェエレは売上ランキング17位だが、刑期無は売上ランキング94と微妙なラインだ。


それでも、限定キャラのおかげで200位から94位まで順位を上げたので頑張っているほうだろう。


「お、ユウジンおめでとう。限定キャラ完全体にしただけあるな」


「コメッコか。おはよう。ありがとう読者増えてめっちゃ嬉しい。メフェエレに課金する為に小説で稼ぐんだ。あのゲームはこのゲームの5倍は金必要そうだし。キャラを完全体にするまで18体いるんだぜ? 刑期無は6体と良心的だけどさ?」


「そんなゲーム辞めて刑期無1本にしろよ」


「いや、メフェエレから人連れて来て刑期無の売り上げランキング上げて寿命伸ばすんだ」


「あーそれな。限定キャラ来るまでサ終レベルだったもんな。俺はまだまだ行けると思ってたけどランキング圏外は辛かった」


「だろー俺も心配してたんだよ限定キャラが出て石貯めてた人達がようやく課金して今の94位まで上がったけどさー」


石とはサファイアであり、キャラを入手するガチャを回せたり、体力を補充して周回したりするのに使えるものだ。葉山裕二が金がないのは限定キャラのデレンを完全体にして、そのキャラと相性のいいゴウというキャラを手に入れた為だ。


デレンはクリティカル攻撃が強くて、ゴウはそれを30%高める事が出来る。他にもパグモルというキャラはクリティカル率100%を超えるとクリティカル率の分だけ攻撃力が上がる。ゴウの30%アップはすなわち攻撃力30%アップとなるのだ。


この為、葉山裕二は無理して課金したのだった。クリティカル率が高いといい事のあるキャラを集めた編成を組みたい為に彼は相当無理をした。貯金に手をつけたのだ。


彼の職業は販売員。現場関係とは違い、そこまで給料はよくない。それなのに5万の出費は大きすぎる。メフェエレは更に5倍掛かるので25万相当の課金をしないと完全体にはなれない仕組みと言えよう。


「デイリー終わった。じゃあ、夜になコメッコ」


「ああ、ユウジン夜にな」


葉山裕二はコメッコに挨拶して落ちた。それから歯を磨いて朝食を食べた。その後、デンタルリンスでうがいして口の中を綺麗にして、時間まで録画したテレビ番組を観てから身なりを整えて職場に向かった。新しい1日の始まりだ。

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