第29話 両親の前で兄が弟へ公開告白?
両親がアメリカから一時帰国してきた。
前に会ったときから、僕とリョウジの関係は大きく変わってしまった。ほんとうにいろいろなことがあった。僕も変わったし、リョウジも変わった。
しかし両親はそんなに変わっていなかった。時間はそれほど経ってはいないから当たり前だろうけど。
「ちゃんとキレイにしてるね」
部屋を一通り見回した後に、母が僕に言った。
「ショウが掃除を頑張ってるんで」
そして、親が用意してきたデパートの和食弁当を食べながら、リョウジが返した。
「いや、2人でやってますよ」と返して
リョウジと目が合い、笑いあった。
「あら、2人は相変わらず仲いい感じなのね、良かったわ」
母と父も笑いながら話した。そして今のアメリカでの仕事の状況や生活のことも話した。
すると母が箸を止めて話し出す。
「あ、そうだ、リョウジくん、モデルの件、すごいじゃない、やっぱりカッコいいからね」
「いやあ」
リョウジはやはり照れくさい様子だ。
「シロタさんとはいろいろ話しておいたからね。厳しいと思うけど、やるべきことはちゃんとやりなさいね」
父・ノボルはいつになく真剣な面持ちで話すけど、声色はやっぱり優しい。
「はい」
リョウジは大人しくうなずいた。同じ業界に入ったのだから、先輩といえるからだろうか。もう大人の世界に入ったんだなと実感した。
「今後のことも考えて決めたのよね。偉いと思うわリョウジくん。ショウは・・まだ早いかな」
母が存在感のなかった僕へ話を振ってくれたのはいいけど、ちょっと答えるのは難しいことだ。
「だね、まだ全然考えてないよ」
少しうなだれて、そう言ってしまった後に、ノボルが話しだした。
「ショウくん、まだやりたいことがなかったら、大学に行くのもいいんじゃないかな、私もそうだったけど大学4年間で、それが見つかったからね」
たおやかな笑顔で僕に語りかける様子に、生まれて初めて父親というものを感じた。
「そうだね、ありがとう・・・ございます。お父さん」
「おお、お父さん!お父さんなんて初めて呼ばれたよ、いつもリョウジにはオヤジオヤジって呼ばれてるから、なんか嬉しいなあ」
意外なノボルの反応に、驚くとともに嬉しくなった。
リョウジとノボル、親子でも人間性が違うように感じた。共通するのは優しいところなのかな。
「ああ、そうだ。今日は話したいことがあって」
食事を終えて片付けが終わると、母が本題とばかりに切り出してきた。
僕とリョウジの間に緊張が走ったような気がした。何だろう。
「そんなたいしたことじゃないけど、あの部屋ね」
「あの部屋?」
僕は焦って聞き返してしまう。
「今、物置にしてる部屋、あそこにおいてるものを、処分するか他に預けるかにして、とりあえず空けようと思うの。そしたら、今は2人で1部屋だから、1人でそこ使って、ということ」
「狭いだろう、あそこに君たち2人だなんて。悪いなと思って」
そう告げた両親達は笑顔だったけど、僕はやはり戸惑っていた。2人の生活が変わってしまう、といっても、別に部屋が変わるだけだし、仕方ないのかなと思っていたら
「自分は、今のままがいいです!」
リョウジがコブシをテーブルの上に乗せて、少し震えるように大きめの声で話し始めた。
「どういうことかしら?」
母は不思議そうにリョウジを覗き込んだ。
「元々ショウと同じ部屋で住みたいと言い出したのはオレでした」
「そうだったな」
ノボルがうなずく。
「それはショウを初めて見たときから、絶対仲良くなりたいし、なれると思ったからです!」
僕は圧倒されていた。2人で僕に話したことを親にも言っているからだ。
「あの、オレたち、初対面なのに、ほとんど初対面になのにすげぇ仲良くなれたのは、部屋が一緒だったからだと思うんです。もし同じ家でも違う部屋だったら、ずっと距離が遠かったかもしれないって」
リョウジの目がうるんできているように見えた。
「それにショウは、いつもオレの話を聞いてくれて、なんかこう、心開けるっていうか、こんなの初めてな感じで・・」
明らかに様子が違うリョウジに、皆が引きはじめているのがわかった。けどリョウジはひるまない。
「だから、ずっとショウのそばにいたいんです。部屋はそのままがいいんです。オレは・・」
「わかったわ」
母はなだめるようにリョウジに言う。
「部屋は好きにしたらいいのよ。そのままでもいいの。それ言うのを忘れてたけど」
「そうだな、リョウジの気持ちはわかったけど、ショウくんはどうなのかな」
ノボルが僕に気を使ってくれた。素直に返す。
「あの、僕も、同じ気持ちです」
「ショウ!」
するとリョウジが僕に抱きついてきた!お互い座ったままだから変な体制になってしまったけど。
「あら!両思いなのね」
「良かったなリョウジ」
思いかけず両親が煽ってきてしまった。どうなっているんだ。
「2人がここまで仲良くなってくれるなんて」
母の言葉にリョウジが強く反応する。
「はい、オレはショウのことが」
するとテーブルにある僕の手を掴んできた。
「ショウのことが好きです!」
「・・・」
その言葉に後に静寂が続いてしまったけど、
「おとうと、大好きな弟です!」
というフォローのようなリョウジの言葉に場は和んだ。
「フフ、2人はずっと仲良くやれそうね」
「はい、2人で。な!?」
リョウジが目を合わせてくる。
「え、はい」
「ショウは相変わらずね」
母の容赦ない指摘が入る。
「オレは、ショウのそんなところも好きです!」
父と母は顔を合わせ微笑み合い、僕は冷や汗を掻いていた。いいのかなって。
「私は、リョウジのこんな姿を始めてみたよ」
ノボルが笑顔のまま話し出す。
「自分の心の中を正直に話せるようになった、素晴らしいことだ」
「そうなのね」
うなづく母。
「これもショウくんのおかげだな。ありがとう」
「いいえそんな、お父さん」
「うはは、やっぱりショウくんにそう呼ばれると嬉しいな」
「オヤジ・・」
リョウジは父の僕への甘い態度に少しやきもきしているように見えた。
「あ、そうだ。お母さん、明日からのアレ・・2人に行かせたらどうかな」
「ああ、いいわね。キャンセルよりは」
アレとは何だろう。リョウジと目を合わせた。父が打ち明ける。
「実はな、明日から翠明館を予約してて、お母さんと日本でゆっくりしたくて」
「翠明館・・あそこか」
リョウジは知っているようだった。
「ああ、ショウくんに説明すると、昔からリョウジとたまに泊まりに行ってた温泉旅館、そこ予約してたんだけど、いろいろあってダメになったから、キャンセルしようと思って」
「それで、もったいないから2人で行ってもらおうってことよね?」
「そう。今日は金曜だから、明日から1泊、2人は空いてるかな」
「はい!空いてます!」
リョウジが即答して大きな声で返事をした。まるで何かが爆発したかのような感情が見える。
「あの、僕も大丈夫」押されたように僕も言った。
「じゃあ、翠明館さんには私から連絡しておく。駅から送迎してもらえばいいかな。後でリョウジに詳細送るからな」
すると机の下にある僕の手をリョウジが掴んできた。そして何度も押してくる。これは嬉しさを伝えたいのだろうか。
「了解です!」その声はやはり破裂するかのよう。
「2人が仲良くして、ちゃんとやっているから、これはご褒美ね」
「そうだな、私達の分まで楽しんできて」
両親もそっと手を繋いで見つめ合っている。息子達は隠れて手を繋いでいる。
僕はこれでいいのだろうかとまだ戸惑ってしまった、リョウジの目を見られない。
すると、リョウジがそっと囁いてきた。
「なあ、これ新婚旅行だよな、オレたちの」
それを言ったリョウジの顔は、
やっぱりカッコよくて、可愛いと
思ってしまった・・
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます