ハワイアンブルーと群青劇

たくひあい

××××××


0.

後からやっぱ味方だったっていうやつは、基本誰の味方でも無い。

■■■■■■■■■■




 これは例えばの話なんだけど、自分が見張られているとして、例えばそれに気付いたとしよう。

……その時点で自分に出来る事って、なんだろう?

カメラを睨むこと? 組織を罵倒すること?警察でも呼ぶ?

誰がやってたなんて証拠もないのに?

どの位の規模かもわからないものに無暗に突っ込むのは危険だし、突っ込んでどうなるって言うんだ? 「で?」と言われさえすれば話はおしまいだ。

未解決事件なんていうのも、多くの場合別に真相が分からないからじゃない、『わかってもわからなくても大抵はどうしようもない』のだと、つまりそういう話なんだけど……





「此処数日、君を観測して驚いていたんだけど」


――と、彼は言う。

ぼくは何も言わず、画面の奥を睨んでいる。


「見たところ、人よりも覚えが良いらしいね」

見知らぬ影が仰々しく手を広げて笑った。


「凄いよ。あの対談にしたって、そうだ」

彼は一人、喋りつづけた。


「ずっと監視し続けて来たんだが、こちらが何も情報を与えていないのに視覚化や環境設定など、かなり正確な理解を拾ってきた。なかなか出来る事ではない」

そりゃそうだ。それがぼくなのだから、とは教えてやらない。


「彼らが血眼になってまで幸野前カナの仕業と信じで疑わない訳だ」





彼らは、ぼくを試すように言う。


幸野前カナ。

カナ。カナガワ、最近よく聞く名前だった。

誰なのだろう? 

ぼくが『此処』に居る事と関係があるのだろうか。

試すように、 ヒロシ、メグミ、カナ、そんな名前を出していたと思う。

今言えるのはそのくらいだけれど……






「あの、用が済んだんなら――――」

ぼくは、ふと意を決して何か言おうとした。

      「彼女は未だに潜伏先がわからない」

彼が、それに被せるように言う。


「見つからな過ぎてついには西尾を立てたりなんかしたらしいしね。西尾カナ。ってねフフフ……情報源を探して喚き散らす場面ってのはペルソナ3でも見たかな」


ぼくが何か言うより早く、部屋中に設置されたモニターが一斉に真っ赤な表示に切り替わった。


「決めた。君なら、我々の企みを話せるかもしれない」




「こんな話を知ってるかい?」




『――――明治天皇はある日を境に別人に入れ替わっている。』















「明治……天皇?」





『盗ませてくれた恩人には感謝している』

『知って居る? 君から多くの作品が生まれた。二次的なすべてのものは辿って、君のこれらを調べるのに役に立ったよ』



────全ての作家に感謝。


・・・





 場面が変わり世界中がモニターだらけになっている。

あちこちから、『スマイル』が0円で降ってきているような、プロジェクションマッピングに包まれる。

「……」あああああああああああああああああああああああああああああああ

いくつかのモニターには、ぼくの小さい頃の虐待日記も、表示されている。

それらが仲の悪い身内にも知られてしまっているかもしれない。

事こんなの、ただの人生の汚点でしかない話を他人にするわけがないのに、何故彼が先回りして全世界に配信、味方面しているんだ? 

何処から調べて……「何処から、これが?」

ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

「あ、これ? 拾って来たんだ。弟子の作品といってある。面識はないけど」ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ

面識が無いやつの個人情報を持ってたら

「日記を偽造してあげるよ。君は何の問題も無かったことにしてあげる」

確か一人称で書かれた小説や脚本に置ける没入感と精神状態を研究した話もあった筈。

ああああああああああああああああああああああ

怖い!!!怖い!!入っ……て来……で……

「あーーーっ! 酷い! せっかくのプレゼントなんだよ!?人がこんなに優しくしているのに、そういう態度ばかり続けると、お祝いしたくなくなっちゃうなぁ!」

自分が嫌われているとか、不快感を与えているって発想は無いのか?強制的に外部に生放送。タイアップ。

例えば窃盗と無断侵入によって訪れた危機を自分で回収しただけの、感謝どころか逮捕されるべきだという話。

何か制作するときには『リアリティとリアルを履き違えてはいけない』

作品に置いても境目となる場所を作る事、デフォルメされる部分を残す事は重要な事なのだという。これは実は収録後などに『作品に憑かれた』と称されて原作者や出演者が自殺するようなものも存在するらしい程の危険な行為であって、

まずいだろ。

「そうだ、ホストがしたことにすればいい。ほら、スーパーラヴァーズってあるだろう? あれに重ねればセンシティブをスルーして作家側にでも通せるんじゃないかな」「lisanhaは……気になるけれど。まぁ、名誉棄損で全部まとめればいいし。誰も検索しないだろう」



その中でも原作者への無断の映像、舞台化……中でも特に極端に演出のリアリティを追及するのはタブーである事が書かれている。無断で演出に使うと言うのは本来それだけの重さが生じるべき、慎重に協議されるべきだったりするのだけど―――

 しかし近年ではそれをわざわざやる事を賢さや逆張りだと勘違いする輩が作家や演出家になる例が増えていて、安易に『リアリティ』、『これが「セカイ」』などと言ってしまって滑っている。彼のような人達はそう言った部分での学が無い、という事なのだろうか。



お前が……なもの……だろ!!!

……………は、……じゃない!

これは例えば痩せているモデルが、怠けるだけのデブの食事を見るような…

 視覚情報が一番偉いと思っているような人間は無意識に漫画やアニメに優位性を見出して、ずかずかと「見たくない」「聞きたくない」に何の神経も使わず踏み込んでくる。



もしもし……


そこに ――――は、おられますか?

……




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