盗賊団からの建国を
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序章 〜とある男の人生〜
「あなたとはもうこれっきりよ。2度と私達の前に顔を見せないで。」
「新しいお父さんはお金持ちでカッコよくて優しいの。もうお母さんとわたしに関わらないでね。」
あれから10年の月日が経ったが、まだあの時を鮮明に思い出す。俺の何がいけなかったのだろうか。
俺はお世辞にも稼ぎが良いとは言えなかったが、真面目に働き、休みの日は家族サービスもして、妻にも娘にも愛情を注いできたつもりだった。
あの日までは、仲の良い家族としてやってきたつもりだった。それに対して、なんの疑いも持っていなかった。
幼少期から親に虐待を受けながら育った俺が見つけた、たった一つの居場所だった。
それが、一瞬にして音を立てて崩れていった。
幸福だと思い日々を過ごしていたのは俺だけだったようだ。妻は浮気をしており、再婚まで意思を固めていた。
知らぬ間に娘も浮気相手と会っており、既にそちら側を新しい父親として認識し、最愛の娘にも俺は裏切られた。
その日のうちに妻と娘は家を出て、俺は1人家に取り残された。
そして、2人はそれ以来帰ってくることはなかった。
俺は精神を患い、極度の人間不信となり会社に行って働くこともできず、1年後ようやく立ち直り、職を求めたが再就職先すら見つからなかった。
仕方なく、食うために派遣社員として慣れない仕事も必死に頑張った。
「なんでこんなことになっちまったんだろうなぁ・・・。俺が何か悪いことでもしたのかよ。」
六畳一間のボロアパートで安酒を飲みながら俺は1人呟いた。
誕生日を祝ってくれる家族も友人もいない。天涯孤独とはまさにこのこと。
明日もまたこの日常が繰り返される。
仕事に行き、帰ってきて酒を飲み、将来の不安を抱えてはそれを1人で愚痴る。
いったい俺の人生は何なのだろうか。どうしてこうなったのか。
後悔ばかりがつのり、前を向けず後ろを振り返ってはため息をつく人生。やり直せるならやり直したい。
「うっ!うぐぅぅぅぅ。」
しかも最近、胸の痛みがひどい。突如として鋭い痛みが胸の奥に来る。精神的にも肉体的にも限界を感じている。
にしても、今回の痛みは尋常じゃない。今までと訳が違う。いつもは一瞬の痛みなのに。
痛すぎてだんだん意識が遠のくのを感じる。俺はこのまま死ぬのか?・・・このままじゃ、死ぬんだろうな。
・・・・しかし、なんで死にそうになっている今、俺はこんなに冷静なんだろうか?
なんなら知らぬ間に笑みすら浮かんでくる。
痛みで動けないはずなのに。このままじゃ命が危ないはずなのに。
・・・・・あぁ、俺は死にたかったのか。この日常から逃げ出したかったのか。
死ねることが嬉しいのか・・・。
本当になんだったんだろうな、俺の人生って。生きた証を何も残せなかったどころか、後悔と恨みしか残っていない。
これで終わりかぁ・・・。クソみたいな人生だった。
もし次の人生があるのなら、愛に囲まれた人生を送ってみたい。家族が欲しい。裏切られたくない。自分の居場所が欲しい。何か自分が生きた証を残したい。死ぬ時に独りは嫌だ。
意識が、、、、途切れる、、、、
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