第46話助言

 その後もロイドのストーカーか?と思われる行為を延々と聞かされ続けた。

 最初は恋愛相談かと思っていた周囲は、ここにきて漸く気付いた。

 

 ロイドは無自覚だと――――


 誰が聞いても「ああ、意中の相手に対する恋愛相談だね」と思われるのにだ。


(((((そういえばマスミが留学してきた頃からアホロイドはマスミにベッタリだった……)))))



 ロイドの奇行に悩まされていたイートン校の教員と生徒たちは当時はその事に気付かなかった。というよりもそこまで頭が回らなかったというべきだろう。ロイドの奇行のフォローと日本人留学生たちに対する「イギリス紳士」のイメージアップに忙しくて。


(((((スキンシップ云々を言ってはいるがアホロイド自身はそれ嫌いな方じゃなかったか?いや、嫌いというよりも苦手意識もってたよな?)))))



 イートン校の奇行種ロイドと好き好んでスキンシップをとる者はいなかった。

 そして、奇行種ロイドの留学先は日本。

 日本は他国と違ってスキンシップ過多ではない。どちらかというと身体接触のない挨拶が主流だし、あっても握手が精々だ。


(((((あーーこういうところでも日本に世話になっていたのか)))))


 空気を読む日本人たちのことだ。

 きっとロイドがスキンシップを苦手としていたのに気付いていたはずだ。


(((((だからか。だから日本文化にのめり込んだのか……)))))


 

 周囲は半ば悟りを開いた感じだった。

 そして、奇行種ロイドを放し飼いにしてはいけない事も悟った。誰かが首輪をつけてリードを引っ張らないといけない事を嫌でも理解した。


 でも誰がそれをする?


 周囲は互いを見渡した。目があうと皆が同じ事を考えていた事に気付き苦笑するしかなかった。「紳士クラブ」の面々がどんよりとする中で奇行種ロイドはやはり奇行種ロイドだった。話が更に変態チックになっている。



「ロイド、お前、そのことはマスミには言うなよ」


 流石に行動に移されたら困るため一人が注意を促した。

 そしてこうも付け加えた。


「今、付き合っている恋人を練習にしてみたらどうだ?」


 アドバイスにしては最悪な事を言っているが、周囲はその事に気付かない。言った本人は善意だ。それで奇行種ロイドの座標が別の人間に向かえばいい、と思っただけである。その言葉に、ロイドは目から鱗が落ちたという表情をした。


(((((あれ?もしかするとこれが正解か!?この表情なら上手くいくんじゃないのか!!?)))))


 まさかの助言が大成功したと思い込み始めた周囲の者たちとロイドであった。

 けれど、この助言が後に最悪の事態を招くことになるのだ、この時は誰も予想もしていなかった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る