第2話 美魔女の弟子
俺は
「なぁ、ルーさんや」
「なんだいコタロー?」
「そろそろ戻してくれんかのぉ」
「それは無理ってもんだよ」
「……なんでだよー!俺はずっとこのままか?」
「いや、普通に歳を取れば良いじゃないか。それにここは地球じゃなくて異世界になるんだから新しい人生だと思って生きれば良いさ」
そう、異世界なんだよここは!
「俺、これからどうすりゃいいんだ」
「まずは魔法を覚えるために魔導脈を鍛えるよ」
「なんだそれ?」
相変わらずの下着姿でルーが教えてくれる。
魔導脈とは身体の中にある魔力を通す管のようなもので、鍛えないと魔法を上手く使えないらしい。
「んじゃチャチャッとやっちまうかね」
「な、何する気だ!痛いのはやだぞ」
「痛くない痛くない。最初だけだから」
ルーの手が胸にあてられる。
「いひゃぁぁ!いででででで」
「あー、うるさい!男なんだから少し我慢しなさい」
「男でもいだいもんはいだぁぁぁい!」
胸から全身に引き裂かれるような痛みが駆け巡る。
「今日はこんなもんかね。毎日これをやるよ」
「っはぁ、はぁ、はぁ、ば、馬鹿だろ!俺が壊れてしまうわ!」
「あっはっは!壊れるもんかい、これでも弱くやってるよ。三歳児の身体だからね」
煙草に火をつけて笑ってるルーに殺意が目覚める。
「手加減してこれかよ!いつかギャフンと言わせてやるからな!」
「ギャフン。あっはっは」
馬鹿にしてやがる!くっそ!
にしても良い身体してんだよなぁ、ロングの黒髪も艶があって綺麗だし気だるそうな瞳にツンとした鼻、唇も真っ赤で妖艶な雰囲気。俺が元の体だったら…。
「なに発情期みたいな顔してんだい?三歳児がしていい顔じゃないよ」
と、引かれてしまった。
「う、うるせぇ。それよかここは異世界ってのは分かったけど詳しく教えろよ」
「あんたが十五歳まで面倒見てあげるんだから焦らない、焦らない。それまでにはちゃんと一人前にしてあげるよ」
後で分かったが、ルーは黒の魔女と呼ばれて人々から恐れられてるらしい。
この家は森の中にあるらしく、なかなか人が入って来ない。世捨て人のように生活しているようだが、ちょいちょい街には降りているらしい。
この世界はルナディアといって中世くらいの世界観に魔法が混じったラノベでよくある感じだ。モンスターもいればダンジョンもあるらしく冒険者が多くいる。そんなところで一人前になるには色々とやらされるわけで、
「うぼふっ!」
「ほら、さっさと立って構えな!」
「くっ、殺せ」
「くっコロするくらい元気じゃないか、さっさと立って構える」
足に力が入らずプルプルと子鹿のように立ち上がると木刀を構える。
「しゃー!もう無理だぞー!」
「そっからが訓練ってもんだ」
青あざだらけの俺に鞭打つように苦い薬を飲ませてくる悪魔。
「回復魔法は元の状態に戻すから効率が悪い。だからこの薬をのんで身体を作るんだよ」
「にぎゃい…もっと美味しい薬作れよ!」
「黙って飲みなよ。ほんと口だけ達者なんだから」
「うっせ、誰のせいでこんなんなってんだよ!」
「自分のせいだろ?」
「……はい」
あの時の俺に言ってやりたい!魔女に気をつけろってな!
剣術、魔法、ご飯、モンスター、モンスター、モンスター。
「やぁーってられるか!なんだよ、昼飯の後はモンスター狩りばっかじゃねぇか!俺はまだ三歳児だぞ」
傷だらけで重い剣を振り回す俺を見てるだけのルー。
「スライム程度なら三歳児でもやれるだろ?実際二匹は倒したじゃないか」
「死にたくないからな!っと、こんにゃろ!こんにゃろ!」
「いいぞー、その調子だょ」
なんとかスライムを倒すとその場にへたり込む。
「レベルが上がったんじゃないかい?」
「…へ?ここってレベルあるの?」
「まぁ、あるはあるねぇ。ステータスって唱えな」
「す、ステータス」
目の前に半透明のホログラムのようなものが浮かび上がる。
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コタロー 三歳
レベル2
力 F
体 F
速 F
魔 F
運 F
魔女の弟子
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「おお、すげぇ」
「簡易ステータスだからそれくらいしか出ないけどね。目安にはなるだろ?」
「がんばれば上がるんだな!」
俺はワクワクしてきた。魔法があって、頑張れば評価されるなんて日本では無かったことだ。
「さて、まだまだスライムを倒してもらうよ」
「え?今日はこの辺でいいんじゃないかな?」
「いーや、私の弟子ならさっさと一人前になってもらわなくっちゃね」
悪魔女め!
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