第500話 賭けと条件
『…松ちゃんそれは間違っている。』
俺は説く、好きな娘には幸せになって欲しいでしょ!
それを…自分の愛玩動物みたいな扱いで…傷つけて侮辱して…無かったことに?
玲奈さんが…俺の憧れのあの娘がそんな目にあうなんて絶対許せない!
ママがあんな目にあって何故玲奈さんに同じ道を歩かせる?!
『好きだったら…本当に好きだったら自分のことよりその人を優先してあげたくなる。好きで好きで好きでたまらないなら幸せで笑顔であって欲しいって願える。
それが愛じゃ無い?』
恥ずかしい言葉を並べる。
頭の端っこで赤面している俺がいる!
でも止まらない!止められない!
『…じゃあお前にわかんのか?』
年下かつ、今まで従順だった俺が喧嘩腰で説教して来るのが不愉快だったんだろう、松ちゃんはコロリと態度を変えて苛立ちながら、
『お金だって地位だって名誉だってうちの家ならなんでも手に入る。
それが幸せじゃ無い?』
『幸せじゃない!』
即答!断言できる!
玲奈さんは優秀で何でもできる!
欲しいものがあれば自分で努力して手に入れる人だ。
そして人の笑顔や喜んでいる姿を何より愛する気高い娘!
俺の憧れ!お月様!
『…愛ねぇ…。』
松ちゃんは小馬鹿にするように、感じ悪い意地悪な感じで俺に問うた。
それはまるで出会った頃の松ちゃんのよう。
『じゃあ聞くけどさ?愛ってなんだ?』
ふーう。
深呼吸する。
勝負所だ。なんかわかる。
青井とのタイマンや外町との直接交渉。最近だと津南との勝負もそうだった。
これも男と男の真剣勝負!
俺はもちろんこう言った…!
☆ ☆ ☆
父さんからの受け売り。
俺の父さんが身を持って体現する俺が知ってる1番大きな愛の形。
借金?残業?休日出勤?上等!
ひーちゃんの医療費関連でうちには借金があり生活は厳しい。
でも父さんは、
『ひーちゃんが毎日ニコニコして元気。
奥さんが笑ってる、息子も娘も逞しく育ってる。
これほど幸せなことは無い。』
※娘も逞しく育ちましたw
これが漢だろ。
いつか子供の頃、俺はお風呂で父さんに聞いた。
『愛ってなあに?』
『躊躇わないことさ。』
俺にはその
☆ ☆ ☆
『躊躇わないこと!』
『躊躇わないこと…?』
復唱する松ちゃん。
だってそうでしょ?愛あればこそリスクもコストも全て度外視して即断即決!
躊躇わずにその最善と思われる手を打つ。
どんな代償を払おうとも後悔は無い。
それが俺が知ってる愛で、俺が知ってる
松ちゃんは動揺しながら、
『じゃあ…お前なら…お前なら…。』
俺は黙って続きを待つ。
松ちゃんはしばし躊躇ったあと、
『なら…お前は…玲奈さんと婚約破棄しろって当初の話しをするんだな?』
…!!!
核心に来た…来てしまった…!
まだ時期尚早だと…いやこれ以上は…ままよ!
『…松ちゃん…いや、松方新二さん。
俺に何か報いたいなら…玲奈さんを…香椎玲奈さんを解放してあげてください…!』
俺はその場で頭を下げた。
前回土下座とか気分悪いって言われたから土下座はしない。
でもカーペットに頭が付きそうなほど俺は頭を下げる!
『…お願いしますっ!
お願いします…。』
頭を下げる俺からは松ちゃんが見えない。
どんな表情をしている?どんな目で見てる?
いやそんなの関係無い。
『…俺はお前も玲奈さんも…手放したく無い…。』
少し呆然とした声が聞こえる。
『…じゃあお前の代わりに玲奈さんの代わりにお前に何が差し出せる?』
お金も無い、地位も力も。
俺は無力なクソガキでしか無くって…。
虫が良いのはわかってる。
あの香椎玲奈を手放す、断念するなんて生半可な贄じゃ釣り合わないのはわかってる…でも!
『じゃあ…お前の代わりに望かひーちゃん差し出せって言ったら差し出せんの?』
『…俺には自分より大事なモノが、命より大切な人が3人居ます。
香椎玲奈、望、光です。
俺より大事な人なので俺の代わりにはなりません。』
毅然として断る。
厳しい。
生半可なことで香椎玲奈を解放できるなんて甘いこと考えちゃいなかったけど…松ちゃん厳しい。
まだ時期尚早だったな…でも黙っていられなかった!
『…そこまで玲奈さん好きなんだな…。』
頭は下げたままだから松ちゃんの表情はわからない。
口調は感情がこもらず全く感情が読み取れない。
『だったらさ…。』
?!
なにか条件?条件が何であれ俺は飲むだろう!
松ちゃんは一瞬黙って、口を開く。
『…じゃあ、賭けようか?』
『賭け?』
俺が顔を上げると松ちゃんはにやりと笑った。
暇潰しできる!って顔。
嫌な感じ…!
松ちゃんはうーんって考え込んで、
『…この1カ月で俺に何か食べさせて美味いって言わせたら…玲奈さんとの婚約破棄同意してやる…!
…やるか?』
松ちゃんに美味いって言わせる?
そもそも松ちゃんはグルメな人で先日の鉄板焼きの話も普通でしょってコメント。
何食っても皮肉げな感想しか言わない男!うちに来て母さんハンバーグでさえ結構美味い止まり!
唯一言ったのが…ママの手料理だけ。
しかも自分でコメントは調整出来る。
不利だ…不利すぎる。
『お願いします!』
躊躇わない!これしか無いんだもん!
松ちゃんにとって暇潰しかつ断るためのゲームでも!
死中に活路を求めるならそれ位のリスクを…!
俺は即決する。
松ちゃんはニヤニヤしてる…嫌な感じ…
『で、条件だけど…?』
『条件?』
『もし美味いって言わせられなかったら…承お前もう二度と玲奈さんの婚約問題口出すなよ?あと一生俺のパシリな?』
…わかった。
『…取り下げるなら今のうちだぞ?』
『…それで良い。』
松ちゃんは焦りながら考え込みもう一つ条件を出した。
『…そんなに愛があるなら言えるよな?
もし…婚約破棄に応じても…承…お前は玲奈さんと付き合ったり結婚出来ない…それでも誓えるか?』
頭をガンって殴られたような衝撃!
俺が玲奈さんと…付き合う…結婚?
流石に結婚は少ししか想像出来ない…
でもその妄想の幸せそうなこと!
もし…そうなったら幸せだろうなぁ…
死んでも良いわ。
だから俺は…
『…それでも良い。
誓う。もし松ちゃんが婚約破棄しても俺は玲奈さんと付き合わないし、結婚しない…。』
何故外町といい皆んな俺に誓わせたがるのか…!
そして誓わせた松ちゃんが狼狽えるのか…?
…良い夢見たなぁ…それでも金も地位も力も無い俺が超絶金持ちの松ちゃんに差し出せるのは自分しか無いわけで。
ましてあの香椎玲奈を諦めろなんてお願い…俺も相応の代償を支払わなきゃ釣り合いが取れない…!
俺は玲奈さんに誓ってる。
俺が何とかするって。
確かこんなこと、
『それが玲奈さんの願いなら俺が必ず叶えるから!
俺が持ってる力、才能、知恵、努力、お金、人なんでも全部を使って、いやらしい手でも悪辣な手でもどんな手段でもなんでも使って必ず玲奈さんの願い叶えてみせる!』
俺は躊躇わなかった。
俺は…今後香椎玲奈と交際や結婚はしないって松ちゃんに誓った。
誓いは漢にとって神聖不可侵。
…告白はしたけど…付き合えるって気がして無かったのに何でこんなに胸が痛いんだろう…。
でも、それで良い、あの子の願いを叶える為ならば…!
松ちゃんは終始キョドって何度も俺に確認して俺はその度にそう誓った。
…松ちゃんとの賭けが始まった…!
☆ ☆ ☆
ナンバリング500話目!閑話など入れるともっと多いけど。
重め話しになりましたw400話目は甘めだったのにねw
承くんはどうするのでしょうか?
松ちゃんがらしくなってきましたw
最近いい人っぽくなりすぎてた!
また怒られるかな?ビクビクしながらの500話目でした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます