第66話 到着

2時頃に京都駅へ到着する。

車内で動けるし特別息苦しいとかないのにのに外へ出ると体を伸ばして深呼吸してしまうのは何故なんだろう?


 駅で点呼して班長の俺はクラス委員長の外町に異常なしと報告。

みんないるってことで駅の外の大型バスに搭乗して清水寺へ向かう。


いきなり有名な観光地!

クラス単位で動くのだが朱色が鮮やかな門を抜け、立派な三重塔を拝観していよいよ有名な本堂、舞台を見る。


崖から迫り出した舞台から見る景色は俺の語彙では表現出来ない美しさだった。

ぼーっとしばらくそこから動けなくって景色をずっと眺めていた。

景色を見た後は本堂の作りをまじまじと見ていた。


何百年前の人もこれを見て感動してるんだろうって思うと歴史建造物ってすごいなあって素直に思う。

何百年前作った時良い!って価値観が何百年経った現代も良い!って感じる、きっと何百年後も良い!ってなるのだろう。価値は変わるものでもあるし普遍的でもある?


気づくと担任の柳先生が側に居た。

『立花は歴史とか好きだな?』


『そうですね、昔の人の苦労やコンセプトみたいなの想像するとたまらないです。』


『京都はいいよな。歴史的に貴重なものだらけ!』


『本当ですよね!』


『歴史の中にその時代の今があるんだわかるか?』


『その時代の流行りとかって事です?』


『そうそう、立花の好きな武将も当時最新鋭の武器を装備してたり、偉い将軍様がこんな『寺』作りたい!とか理想を追い求めたり、今出来る技術の全てをぶちこんだり。』


『確かに。』


『歴史って重いけど、俺の担当の美術もだけど人間の作ったもので本質は

「人間の思い」なんだよ。』


『なるほど。』


柳先生の言うことは俺の中にストンと入ってくる。


『どの時代も人間の本質なんてそんなに変わらない。立花くらいの年代は良いことも悪いこともいっぱい集めて大っきくなっていくんだ。』


『俺、自分を大きい袋だって思ってます、色んな人が色んな物を投げ込んでいっぱいになって消化して大きくなっていくイメージ。』


蒼天航路っていう三国志の漫画の劉備の自分評なのだが。

なるほどって先生は呟く。


『先生じゃなくっておっさんとして言うと

一瞬でも1分でも1時間でも一生物の思い出、それを青春って言うんだ。

それをいっぱい持ってるやつは一生幸せなんだぞ?

この修学旅行でも見つけられるといいな?』


『深いっすね。』


本当にそう思った。


喋りすぎたわって手をひらひらして先生は他の生徒の様子を見に行った。

先生ともっと話してたいって思った。



清水寺良かった。

2時間ほどの滞在で今度は八坂神社へバスで向かう。

八坂神社は祇園祭で有名な神社で素戔嗚尊スサノオノミコト櫛名田比売命クシナダヒメノミコトを祀っている神社でこれもまた素晴らしい。

縁結びに美人祈願、商売繁盛とご利益に通じた神様を祀ってる。


香椎さんが一生懸命お参りしてるのを遠くから眺める。

(香椎さん俺からしたら女神様だよなあ。)

って思う。


ここも2時間ほど。

楽しい時間はあっというま。

旅館へ向かう。


旅館の部屋割りっていうの?男子は大部屋で全員18名一緒ってすごくない?

女子は15名を4部屋でって明らかに差別。


しかし、意外にも大部屋楽しい。

いつも嫌な陽キャたちも今日はフレンドリーで旅行テンションでみんな陽気で一体感。

あの外町ですら。


『立花、清水寺良かったよな!』


『ああ、すごい良い!舞台すげえ!』


『凄かったよな!』

小石まで入ってきた。


え?本当はいいやつなの?

ジャイアンみたいに映画の時だけ良いやつみたいな感じなの?


でもこんな外町なら仲良くできる。

このまま行けたら良いなあって思わずにはいられない。


ウノしようぜー!

外町グループに誘われて俺が入っても外町は嫌な顔しない。


外町『ほら立花ドローフォー!』


立花『マジか?』


でも外町のウノいやらしい。


今だけかもしれない、それでも今日だけでも良い。

クラスの中の垣根は今日は存在しなかった。

陽キャも陰キャもマッチョもぼっちもみんなでハイテンションに遊び、肩を叩き、TVのお笑いに笑い転げた。控えめに言って最高に楽しかった。

不登校の保利くんも来たら良かったのになあって思った。



男子部屋を覗きにきた伊勢さんが怪しむほど男子は一体感があった。

大食堂で食事後に各班に別れて明日の自由行動の工程や諸々確認をする。


女子部屋か男子の大部屋でするのだが案の上小石が駄々をこねて女子部屋入れて!って騒いだから男子の大部屋ですることになった。

まあ4部屋しか女子も部屋ないから6班中2班は元々男子部屋でやる予定だったしね。


3班男子の大部屋で打ち合わせしていた。

諸々確認した。元々何回か打ち合わせしてるし今更することないよね。

強いていうと天気と移動が多いから持っていく荷物は少ない方がいいってことを確認する位。

ただ、明日は午前少し雨降りそうなんだよね。午後は晴れそうなんだけども。


話終わって雑談を少しした。で時間来たから解散ってなった。

香椎さんが小声で


『女子部屋遊びに来る?』


『いや?男子の大部屋超楽しいよ、遊びに来る?』


『え?意外。立花くんがそんなこと言うなんて。』


確かに。で、続けて小声で


『明日、楽しみだね?』


悪戯っぽく笑うと香椎さんたち女子は部屋へ帰って行った。


『女子部屋なんかいい匂いがしたー!』


女子部屋で打ち合わせ班は大盛り上がりだった。

男子部屋班はスンってテンションの落ちた瞳でそれをみていた。


10時消灯だけど寝れるわけがない。

テレビ付けてみんなでおしゃべり。

先生来て注意されて、また消灯されて。


だいぶ夜中になってきた。


『おい、好きな子の名前言えよ!』


こうゆうのって本当にあるんだ!


『俺、香椎さん…。』


小石が言った!すげえ、よく言えるな、勇気あるぜ。


『俺も。』

『俺もなんだ』

『実は俺も…』

7人名乗り出た、香椎さんすげえな…。

俺も入れたら最低このクラス8人?黙ってるやつ、寝てるやつ、他クラス入れたら何人居るの?



ちなみに伊勢さんも2人いた。



外町が言った。

『立花は?』


『…。』

俺は言えなかった。



外町は言った。



『香椎さんだろ?』



『…。』

俺は言えなかった。



『香椎さん、意外と胸大きいよな!』

『脚超綺麗だよなあ。』

『さっき見たけど湯上がりの香椎さんやばい』

『ちなみに香椎さんのお姉ちゃん胸すっごいんだぜ?』

『玲奈!って呼び捨てにして抱きつきたい!』

『玲奈、良いな!玲奈って呼びたい!』

『玲奈!玲奈!』

成実しげざねさんだってバインバイン!』


(香椎さんピンクのブラしてるんだぜ?レースあしらったやつ!)

そんなこと言えるはずもない。なんか人に聞かせられないような話になってきた。

こうして1日目の夜はふけていく。

(明日は一歩、一歩踏み出そう。)

そう思ってるうちに眠ってしまった。



ーーーーーーーーー

女子部屋も同じようなもの


『私外町くんが好き…。』

『『きゃー!!』』

『香椎さんは?』

『私は居ないかな?』

『本当は?外町くんでしょ?』

『?

違うけど?』


喋り疲れて眠り始める女子たち。

(明日、機会があれば必殺のを!)

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