第58話 弟のお迎え
文化祭が終わった。
クラスとしては2部門制し、体育祭もクラスMVPを取り学年最強!と陽キャ達は盛り上がってる。
11月中旬、久しぶりに普通の日常。
何気に生徒会選挙なんて期間ではあるが身近に関わり合いある人いない為全然関係ない。
一時外町が生徒会長に出馬の話あったけど断念したらしい。あいつ下級生に人気無いみたい。
もう少しすると冬になり期末テストだクリスマスだと慌ただしくなるが今は一息。
そんな部活の無い水曜の放課後。
久しぶりに美術室に顔を出し香椎さんに声かける。
香椎さんが美術室に居るのは久しぶりに見る。
『立花くん!』
『香椎さん、今日は俺用事あるから帰るね?』
『!
ごめんね、文化祭で忙しくって仕事押し付けて、出し物に夢中で全然…。』
『ううん、そういう補佐が仕事だから大丈夫。
じゃあこれで…。』
『待って!怒ってる?』
『ううん、そうじゃないって。ひーちゃん持ってるから…。』
『ひーちゃん?ひーちゃんって?!』
香椎さんに詰められて、仕方なく事情を説明した。
もうじき3歳になる弟が今日から託児所に預けられていて5時までに迎えに行かなきゃいけない。
今日が初日できっと緊張しただろうから早めに迎えに行ってやりたい。
明日からはジジかババが行ってくれるんだけど用事がある時は俺が行くこともあるかもと伝えた。
『女の子と約束かと思ったよ。』
『いや、それは無いよ。』
『じゃあ私も行きたい!ひーちゃんに会いたい!』
そんなわけで香椎さんと一緒に行く事になった。
2人で20分だけ作業をこなし一緒に託児所へ向かう。
15分ほど歩くと託児所に着く。道の途中で青井に襲撃された場所とかあっちゃんとザリガニとった小川とか説明した。
(女の子に何を話せばいい?!)
託児所に着いて名乗り、迎えに来たと伝える。今日は兄が来ると言ってもらっていたからすんなり通して貰って声をかける。
『ひーちゃん?』
『にいちゃあ?にいちゃああ!』
ひーちゃんは俺に抱きついて泣き出した。
香椎さんも泣きそうな顔でそれを見てた。
先生が教えてくれた。
ひーちゃんは園内に入ってもずっとぐずっていたんだけど先生に挨拶したらもうぐずるのを止めてお母さんに手振ったらもうお母さんの方見ないでみんなに挨拶したんだって。偉かったんだよ?って。
でもお兄ちゃんとお姉ちゃん来たから糸が切れちゃったかな?まだ小さいのに頑張ったよ、褒めてあげてね?って。
『あ、私お姉ちゃんじゃ無いんです。』
『あらあら♪』
今はそうゆうのいいからひーちゃんだよ。
『そっか、さすがひーちゃんだな。』
俺の脇腹に顔を擦り付けてる弟の頭撫で撫でしながらひーちゃんを褒める。
まだ泣いてるひーちゃんにつられてなのか香椎さんも泣いてる。
この子すぐ泣いちゃうよね、共感力が高いんだろうな。そうゆうとこも好ましい。
香椎さんは涙を拭ってしゃがみ目線を合わせてひーちゃんに挨拶してくれた。
『初めまして、お兄ちゃんの友達の香椎玲奈です。お名前は?』
『ピカチュウ♪』
香椎さんは驚愕した顔で俺を見て聞いた。
『
『キラキラネーム違うわい!』
思わず香椎さんに突っ込んだ。
さっきまで国民的アニメを見ていたみたい。
『ひかうです!もうすぐ3さいです!』
光だよ。
『可愛い…
香椎さんはうわ言のように呟く。
いや、兄ばかだけどひーちゃん可愛いのよ!
ひーちゃん真ん中に3人で手を繋いで歩く川沿いを小学校まで歩くと西エリアへ渡る橋がありまっすぐ行けば香椎さんちがあるからそのあたりまでお散歩。
香椎さんにはひーちゃんの心臓の話してあるからこの散歩も日課なんだって伝える。毎日20分位の散歩を2、3回してる。
30分以上の有酸素運動や血圧が急上昇するような運動はできるだけ控えるようにと。でも運動は絶対必要だから散歩は日課。
小休憩を入れながらのんびり歩く。ひーちゃんは香椎さんにだいぶ懐いたようだ。
『このまま家へ連れて帰りたい…。』
香椎さんはお姉ちゃんがいるはず、下の子居ないから珍しいんだろうな。
小休憩でベンチで休む、一応見せておいた方がいいのかな?
ひーちゃんにお願いしてトレーナーをはぐる。
左胸の上に2箇所手術痕がある、禍々しい傷痕。
香椎さんはぎゅっとひーちゃんを抱きしめて
『偉いね、頑張り屋さんのひーちゃんだ!』
『えへへ!』
ひーちゃんも綺麗なお姉さんに抱きしめられて嬉しそう。
俺は預かってた水筒が空になってることを思い出した。
『香椎さん、お茶買ってくるから5分位ひーちゃん見ててくれない?
そんな勝手に動かないと思うけど。』
『うん、わかったよ!』
俺は小走りで自販機へ向かった。
ーーーーーーーー
ひーちゃん! side香椎玲奈
立花くんはお茶を買いに行った。
今はひーちゃんとベンチ。ひーちゃん可愛い。
立花くんも小さい頃こんなだったのかな?
『おねえちゃあ?』
『ひーちゃん、もっと呼んで?』
『おねえちゃあ!』
キューンってする。小さい男の子良い!
そういえば同じ言葉を鸚鵡返しに返すとひーちゃんが喜ぶって立花くんが言っていた。
『ピカチュウ!』
『ピカチュウ!』
キャッキャ!!
ひーちゃんの言葉に私も結構似てるモノマネ(似てない)でひーちゃん大喜び。本当に大喜び。
超可愛い!
『ゾウさん!』
『ゾウさん!!』
キャッキャ!!!さっきより大喜び。
コツを掴んだよ!
そしたらひーちゃんが言った。
『ちんちん!』
?!
私はフリーズした。
『ちんちん!!』
『…えーっと?』
ひーちゃんの顔が曇った。
遊んでくれないの?捨てられた子犬のような目でこっちを見てる…。
私は覚悟した。
ひーちゃんが申し訳なさそうに言った。
『ちんちん…。』
『…ちんちん?』
(恥ずかしい!)
キャッキャ!!ひーちゃん大喜び!
『ちんちん!』
期待に満ちた眼差し。
『ちんちん!』
(ひーちゃんが喜ぶなら!)
『ちんちん!!』
『ちんちん!!!』
(お姉ちゃんの覚悟を見てて!)
『…香椎さん?』
『いやぁー!!』
立花くんにバッチリ見られた…。
ひーちゃんの笑顔と引き換えに乙女として大切なものを失った気がする…。
立花くんは最近こうゆう言葉大好きで困ってるんだ。覚えるのは仕方ないけど、どうしてこう頻繁に言うんだろう?って首を傾げていた。
立花くんは3人分のお茶を買ってきてくれてせっかくだから今日食べる予定にしていた。パウンドケーキを出して3人で食べた。
川沿いの小さい公園で3人でおやつタイム。いいよねこうゆうのも。
なんとなくポツリと言ってしまった。
『ひーちゃん、お姉ちゃんいらないかな?』
(義姉ちゃんでもいいけど…)
?『は?姉なら居るんで結構ですが?』
横を見ると小学生(高学年位?)の気の強そうな可愛い女の子が立っていた。
『ねーちゃあ!』
『ひーちゃん♪お姉ちゃんだよぉ!
知らない女について行っちゃダメ!』
『ごめん香椎さん、妹の望。小6。』
『初めまして、兄がお世話になってますがひーちゃんも兄もあげません!』
しまった、初対面の印象が悪いみたい?妹さんも居たんだ?!
兄も弟も知らない女が取っていくと思われた?とりあえず少しでも卍解…いや挽回しないと!
『初めまして、香椎玲奈って言います。良かったらパウンドケーキどうぞ♪』
『香椎?菓子じゃないの?
まあいいや、食べ物で懐柔されるわけ…うま!パウンドケーキうま!』
『うま!』
(あ、立花くんの食べてる時と同じ顔。)
『悔しい…!でも‥食べちゃう!』
望ちゃんはなんかビクンビクンしながらパウンドケーキを食べてた。
(仲良くなれるかも?)
初めて立花くんの妹弟に会った日だった。
ーーーーーーーーーー
香椎さんと別れた後の3兄弟
望『ちんちん!』
光『キャッキャ!!』
承『お前か!』
ひーちゃんに変な言葉を教えているのは望だった。
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