第2話
アリスト教オルフォドック。
かつて、この大陸を支配していたカール帝国が国教として以来、世界中に多くの信者を持ち、今日に至るまで絶大な力を持ち続けてきた宗教勢力。
だが、絶対的な権力は絶対的に腐敗するというどんな世界であっても変わらぬ大原則に則って腐敗しつくし、良識ある知識人からの信頼を失うと共に数々の失政、貴族たちの力の衰えなどの副次的な効果も相まってアリスト教オルフォドックの権威は下がりつつあると言った現状にある。
今のところは地球とほぼ同じような過程を辿ってきている……このままいけば絶大な影響力は持っているものの、政治に対する影響度を弱め、その栄華を各国の国王へと譲ることになるだろう。
このままいけば……、だが。
アリスト教オルフォドックと同じく特権階級にあり、これまた同じく権威を失う可能性が見えてきた呪文研究者がアリスト教オルフォドックに協力すれば話は変わるだろう。
絶対的な権力者二組が協力関係となれば容易には突き崩せないだろう……どんな勢力であったも。
「何の冗談じゃ?」
だが、所詮その話は何処まで行ってもたらればの話にしかならないだろう。
「それは……あまり面白くない冗談ねぇ?」
「……宣戦布告か?」
「殺されても文句言えない、うん」
その理由は単純。
呪文研究者は、円卓の奇跡のメンバーは蛇蝎の如く宗教勢力を嫌っているからである。
未だ呪文研究者が絶対的な立場になる前の……どんどんと権力をつけていく過程にあった頃。
宗教勢力がそれを邪魔しようと呪文研究者の足を引っ張り、多くの犠牲を強いてきたことを未だに忘れていない呪文研究者たちは宗教勢力と手を組むことを絶対良しとしないであろう。
「……ッ」
絶対の拒否。
今にも飛び掛かった殺さんとする円卓の奇跡のメンバーを前にしてノアは引き攣らせながらも自分の意見を引き下げるつもりはないようで、立ったまま視線の方へと僕へと向けてくる。
「君はどう思うかな?アレス……君ならわかるであろう?」
「ん?ここで僕が何を言おうとも君の立場は変わらないと思うけど?」
急に話題を振られた僕はノアの言葉に肩をすくめながら素っ気なく返す。
「……君だって現状はわかっているだろう?正確に……曇ることなき思考で。我らの立場は決して盤石ではないどころか……窮地に立たされかねないげんじょ」
「黙れぃ!儂らは儂らだけの力だけで何とかなるッ!薄汚い連中の力などいるか『ぁ』!」
ノアの言葉を遮ってアレゴスは叫び、殺気と共に軽い魔法を彼へと向けた。
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