第16話

 学園に通いだしてからの早いことでもう一ヶ月。

 僕はちゃんと学園生活を満喫していた。


「懐が潤うんじゃー」

 

 龍系魔法を何らかの用事で買っていったもの、使用感を確かめるため龍系魔法の特許をサクッと購入した王族並びに高位の貴族。

 これらの龍系魔法だけでかなりの額を稼いでいるというのに女性から大好評の非戦闘系魔法の特許料までもが入ってきている。

 僕の懐はパンパンだった。


「いや、それは元からじゃないかしら?」

 

 そんな僕の言葉に対して自分の隣に座っているアレナがそもそものツッコミを入れる。


「ですね」


 そして、そんなアレナの言葉にこれまた僕の近くに座っているサーシャが頷く。

 アレナとサーシャ。

 陽キャと呼ばれるほど明るくなく、陰キャと呼ばれるほど暗くもなく、その中間二位置するような仲の良い女子二人組。

 

 転入当初は多くの女子に囲まれ、呪文研究者としての正体を明かしてからは男子にも囲まれるようになった僕だが、最終的にこの二人とよくつるむようになっていた。


「そこは良いんだよ。お金を稼いでいる……その実感が良いの。僕が元々どれくらいいお金を持っているかとかじゃないの」


「うわー、守銭奴だ」


「うっさいやい」


 僕がアレナの言葉に噛みつく……そんな頃。

 学園にチャイムが鳴り響き、休み時間の終了を知らせる音が鳴り響く。


「よーし、休み時間は終了だ。席につけー」


「戻るか」


「そうね」


「二人は早く戻ってください……そこの席も別の子の席ですので」


「はいは……ん?」

 

 席に戻ろうとした僕はとあるものを感知し、動きを止める。


「はぁー」


「ん?どうしたの?」


「どうしたんですか?」


 動きを止め、深々とため息を吐いた僕を見てアレナとサーシャが疑問の声を上げる。


「いや……ちょっとね。先生」


「ん?なんだ」


「ちょっと、呪文研究者としてやらなきゃいけない面倒事が出来たんで、ちょっと授業を抜けます」


「あぁ……なるほど」

 

 呪文研究者としてやらなきゃいけない面倒事……それが何か他の生徒たちはわかっていない様子であったが、先生は一体なんであるか理解したようだ。


「わかった……程々にしといてくれよ?」


「それは向こうの出方次第ですね。それではちょっと言ってまいります」


「あぁ。出来るだけ早く戻ってくるように」


「はい……■■」

 

 僕は先生の言葉に頷き、飛行魔法を発動して窓から外の空へと飛び出す。

 そして……特許を持っていないのにも関わらず僕の作った魔法を使った不届き者のいる場所へと向かった。

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