9.みちのくひとり旅

〇月〇日。

依頼人から、規定の料金以外に、「謝礼」が出た。税金の申告をしなくていい金だ。

所長が、珍しく、飲みに行こうと言ってくれた。興信所の新人の歓迎会を兼ねての飲み会だ。所長は、EITO大阪支部の司令官大前と、支部新人の馬場も誘った。

馬場は、カラオケバーに戸惑っていたが、得意の歌を歌い始めた。

無骨な顔に似合った、「ド演歌」だ。歌い終ったら、ママや所長に言って、もう1度歌わせてくれと言う。呆れたが、皆、辛抱して聞いた。

「もう1度」と言い出したので、大前は馬場を連れて店を出た。

新人の倉持が心配そうな顔をしたので、「打ち合わせや。EITOの勤務はウチと違って不規則やから、明日の打ち合わせや。」と倉持に適当なことを言い出した。

花ヤンが、気を利かせて、刑事時代のエピソードを面白おかしく倉持に聞かせ始めたので、俺と所長は、適当に相槌を打った。

30分位で、大前と馬場は帰って来た。

「大前さん、そろそろ、お開きにしますか?明日、早いんでっしゃろ?」と所長が言い、「そうですな。」と大前は渋い顔で応え、お開きになった。

花ヤンも俺もほっとした。今後は、飲み会は興信所だけやな。

それにしても、何であんなに固執したのか?馬場みたいなタイプはマイクを持たせてはいかんな、と思った。

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