第89話 防衛戦 2日目の絶望
「ケンゴ! 魔族が攻めてきたって聞いたぞ! 無事か!?」
ファーラムの王城まで戻ってきたケンゴに、同じく帰ってきたばかりのレンが話しかける。
雷魔法を使う魔族の攻撃を受けたが、聖鎧に守られたケンゴは無傷だった。
「うん。俺はなんとか平気。でも、ガジルドさんが左腕を……。今はシオリが治療してくれてる」
「そ、そうか。ちなみに魔族はどうなったんだ?」
「1体だけなら倒せそうだったんだけど、2体目が出てきてやられちまった。アカリが助けに来てくれなきゃ、マジでヤバかった」
「に、2体目? 魔族が2体も同時に現れたのか!?」
「いや、全部で4体いた。あと魔族が魔王様の指示って話してたから、今回攻めて来てる魔族より強い奴がいるのかも」
その話を聞いて、レンの顔が暗くなる。
「魔物20万体だけでもヤバいのに、ケンゴが戦わなきゃいけないレベルの敵が4体。しかもそれより強い魔王? そんなの、どうすりゃいいんだよ」
「でも良い情報もある。魔族はシオリが展開した聖結界を通過できなかった」
「それは過去の文献を読んで分かってた。実際にそうだったのは確かに嬉しいけど」
「けど?」
「防衛戦の初日からシオリが聖結界を展開するのは、最悪から3番目に悪い状況なんだ。この王都が陥落するのが最悪で、その次が俺たちの中の誰かがシオリの治癒でもそうしようもないくらい戦闘不能になること。今日の結果は、それらよりちょっとマシってだけなんだよ」
聖結界を展開すれば、シオリは休めなくなる。一度展開した聖結界を解除すると、再使用までのインターバルが半日は必要だ。夜行性の魔物が夜間も攻めてくるかもしれないため、この時間に聖結界を解除することはできない。
加えてこちら側に聖女がいることが魔族たちにバレてしまった。
「他国から援軍が来てくれるとして、最短でもあと2日はこの王都にある戦力だけで耐えなきゃいけない。幸い今日は、国軍にはほとんど被害がなかった」
「ガジルドさん、腕さえ回復したら明日も戦ってくれるって」
「そうか。でも無理はさせたくないな」
「シオリの所には行った? どれくらい聖結界を維持できそうか、俺はまだ聞いてなかった」
「これから行こうって思ってる。まずはケンゴから状況を聞きたくてこっち来た」
「だったら移動しながら話すよ。俺は今日、1万くらいは魔物を倒せたと思う」
勇者ケンゴと賢者レンは、互いに戦果を報告しながら聖女シオリのいる王座の間まで移動を開始した。
大魔法を何度も行使したレンは、今日の戦いで2~3万もの魔物を屠っていた。
もともと20万体いた魔物は、16万体ほどまで数を減らした計算になる。
魔族も1対1であればケンゴが勝てそうであることも分かった。
問題はどうやって魔物の数を減らす邪魔を魔族にさせないか。どうやって魔族と1対1で戦える状況を作り出すかということが重要になる。レンはそう考えていた。
──***──
翌日
王都の防壁上から、ケンゴとレンが魔物軍の様子を確認していた。
「……おい。アカリが言ってたのって、そーゆーことか」
レンの顔に絶望の色が浮かぶ。
アカリは索敵スキルで敵の状況を確認し、その数が20万体から減っていないことを作戦本部に告げた。
その言葉を信じられなかった勇者と賢者が、こうして様子を見に来たのだ。
「あ、あれ、死んでるよな? なんで首が無いのに動いてんだよ!?」
ケンゴたちが見たもの。
それは昨日彼らが倒した魔物がアンデットとなり、再び立ち上がってこの王都を包囲する魔物軍に加わっているという、絶望的な光景だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます