第4話 売れ残って剣闘士になる
奴隷市のメインステージ周辺には多くの人がいた。彼らのお眼鏡にかなえば売れて、その買った人の所有物となるということだろう。
異世界転生の漫画で主人公が可愛そうな奴隷を買うってシーンは見たことあるが、まさか自分が買われる側になるなんて……。
どうか優しくて美人なお姉さんが俺を買ってくれますよーに!
神頼みもしようとしたが途中で止めた。この世界の女神は、俺をこんな状況に追いやった張本人なのだから。
それから、美人に買われるという望みも薄そうだ。
この場に集まったのは、好きに使い潰せる安価な労働力を求めてきたと思われるように見える奴らしかいない。俺の隣に並ばされている奴隷たちは見るからに貧弱そうな男や老人たちばかり。
さっき見た猫耳の少女はいない。
おそらく別の会場があるんだ。
そちらはここで安い奴隷を買うような奴らとは違い、この世界の支配階級にいる奴らが奴隷を買う。きっとそっちの方が良い待遇を期待できる。俺もできればそちらに行きたかったが、言葉が通じないので交渉すらできない。
……いや、交渉って何だよ。
俺は騙されてこんな目にあってんだぞ。こんな場所で鎖につながれてること自体が間違いだろーが!
それに俺は一緒にこっちに召喚された学生たちを、なんとしても元の世界に戻してやらなきゃいけないんだ。こんな場所、絶対に逃げ出してやる。
「
「
競売が始まったようだ。
一番右に立たされている老人に奴隷商人が声をかけると、老人は言葉を発した。自分ができること、つまり奴隷として自分の価値をアピールしているのだと思う。
「
「
老人の
売られた人の発言を真似しようとも考えたが、発音が複雑すぎて一度聞いただけでは不可能だった。
その後も競売は進んでいった。競売のやり取りからなんと把握したのは、“ギル”という単語。
奴隷を購入した人々が発する単語の中で、唯一共通しているのがギルだった。おそらくこの世界の通貨の単位なのだろう。
そのギルの前の単語が奴隷の価格を表している。単語が長いほど価値が高く、単語が短いと安い。それは奴隷を購入した人々が支払う貨幣の枚数から理解できた。
しかし、これらの情報だけではどうしようもない。自分がどのくらいの価格で売れたのかが分かる程度。マジでどうしよう……。
そんなことを考えているうちに俺の番が来た。
「
奴隷商人に背中を小突かれた。
何か話せと言っている様子。
「……わ、私は別の世界から来た人間です。誰か、私の言葉が分かる人はいませんか? 私は手違いで奴隷になってしまったんです! どうか助けてください!!」
悩んだ末、母国語で話しかけてみた。もしかしたら俺と同じようにこちらの世界に来ている人がいることに賭けたんだ。
「
「
「
「「「
この場に集まった全員が大声で笑い出した。
「な、なんだ……。どうして?」
「
奴隷商人が気持ち悪い笑みをうかべてる。
お、俺……。
なにかやっちゃっいました?
「
俺を買おうと手を挙げる人はいなかった。
そーいや聞いてなかったけど、売れなかった場合はどうなるんだ? まぁ、聞いても理解してくれないし、説明されてたとしても俺が理解できないが。
もし売れなかったなら、逃がしてくれませんかね。
「
奴隷商人の叫び声に呼応するように、競売参加者たちが急に雄叫びを挙げた。
逃がしてくれる──って、感じじゃないですよね。目が血走って興奮してる人が何人もいて怖い。それから奴隷商人が発した言葉。それが気になった。
「コロシーム? それって、コロッセオ的な?」
ギル以外に聞き取れたかもしれない単語だ。でもそれは俺が奴隷である今の状況と併せると最悪なイメージしか浮かばない単語。
「
俺が奴隷商人の発音を真似したことに気付かれた。
「
良い笑顔で俺の背中を叩く奴隷商人。
その力が強すぎて思わず
「
「
集まってる人々が俺に声をかけてくる。
盛り上がってるのは分かるが……。
「
「
「
「
純粋に応援してくれる感じじゃないことは確かだ。
というか、俺をコロッセオに送るんだろ? そうだと仮定して、こいつらはきっと俺が無残に殺されるのを楽しみにしてるってこと。
そう思うとだんだんイラついてきた。
他人を自分より下に見て嘲笑う。
そんな奴らの望み通りになりたくない。
絶対に死んでたまるか。
泥臭くても何でもいい。
俺はどんな手段を使ってでも。
なんとしても絶対に生き延びてやる!
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