全部自分に返ってきた

「――葉、美葉……」


 私のことを呼ぶ声が聞こえて、私は目を開いた。

 ……ん、いつの間にか寝ちゃってたんだ。

 

 私は布団から顔を出す。

 すると、お姉ちゃんと目が合った。


「……お姉ちゃん、おかえり」


 私は寝起きで回りきっていない頭で、お姉ちゃんにそう言う。


「ええ、ただいま」


 お姉ちゃんは意味深な笑みを浮かべながら、そう言った。

 

「どうしたの? お姉ちゃん」

「どうしたもこうしたも、美葉がそんなに私のことを好きだとは思わなかったわ」

「……?」


 いきなりお姉ちゃんは何を言ってるんだろう。

 確かにお姉ちゃんのことは好きだけど、姉妹としてだよ?


 そう思った私は、ベッドに横になったまま、首を傾げた。


「いえ、ね? 帰ってきたら私の部屋で寝てるし、私の枕を抱き枕にするくらいだから、相当私のことが好きなんだと思ってね。……もちろん私も美葉のことは愛してるけどね」


 ……抱き枕? お姉ちゃんの枕を? 


 私は少しずつ回ってきた頭で、状況を理解した。

 確かにお姉ちゃんもそんな勘違いをするよ! だって、お姉ちゃんからしたら私は自分からお姉ちゃんの部屋に行って、お姉ちゃんのベッドで寝て、お姉ちゃんの枕を抱き枕にしてるんだから。

 

 そのお姉ちゃんの勘違いを理解した私は、直ぐに誤解を解くためにお姉ちゃん言った。


「ち、違うから! これは、お姉ちゃんのベッドとか、枕の匂いを嗅いでただけだから! それで、お姉ちゃんの匂いを嗅いでたら、いつの間にか眠っちゃって……だから、お姉ちゃんの枕を抱き枕にしてたとかじゃないから!」


 私がそう言うと、お姉ちゃんが一瞬だけ目を見開いて、その後に嬉しそうに笑った。

 ……なんで笑うの? 誤解は解けたはずなのに。


「美葉、自分が言ってること分かってる?」

「え? そんなの、分かって――」


 お姉ちゃんに改めてそう聞かれた私は理解した。

 これじゃあ、私がお姉ちゃんを好きすぎて、お姉ちゃんの匂いを嗅いでたみたいじゃん!


「ま、待ってお姉ちゃん! そ、それも誤解だから! に、匂いは確かに嗅いだけど、それはお姉ちゃんに昨日の仕返しとして、お姉ちゃんを恥ずかしがらせようとしただけだから! ……だから、お姉ちゃんが好きすぎて、匂いを嗅いじゃったとかでは全然無いから!」


 危なかった。これで今度こそ誤解が解けたはず。


「ふふっ、そういうことにしておいてあげるわ」


 そう言ってお姉ちゃんは鞄を置いて、部屋を出ていこうとする。


 いや、そういうことって何!? 私はほんとのことしか言ってないから!

 

「ちょ、待ってよお姉ちゃん! ほんとに誤解だから! 違うから!」


 私は慌ててベッドから立ち上がり、お姉ちゃんを逃がさないように抱きつきながら、そう言った。


「はいはい、分かってるわよ」

「……何にも分かってないから! 私は――あっ」


 お姉ちゃんが全然信じてくれないから、私が否定をしようとしたところで、お姉ちゃんの手が私の頭に置かれた。


「大丈夫よ。私も美葉の匂いを嗅ぐことくらいあるしね」

「えっ?」


 私は突然、お姉ちゃんに衝撃の告白をされた。

 私の匂いを嗅ぐことがある? ……い、いつ!? わ、私臭くないかな……

 そう考えると、一気に顔に熱が集まってきた。


「ふふっ、そんなに照れなくて大丈夫よ」

「て、照れてなんかないし!」


 お姉ちゃんにそう言われた私は、自分の真っ赤な顔を隠すために、お姉ちゃんの体に自分の顔を埋めて、お姉ちゃんに顔を見られないようにした。


 すると、お姉ちゃんは私の頭を撫でてから、私をお姫様抱っこした。


「ちょ、ちょっとお姉ちゃん!?」

「美葉、可愛いわよ」

「み、見ないでよ……」


 私は咄嗟に顔を隠そうとしたけど、今そんなことをしたら落ちちゃうかもしれないから、私はお姉ちゃんにくっつくことで、顔を見られないようにした。


 お姉ちゃんは私の顔を見るのを諦めたのか、部屋を出て、私をお姫様抱っこしたままリビングのソファに座った。

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