第29話――不運
ジャックの希望をなくした姿に、白人青年は言葉を返せず閉口したままだったが、我慢しきれないように再び問い返した。
“……
ジャックは青年の方にちらっと顔を向けると、溜息交じりに前に視線を逸らし零すように言った。
“……
その答えに、白人青年は驚きとともに問い掛けた。
“
“
白人青年は落胆の色を必死に堪えながらジャックの話の続きを聞いた。
“
ジャックは生気を無くしたような諦めの目つきを青年の方に向けた。
“
白人青年は必死に擁護するように反論した。
“
“
難なく返されたジャックの一言で青年は口をつぐむしかなかった。
“
“
白人青年が精一杯出来うる限りの励ましの言葉をかけた。
ジャックは彼の方を向くと、何かに気づいたようにその横顔を見つめながら言った。
“……
その言葉に、はっとするように白人青年はジャックの方を向いた。
さっきまで失意に沈み細くなっていたその両目を開けると、ジャックは再び問いかけた。
“
すると、白人青年は
“
“
その返答に驚いたように、ジャックは思わず青年の方に向き直った。
“……
“
青年は自嘲気味にそう言うと、少し照れくさそうに前へ視線を逸らしながら語り始めた。
“
“
“
勝頼は肩の力が一気に抜けたように、さらに続ける。
“
勝頼が軽く笑うと、
“
微笑みを浮かべながらジャックは勝頼の目を真っ直ぐに見据えて言った。
“
二人の会話がそこで途切れ、管制室に静寂が流れた。
ジャックは再びゆっくりと視線を前へ逸らすと、さりげなく口を開いた。
“
“
その呼び掛けに勝頼が顔を上げる。
ジャックは、もう一度ゆっくりと彼の方に顔を向けると、今度は真顔で言い放った。
“
対照的にジャックは冷静な顔つきのまま向こうで寝そべっている男女三人の方に目を遣った。
“
「気づいているのは、あなただけではありません」
その声で、勝頼は思わずジャックとは反対隣の左方向を向いた。
二メートルほど離れた所に、同じように壁に背をつけて座り、ずっと黙り込んでいたネイビージャンパーの男が勝頼の方をじっと凝視しながら尚も言った。
「警視庁は、メールでの通報のやりとりは受け付けていません」
勝頼は戸惑うように左右に首を動かして、ジャックとネイビージャンパー男の顔を交互に見つめ返す。
ジャックは言った。
“
そう言った途端、ネイビージャンパー男が鋭く反応するようにジャックの方に視線を移した。ジャックはその視線を受け止めると、少しだけ得意気に尚も言った。
“
そして、もう一度寝息を立てている男女三人に目を遣り、
“
そう言うと、ゆっくりと壁にかかっているアナログ式の丸い掛け時計の方を向いた。
よく見ると、その中央に小さくデジタル式の表示があり、その最初の位辺りの数字が目まぐるしく動き、減少しているのがわかる。
“23:10:000―――”
ジャックはそれを見つめながら言った。
“
その光景を一部始終、俯瞰するようにモニターで眺める人物がいた。
『決してあきらめないで』
向き合っている画面上のその最後のスレッド文章を閉じると、その人物は近くに置いてあった湯気が出ていたマグカップに上品に口をつけた。
カップを机に置くと、大きく両腕を上げ背伸びをし、そのリクライニングシートに身を埋めるように背凭れた。
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