第3話 親父の敵!?

 そもそも任務ミッションには一国の王に依頼されるものから、小さな村の村人に依頼されるものまで大小様々なものがある。


 その中で、今回の任務ミッションは十分大きいものと言ってもいいだろうと思う。


 数えきれぬほどの冒険者が命を落とした巨大 迷宮ダンジョンに巣食う魔物の退治とその最深部にあるとされる秘宝を見つけ出すこと。 

 それが今回冒険者 世界組合ワールドユニオンを通してその地域の有力者から俺たちが依頼された任務ミッションだった。


 冒険者パーティーは小さな任務ミッションをこなしていくうちに、段々と大きな任務ミッションの依頼が舞い込んでくるようになる。


 そして、大抵の冒険者パーティーは大国の王から魔王討伐の任務ミッションを依頼されることを最終目標としている。


 なぜならこの世界に13体いるとされる魔王討伐の任務ミッションを依頼されることで初めてそのパーティーは勇者パーティーだと認められるからだ。

 この場合の勇者はただひとりだけではない。そのあかつきにはパーティーのメンバー全員が勇者と呼ばれるようになる。そうなればもう冒険者としては安泰だ。引退しても指導者になってくれとの依頼が引く手あまたらしい。


 まあ、その前に16歳の俺たちの中で特に優秀な者は、魔王討伐前に1年間みっちり冒険者 世界組合ワールドユニオンが作った『学園』で鍛え上げられることになるのだが。


 だからこのパーティーのメンバーの目的もいきなり勇者パーティーになる(『学園』ができてからそんなパーティーはまだ現れていない)というより『学園』に入れるようにきっちり名を売ることを目指しているようだった(俺だけ目的がそもそも違うのだ)。 



「今回の任務ミッションに無事成功すれば、次はいよいよ小国レベルの任務ミッションを受けることになると思う。そうなればもう『学園』には確実に入学できるだろう。つまり今回は、俺たちにとってかなり重要な任務ミッションだということになる。・・・・・・ルチア・ユーキリス、俺の言いたいとこがわかるか?」


 アルバトン(男 剣士ソーズマン)が俺に訊いてくる。

 

 昨日あれだけ話し合って、結局はロージアに説得されて、「最後のチャンスだぞ」って言ったくせに、また蒸し返しやがって!


「さあ? よくわからないな。勿体振もったいぶらずにはっきり言ってくれよ」


「・・・・・・いいだろう。今回の迷宮ダンジョンの魔物は最低でもCクラス以上だ。ゆえにF級のお前が活躍できる可能性は限りなく0に近い・・・・・・」


 ここでナーシャ(女 攻撃系魔術師等ウィッチ)が口を開く。


「アンタは必要ないってことよ!」


 さらにザカト(男 回復系戦士等タンク)が加勢するように言う。


「もっとはっきり言えばきみは足手 まといだということだ」


 すると、ロージアがこう必死に声を上げてくれる。


「ひどいよ、みんな! 昨日はいいって言ってくれたのに! ・・・・・・今回の任務ミッションが重要なことはわかるけど、最後にルチアにチャンスをあげてよ!」


 しかし、3人の答えは、



「「「駄目だ(よ)!」」」



 ここで俺は偽物の笑顔を作ってこう言ったのだ。


「そんなこと言わずに俺も連れてってくれよ。半年以上一緒に戦ってきた仲間だろ?」


 この後、ロージアが本気で泣き出してしまったので(ほんとに基本すげえいいやつなのだ!)、あれだけ反対していたアルバトンたちも最終的には俺が今回の任務ミッションに同行することに渋々同意してくれた。




         ⚫




 たとえば5体の魔物に遭遇した場合、大抵はザカドが露骨な挑発などで4体のヘイトを集めて攻撃を受けてくれるのだが、残りの1体は必ずと言っていいほど俺を追い回してくる。


 そして俺を追い回してくるこの1体というのが集団の中で最弱の魔物である場合がほとんどで、だから俺がどれだけその魔物の注意を引き付けてもいつもあまり評価されたりはしなかった。


 そしてこの時、俺は黒い仮面を被った見たことのない槍使いの魔物に追い回されていた。

 その時点で俺も周りの連中も、俺を追い回してくる魔物なのだからきっと弱いのだろうと決めつけてしまっていた。


 それでも俺は追い回されながらも、一応その黒い仮面の額の部分を注意深く観察していた。

 額がもし光って見えれば、そいつが何かしらの特殊能力を持っているということになるからだ。


 相手が仮面を被っていたから、さらにその仮面の色が黒だったという特殊な事情でいつもよりかなり時間が掛かってしまったが、黒い仮面の額の部分がぼんやりと光って見えてきたので、俺は目を細め、さらにその黒い仮面の額の部分を凝視した。


 そして、俺は思わず声を上げた。


「まさかっ! まさか、こんなところでっ!」


 なぜあの時、槍使いであるとわかった時点でもっと相手のことを警戒しなかったのかと今でも俺は後悔している。


 なぜならあの日、親父が盗んできたスキルはだったのだから。


 だが、この魔物の数がめちゃくちゃ多い『グレイト・シーフ』の世界にはまだ俺も知らない槍使いの魔物なんていくらでもいるのだし、それに姿のだ。それも(だが、こんな超序盤に現れたことなど一度もなかった)


 その黒い仮面の槍使いは、仮面を取って俺に微笑みかけてきた。

 

 魔物だとばかり思っていたその敵は魔物ではなかった。


 敵は美しい人間の女だった。



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