2-6 サンシャイン

『常日、いる?』


『ちょうど洗いものを片付けて一息ついていたところ。何かあったの?』


『うん。ちょっと殺人事件がね』


 二秒と待たずに音声通話のリクエストが飛んできた。あたしは迷うことなく着信拒否のボタンをタップする。


『会話は無理。目の前に警察官がいる』


『悪い冗談というわけではなさそうね。詳しい事情を教えて』


 元よりそのつもりだ。あたしは清乃直伝の高速フリックで矢継ぎ早にメッセージを送った。


『……つまり岩武君が姉崎さんを殺害して、自ら命を絶ったということ?』


『遺書の内容を信じるならそうなるね』


『疑義があるような言い方に聞こえるけど』


 なくはない。むしろ大ありだが、今は先に確認しなければならないことがある。


『警察にはまだ、あたしが合宿に参加した本当の理由を話してない。常日に聞いてからの方が良いと思って』


『緊急事態なんだから私の許可なんていらないでしょ。鮎って、そういうところ変に義理堅いよね』


『ごめん。説明が良くなかった。義理とかじゃなくて、警察にわけを話したら必ず聞かれることがあるから、あらかじめ確認しておきたくって』


『と言うと?』


『常日のところに相談に来た子って、結局誰だったの?』


 判断の速さには定評のある第九十九代生徒会長だが、この質問への返答には少し時間がかかった。


『姉崎さんよ。今回の件は、亡くなった彼女が持ち込んだ話だったの』

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