第23話ミレイ側妃side

「え?なんで?」


 目の前にがいた。


 謹慎処分がやっと終わって、庭園の渡り廊下を歩いているとここにいる筈のない人物がいた。


「どうして……?第二王子はにならないと登場しないのに……。その前に登場するってなに?出てくるのはヒロインが正妃になった後でしょ……?」


 混乱するなという方が無理だった。

 唖然とする私は第二王子の姿が見えなくなるのを黙って見送る事しかできない。


 しかもその後が問題だった。

 第二王子に全く近づけない。

 私や彼に近づこうとするたびに、どこからともなく人が現れる。


『ミレイ側妃様、こちらには来ないように言われていらっしゃるでしょう』


『確かに謹慎処分は解けました。しかし、生活区域外は出歩けないという決まりです。御存知ない。そうですか。初めに伝えていたのですが、お忘れになっているようですね』


『第二王子殿下ですか?はい、留学先から戻っておりますがそれが何か?詳細は知りませんが、陛下の命令だと思われます』



 分からない。

 だって出番じゃないでしょう?なのに国に戻ってるってなにそれ!?

 初めて会うから挨拶だけはできた。でも本当にそれだけ。他は全く会えなかった。なんで?

 

 元々、王太子と第二王子はそこまで仲はよくない。


 あーー……ちょっと違うかな?


 王太子はそこまで弟に関心がない。

 私が「弟君に会ってみたい」「兄弟ってどんな感じ?」と聞くと首を傾げるから間違いない。あんまり聞くと「何で知りたいんだ?」って嫉妬するんだよね。


 少し離れた場所で第二王子が大臣達に囲まれているのを見掛けた。


 何かを話しているけど距離があり過ぎて聞こえない。ただ、皆は笑顔を浮かべている。たまに難しそうな顔をしたりするけど。あれかな?第二王子はいずれ王太子の補佐になる。国王になる兄の補佐。そのための話なのかもしれない。


 その後も話しかけるタイミングは訪れなかった。


 悶々とした日々が続く中、各国の大使を招いた盛大な夜会が開催された。




 

 国中の貴族が集まる盛大なものだって聞いていた。

 何なのかは分からないけど、国王から大切な発表があるらしい。よく解らないけどメイドの一人が満面の笑みだったからきっと良い事なんでしょう。


 久しぶりのパーティーにウキウキして会場に入った。勿論、王太子のエスコートで!

 

 これはアレよね?

 私を正妃に据えるための夜会じゃない?

 このシチュエーションは絶対にそう!だってゲームで観た場面にそっくりだもの!

 

 ちょっと寄り道したけどこれで晴れて王太子妃ね。

 

 もしかすると悪役令嬢の断罪もあったりする?

 いけ好かない悪役令嬢ヴァレリー公爵令嬢が泣いて許しを請う姿が見られるの?


 いいじゃない!


 確か終盤で、国王が退位の事をほのめかすのよね。「新しい時代を作る為に、王太子夫妻には色々と苦労をかけてしまうかもしれない」みたいなことを言って、王太子を即位させる為の準備が始まるはず。

 

 キャーー!!素敵!!!

 

 一時はどうなる事かと思ったけど、やっぱりゲーム通りに話は進んでるのよ!

 悪役令嬢達が自分の役割をちゃんと果たさないから心配してたんだけどね。でも大丈夫だった。このまま進めば私はきっと王妃になれる! そしていつか第二王子とのラブロマンスがあるに違いないわ!!…………んっ? ふいに誰かの視線を感じた。そちらを見ると……あれ?誰か居たような気がしたけど……気のせいかしら?まぁいいわ。今はそんなことより夜会に集中しないと!


 ああ!楽しみ!!



 やっぱり悪役令嬢がいた!

 最初の悪役令嬢もいるじゃない!

 

 これってやっぱり断罪シーン?二人の悪役令嬢が断罪されるんじゃない?! ゲームで見たあの光景が見られるのね!

 ふふふ。私が正妃になる瞬間をその目にしっかりと焼き付けなさい!!


 



 ――そう、思ってたのに。



「本日より、第二王子を新たな王太子とする!」

 


 …………えっ!?ちょ……どういうこと?!

 どうして第二王子が王位を継ぐことになるの?!






  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る