第15話王宮の侍女頭side
「彼女はクロエ・ライト男爵令嬢だ。いずれ私の妻になる女性だ。未来の王妃だと思って仕えてくれ」
「初めまして、クロエです。仲良くしてくださいね」
王太子殿下に集められた侍女達は一様に困惑しております。無理もありません。ブランシュ様が手を引いた今、王宮の使用人の数はかなり減っております。派閥の長、筆頭公爵家が王太子殿下から手を引いたのです。派閥の者達は挙って辞表を出して王宮を後にしました。殿下は御存知ないのでしょうか?
「王太子殿下、よろしいでしょうか?」
「どうした?」
「そのような御無体な命令は聞き入れることは出来かねます」
「なにっ!?」
「ただいま、女官と侍女のみならず侍従や護衛の数も激減しております。少数で王宮を維持している段階で
「なっ!!? クロエは男爵令嬢だ!! これほど確かな身元はないだろう!!!」
「おそれながら、それは殿下が申告しているだけでございます。王宮は引き入れ宿ではございません。どうしてもと仰るのなら王宮の管理事務所に申し付け下さい」
「か、かんりじむ?」
唖然とされている王太子殿下。こちらが驚きです。どうして御存知ないのですか?王宮は誰が出仕しているのか、そして誰が住んでいるのか、誰の紹介で来たのかを明確に分かるように管理されております。住まうにしても許可が必要なのです。そう決まったではないですか!!十年近く前に!!!
下働きの者達でさえ知っているシステムをどうして王族が知らないままでいるのか理解に苦しみます。先ほどから殿下の隣でぽかんと口を開けている女性。彼女が王太子殿下を誑かし堕落させた浮気女だと思っておりましたが……どうやら殿下ご本人が最初から愚者だったようです。嘆かわしい。優秀な公爵令嬢が隣にいらっしゃたので今まで目に見える失敗をしてこなかったと言う事ですか。
私は王太子殿下が怒り出す前に王宮の仕組みについて説明いたしました。
聞き終えた殿下は納得のいかない表情でしたが規則は規則です。たとえ王族とはいえ規則を無視する事はできません。
「仕方がない。クロエ、暫くホテル暮らしになるが構わないだろうか?」
「私はユベールと一緒ならどこでも構わないわ」
ならば、最初から王宮にくるなと言いたいです。
「ありがとう。苦労させてすまない」
「ううん。ユベールが頑張っているのはよく知っているもの。私は全然気にしないから」
苦労しているのは王宮に出仕している者達です。乳繰り合っているだけの二人の何が苦労ですか!頑張っている?はっ!冗談も体外になさいませ!!
「クロエ、これからも二人で頑張っていこう」
「もちろんよ」
一体何を頑張るのでしょう?
そもそも何かを頑張った形跡がこの二人にあるのでしょうか?謎です。
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