第2話 夏休みはイベントが一杯

 そんな事があった後、夏休み中に幾度かプール開きがある。

 本当は、お盆までだったりしたが、中学校のプールを借りているので色々あったようだ。


 小学生特に低学年用の日は、プールの半分しか水が入っていない。

 一年と二年も一緒だから、仕方が無い。

 そのため、水遊びで終わりそうだが、三年生は必死だ。

 今年、水泳で二五メートル泳げないと、来年も下級生と一緒にチャプチャプしなければいけなくなる。そう、満水のプールには二五メートル以上泳げるのが、必須要件なのだ。


「おい頑張れ、水中で鼻から息を吐いて、腕を上げるときに口で息を吸う」

 幸い俺は、泳げる。

 クロールは微妙だが、平泳ぎなら得意だ。

 なぜなら、どこかのおバカな親父が、そんなことでは船乗りになれないと、張り切ってスパルタ教育をしたから。自分は、電気技術士なのに。


「結心。駄目そうなら、平泳ぎにしよう。平泳ぎならずっと息ができる」

 そう結心は、息継ぎが出来ない。

「うーん。クロールの方がかっこいいけど、泳げるのが先だよね」

 そう言って、平泳ぎを教える。


「手は、胸から前へ真っ直ぐ。そこから横へ広げて、再びお腹から胸へ」

 足を抱えて、まず手だけを教える。

「そうそう。それで今度は、足の方を蹴るのと、手の動きを合わせる」

 足から、手を離しお腹の所で、支える。

「手でかいて、キック。手でかいて、キック。そんなにあわてて息をしない。それにそんなに馬鹿みたいに顔を上げるな」


 基本的に、今の深さは足が十分付く。

 あまり上半身をあげると、足が付いてしまう。

「うーん。手がこう行って。足が」

 教えていて、自分でも分からなくなってくる。

 ちょっと自分でも泳ぐ。


「ああ、そうか。手でかくときに、足を曲げて蹴るときに手を前に伸ばす感じだ」

「やっているよぉ」

「出来ていないから沈むんだよ。ちょっと足だけで泳いでみて」

 当然、顔を上げるから足は沈み、足をプールの底にぶつける。

「痛っ」

「あーごめん。お腹を支えるよ」

 だがお腹だと、まだ足が沈む。

 もうちょい下か、手をずらす。


 すると、数回したところで、突然結心が溺れる。

 あわてて抱える。

「大丈夫か?」

「うん。大丈夫だけど」

 そう言ってもじもじする。


「どうしたトイレか?」

「違うから。大丈夫」

 そう言って、また泳ぎ始める。


 そうして何とか、泳げるようになった。

 だけど、完全にへろへろになったようだ。

 気がつけば、もう人がいない。

「そこの二人、早く上がりなさい」

「はーい上がります」

 そう言って、プールから出る。


 上がるときにも、力が無いようなので、結心のお尻を押し上げる。

 掴んだ瞬間、ビクッとしたが上がれた。


 あわてて、更衣室に入る。

 すると、何故か中学生のお姉さん達が着替えていた。

 開放中はこっちが男用だったが、時間が押したので変わったのだろう。

「ごめんなさい。僕の荷物がそこに」

「ああごめんね。こっちを男の子が使っていたのね。もう一つは使ってないけど。此処で着替えても良いのよ。手伝ってあげようか。君、新興の子」

「そうです」

「やっぱり。お町の子は、小さくても垢抜けているわね。弟とは大違い」

 そんなことを言いながら、脱がされる。


「きゃー。まだかわいい」

「そう。昔って男子の、こんなのだったよね」

「最近は違うの?」

「うん。見せて貰ったら、皮被ってなかった」

「いつ見たの?」

「祭りの時」

「ねぇねぇ。したの?」

「内緒」


 そんな話で盛り上がっていたので、その間に着替える。

 お姉さん達、裸なんだもの。お股にも毛が生えているし色々違った。


 声もかけずに、更衣室を出る。


 ぼおーっと待っていると、結心が出てきたが、足がぷるぷるだったので、手を繋いで帰った。



 そして、こっちの生活にも慣れてきて、中学校に上がる。


 さすがにペア制度は無くなったが、まあ仲は良い。

 相変わらず、勉強を教えている。


「ねえ昔さ、そう三年生の時。お祭りの時見たのって覚えている?」

「うん。ああ。あれか」

「あれってね、授業で習ったの」

「授業で? そんなの習っていないぞ」

 そう言ったら、結心がちょっと考える。


「男子は、スポーツしていた時。女子はもうあまりしないうちに、子どもが生めるようになるから、その。作り方とか避妊とか習うの」

「そうなの?」

「うん。それでね。習っていないことも、詳しい子がいて教えてくれたの」

「ふーん」

「七海ちゃん。あんまり興味ないの?」

「子どもって言っても、あんまりピンとこないしな」

「ほら女子って、早い子って、五年生くらいから胸もおっきくなるし、その生理も来るのよ」

 そう言いながら、赤くなる。


 恥ずかしいなら、言わなきゃ良いのに。思うだけで言わないけどね。

 凄く機嫌が悪くなるから。


「それでね。その子に習って、自分でしてみたの」

 そう言って、うずうずし始めた。きっと言いたくて仕方が無いのだろう。

「何を?」

「その子は、おなにーとか言っていたけど。気持ちいいのよ。凄く。男の子もするんだって?」

「いや。したことないよ」

 そう言うと、びっくりした顔になる。


「ほんとに?」

「うん」

「女の子の胸とか気にならない?」

「いやそれは、なるけどさ」

「触ってみる?」

 また、結心が考えなしの思いつきを言い始めた。

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