親ガチャ(翔と知子)

彼女が居なくなった理由

 僕には幼馴染みがいる。

 もう彼女から連絡は無くなってしまったが、それでも僕にとっては幼馴染みだ。


 子供の頃から家が近所。

 こっちは庶民だけど、向こうはお金持ち。

 幾つものホテル? を経営しているらしい。

 保育園で、ママさんグループができて、幾度かおうちにお呼ばれした。


 その後、ともちゃんは僕の事を気に入ってくれたのか、一緒に遊ぶようになった。


 ともちゃんのおうちに行くと、ゲームやケーキ何でもあった。

 だから、たまに僕のおうちに来る事があるけど、ほとんどは、ともちゃんちへいっていた。


 やがて、大きくなりともちゃんは、中学受験をして別の学校へ通う事になった。

 僕も、と親に泣きついたが「無理よ」と一言で終わってしまった。


 結果別の学校へ通う事になったが、それでも連絡はするし、お互いによく遊んでいた。

 中学生での、発情いや違う初恋も、見事にやって来て、僕はともちゃんと付き合う事になった。


 といっても、中学生。たいしたことは無い。

 お金もないし。

 でも二人が付き合いだした頃に、ともちゃんのお母さんが変に機嫌が悪くなってきた。その変化をともちゃんに言うと、

「うんごめんね。お母さんは、あんまり翔とのこと。嬉しくないみたいなの」

 そう言ってうなだれる。


「それって、家がお金がないからかな」

「うーん。そうなのかな?どうか分からないけど。今私が通っている学校ってね、お父さんがどこかの社長とかばっかりいるから、おかあさん。そういう人たちと仲良くしているからかな。この前、自分の価値を考えろ。自分で下げるなって叱られたの。自分の価値って? 下げるって、私何かしたのって聞いても言ってくれないし」


 うん最近、ともちゃんの家に行って、お母さんに見つかると。追い返されはしないけど、お菓子は出なくなって、睨まれるし、少し遅くなると、早く帰らなきゃ駄目って言われるんだよね。それも、言われる日と言われない日があるし。


 そんなる日、泣いたスタンプがやって来て、返事を書く前に取り消された。

 そんな事が、月に数回来始めた。

 僕は聞こうと思ったが、会ったときの彼女は普通で、聞く事もなく過ごした。


 やがて、秋になりある日。

 少しふらふらとしながら、僕の家にやって来た。

「体調が悪いの?」

「うん少し」

 そう言いながら、僕にぎゅっと抱きつく。


 そして涙を流す。

「どうしたの」

 と聞いても首を振るだけ。


 やがて数日後。

 彼女の親が営業しているホテルが、改装されていた。

 あれ? 彼女が、古くさいけど、直すお金。

 何処も貸してくれないって、言っていたのに。

 やめて潰す感じじゃなく。どう見ても改装だよね。


 数週間で、派手な外観から、落ち着いた雰囲気の建物に改装されていた。


「ホテル直したんだ」

「うん。中見る?」

「ああ。行こうか」


 僕たちは、勝手知ったる感じで、裏から中へ入る。

 従業員用の、エレベーターで上に上がり。

 さらに、従業員用の出入り口から部屋へ入る。


 そう。ホテルと行っても昔で言うラブホ。

 前はピンクのライトや、鏡張り結構小さな頃は楽しかった。

 知識が増えて、ちょっとびっくりしたけれど。


 それが、結構豪華になって雰囲気が変わった。

「改装してから、ぽつぽつお客さんが増えてきたんだって」

「じゃあ、勉強部屋に使えなくなったな」

「そうね。それに、ここには来たくないから、これで最後ね」

 そう言って、またこそこそと部屋を出る。


「今はねレジャーホテルとか、ファッションホテルにブティックホテル呼び名が変わってコンセプトによって内装も変えるみたい」

「ふーん。そうなんだ。それじゃあ、あれだけ改装するのって、随分かかったのじゃない?」

「多分ね。でもクリスマスとか、お正月。それに成人式とかで回収ができるってお母さんが説明していたから、大丈夫じゃないかな」


「ふーん。そうなんだ」


 そんなことを言っていた彼女だが、春前に引っ越して行ってしまった。


 結構小さな頃から、経営は芳しくなく。色々大変だったようだ。

 それで無理をしてともちゃんを私立に入れ、その伝手の中で乗ってくるお金持ちを数人お母さんは確保したようだ。


 小規模融資は多分お母さんが体を張ったようだが、改装ではともちゃんとおねえさんも体を張ったようだ。


 最初は、お姉さん達がされるのを見せられ、泣きスタンプを送ってきたようだ。


 そして秋のあの日、どうしても断れなくなったらしい。


 そして、改装はしたが、返済できるほどの客足は戻らず。

 不渡りからの倒産。


 ひどい事に、お母さんが、金策のためやった事につき事情を知り。お母さんと別れ、お父さんは出て行ってしまったようだ。

「何とか早く、お姉ちゃんと家を出て、暮らそうと思うの。お母さんはまた、私たちを利用して、何とかしようと思っているみたいなの」

 そう言って、お母さんから盗んできたスマホを見せてくる。


 特にパスワードは掛けられておらず、撮られたビデオデータが残されていた。

「これお母さん、幾人かに写真を送っている。それも内容はおどしだよ。すごく、まずいんじゃないか。お母さんと一緒にいちゃ駄目だよ」

「分かっているけど、保護者っていうのが必要だもの。あと数年あればお姉ちゃんが成人できるから。そうすれば」

 そう言って顔を伏せる。


 その時すぐには、対応方法について僕は何も言え無かった。

 自分の、無知さを呪った。


 でも、少ない知識から、スマホのデータを僕のPCへコピーして、「隠されたときにはこれを持って警察にいくんだ」

 そう言って、なるべく目立たない大きさの、USBスティックメモリにコピーをして渡す。


「わかった。ありがとう」

 そう言った後、少し悲しそうな顔をしながら。

「こんな事お願いできないのは、分かっているけど。でも。あのね」

 そう言いながら、彼女はもじもじする。

「あんなおじさんとしか、思い出がないのは嫌なの、こんな汚されちゃったけど思い出をくれない? あの後、病院には行っているから大丈夫だし」

「でも、本当に大丈夫? あの後。かなり精神的に辛いって、さっき言っていたじゃないか」

「もう。だからなの。翔が良いなら。しばらく会えなくなるから思い出をちょうだい。ちなみにチュウはしていないから。初めて。えへ」

 そう言って、涙を流す。


 そっとキスした後。彼女がはっと思いついたように、

「もう一回。撮っておかないと」

 自分のスマホを取り出す。

「でもそれ、お金がなくなったら売られるんじゃないか?」

「あっそうか。そうだよね」

「僕ので撮って、プリントアウトしてあげる」

「あっ。ありがとう」

 そう言って、もじもじし始める。



「どうしたの?」

「いや、色々焦って。全部しゃべっちゃって、落ち着いてくると、急に罪悪感と恥ずかしさがぱーっと来て。うん」

 ブチブチ言い出した彼女に、キスをする。


 片手で、撮影。

「あーうん。客観的に見ると恥ずかしいねこれ」

「私の顔じゃない。だめ逆」

 もう一度撮影。

「よし。二枚ともちょうだいね」

 そう言って、にししと笑う。


「やっと少し、調子が戻ってきたね」

「あーうん。ありがとう」

 もう一度、キスをする。

 後は彼女の好きにさせた。


 そしてその後。彼女は、僕の周りから姿をけす。

 近所では、夜逃げをしたと噂になっていた。

 すぐに、コミュニケーションアプリにメッセージを送っても、既読にならなくなった。


 だけど僕は、彼女の最後に見た笑みと、はにかむ笑顔。

 それを、忘れることはない。

 


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一話だけとなりました。

この元になるような話を、当然シチュエーションは違うのですが、まあ見たので。

この日本で、多くなっている事実だそうです。


それと関係あるのか、性感染症も多いようです。

気を付けましょう。

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