とある討魔官の記録

 これは、今から33年前に起きた大災害に関する貴重な記録である。


 ***


 今、私は歴史の中にいる。この未曾有の大惨劇の記録を残さねばならないと思い立ち、ペンを取る。


 1990年7月29日

 東京・京都・福岡にて妖怪の大群を確認。索敵部隊によると各都市に少なくとも1万体以上の妖怪を確認した。


 7月30日

 内閣総理大臣から「大禍たいか」が宣言される。討魔庁の広域殲魔課、特域殲魔課に加え、自衛隊が共同で鎮圧に当たることになった。

 また、政府はこの災害を『百鬼夜行』と命名した。


 8月1日

 自衛隊第1師団がほぼ全滅。その他の師団も大きな損害を出す。日本政府はアメリカ政府に軍の派遣を要請。


 8月2日

 特殲隊員であった東雲家当主、東雲しののめまさるの戦死を確認。妖怪の数は増え続けている。


 8月4日

 討魔庁、自衛隊の死者が述べ5万人を超える。政府は東京・京都・福岡の3都市を封鎖。首都を一時的に静岡に移す。


 8月8日

 アメリカ軍の派遣が承認される。民間人の死者数の概算が公表され、9万人と計算された。現在も被害は拡大中。


 8月10日

 横須賀から出港したアメリカ軍空母、ロナルド・レーガンが海洋に出現した妖怪、『海坊主』により撃沈される。その他、日本に派遣されたアメリカ海軍の艦船が次々に撃沈され、在日米軍以外からの救援が絶望的となる。


 8月15日

 東京に敷かれた最終防衛ラインが突破され、神奈川が攻撃を受ける。神奈川に置かれていた防衛隊は玉砕した。


 8月17日

 東京からの連絡が完全に途絶える。また、特殲隊員3名の死亡を確認。上層部は部隊の再編を開始。


 8月18日

 福岡にて、これまで未確認だった超巨大妖怪を確認。映像解析の結果、体長は少なくとも300メートルを超える。交戦した特殲隊員2名が戦死。


 8月20日

 残存する4名の特殲隊員を『海坊主』討伐に充て、成功。1人が戦闘不能の重傷を負う。


 8月30日

 海上での行動制限が無くなったことにより、アメリカ軍が上陸。民間人の救助に当たった。


 9月1日

 作戦本部はアメリカ空軍による、3都市への爆撃を承認。取り残された民間人及び討魔官、自衛隊ごと街を焦土化した。妖怪への効果は認められなかった。


 9月6日

 鎮圧部隊の死者が米軍を含め16万人を超える。討魔庁の精鋭部隊はほぼ戦闘能力を喪失した。国連は核攻撃による『浄化作戦』の検討を開始。


 9月10日

 最後の特殲隊員の死亡を確認。政府は「龍神の巫女」に戦闘参加を要請。

 国連軍による核攻撃開始までのタイムリミットは9月30日までとなった。


 9月15日

「龍神の巫女」が戦闘に参加。特に強力な妖怪が多かった京都戦線に加わり、5時間程でこれを鎮圧した。


 同日

 東京からの妖怪の群れが静岡に到着。この司令部に到達するのも時間の問題である。私は討魔官として為すべきことを


 ***


 以上は静岡に置かれた作戦司令部に残されていた、血染めの日記の中に残された記録である。これより先の記述は無い。

『百鬼夜行』はその後、「龍神の巫女」の活躍により終息。


 巫女は代償として命を落とし、しばらく「龍神の巫女」が空席となった。

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