第6話 床下の下
「わぁ‼」
高い場所からトランポリンの上へ真っ直ぐに落ちていったら、きっとこんな具合だろう。
ばいん! ばいん!
コミカルな音を立てながら、ユウタは何か柔らかいものの上で、身体を弾ませていた。
「なんだぁ? これ」
なかなか止まらない弾みに、思わず笑い声を上げてしまう。くすぐられているような感覚だった。
ワンワン!
近くであの犬の鳴き声が聞こえる。
――アイツも一緒に落ちてきたのかな
ようやく身体は弾まなくなって、ユウタは自分と周囲の状況を把握しようとした。
「え? どこだ、ここ?」
暗い床下にいたはずなのに、周囲は明るい。電気の明るさではない。これは、太陽の明るさだ。
「えっ? キノコ?」
自分が今腰をおろしている場所は、巨大なベニテングダケの傘の上だった。
ワンワン!
犬の声は、下の方から聞こえる。そちらを見下ろすと、キノコの根本にあの犬がいた。
「どこなんだよ、ここ? どういうこと?」
どうやら屋外のようだ。
ユウタは巨大なキノコから飛び降りると、茶色い土の上を犬を追いかけて走り出した。
犬はユウタを導いているようだった。
引き離すことなく、後方の彼のことを待つように、時折止まってはユウタのことを振り返った。
森の中だった。
先程のベニテングダケを始め、ユウタは図鑑や絵本でしか見たことのない植物が生えていることに気づいていた。そしてそのどれもが、彼の知っている植物の大きさではない。巨大なのだ。
しばらく行くと、目の前が開けた。
森を抜けたようだ。ユウタは高い城壁の前に立っていて、白い犬は遠吠えのような高い声で鳴いている。
「ええー? なんだよ、これ。かっこいー!」
鳴き声が止むと、大きな城門が左右に割れて開いた。
まるでRPGの世界だ。中世ヨーロッパ調の建物が並ぶ街が、ユウタの眼の前に広がっているではないか。
ドキワク☆メーターは、ギュイーンと急上昇を始めていた。
ワンワン!
再び走り出した犬を追って、ユウタは街の中へ飛び込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます