第10話

【ワートンダイスランダー】


 世界に武力による血の争いが無くなったのは丁度13年前。

 ワートンダイスランダーと呼ばれるこの世界は四角にバツを入れたような

四つの大国に分かれていた



一つ・【森翠国リーフリリア】

 大陸の国領土四位の森に囲まれた国は、人間種の他に半獣種カジュードという種族と共生し、争いを好まずも異種族との助け合いで力と繁栄を築いた国。


 豊富な資源と恵まれた立地もあって王都を囲む森林は戦争による被害や、

影響は一番少ない独立国。



二つ・【帝紅国ハートレリア】

 大陸領土二位の国であり、他の小さな村や四大国に属さない小さな国々との貿易が盛んで、流通による物資や人の動きが一番活発な国。

 軍事力にも力を入れ、発展途上国でありながら他の国からも一目置かれて隣土からも支持率が高い。


三つ・【法黄国ダイヤモンドダイス】

 大陸領土一位の平野を有する広い法国。

 平地領土だけでなく泉や川、渓流といった地理に恵まれており、軍事力こそあまり持っていないが王都の傍の鉱山からは金の採掘が行われるなど最も財力に優れた国である。

 その財力の余波により娯楽や賭博などといった豪遊が流行り、王族、貴族などの融資者、権力者からは水と華の都といわれている。


四つ・【漆国スペードファルシオン】

 大陸領土三位の国と大陸一の剣俊(けんしゅん)を有する国として有名な一国。

 高い山の一角に王都を構えるこの国は寒地としても知られており、農業による食料物資の生産が厳しい代わりに国土最強の軍事力を持つ、

 その食料生産不足を補うために隣国ダイヤモンドダイスと協定関係にあり、物資と交換に国の治安維持を助勢することで互いに支援を行っている。




  そうして小さないさかいがありながらも国々は平和な日々を送っていた。

 しかしその平和は長く続くものではなかった。


 あるときスペードファルシオンがハートレリアに進軍し、

武力による制圧活動を開始したのである。


 目的は領土の拡大を目的とした侵攻、事実上の世界征服。


 ハートレリアも武力をもってこれに応戦。


 突如戦争の火蓋は一国の理不尽によって切って落とされた。

 

 スペードファルシオンがダイヤモンドダイスから物資の供給を受けていることを知っていたハートレリアはでダイヤモンドダイスにも兵を進める。

 

 世界は力の拮抗した国々の戦によって多くの民が犠牲となり、

大国に挟まれた小さな国や村は双国の拠点の奪い合いに巻き込まれ、

火の沈まない日々が続いた。

 

 そんな血で血を洗う戦混の渦へと歴史を沈めていく世界に見かねた

 【厄災の塊】


 後に【ジョーカー】と呼ばれる存在が現れ、戦地の地形や季節を悪戯に壊変。

 

 彼の気まぐれにも思えるような壊変は厳しい環境変化での生活に強かった

スペードファルシオンの軍に利を与え、

戦局はその悪戯によって大きく傾きハートレリアは防戦一方を余儀なくされてしまったのであった。

 

 しかし、この事態に森翠国リーフリリアが立ち上がる。

異世界から召喚されたという騎士は半獣種カジュード率い、

スペードファルシオン軍の勢力を押し切り王都まで攻めあげた。

 

 その騎士こそ【アリス】である。

 彼女の圧倒的な力と勇士に世界は震撼、

スペードフォルシオンは降参し、

戦争はようやく沈静化に向かったのだった。


 当時スペードファルシオンに好待遇を受けていた【ジョーカー】

を追い詰めたアリスは、


 ジョーカーから自身の命を見逃す代わりにどんな願いでも三つ叶えてくれるランプを差出し、さらに自身は戦争は望んでいないと弁明。

 

 これをアリスは受託。

そしてアリスはその願いの力を使い、

世界に戦争を禁ずる盟約と制約を定め、

ゲームが好きなジョーカーの提案の元、

全ての争いや戦いにおける勝敗はゲームによって決定することとなったのだった。

 

 その盟約の監督者及び観測者としてジョーカーを、

 永遠にゲームのルールそのものに縛り付けるという条件も盟約に加えながら。


 そして二つ目の願いに、自分が元いた世界に返るという願いを叶え、

 最後の願いを抱いたまま元の世界に帰ったのだった。

 

 こうして長きに渡る戦いの歴史に、

 殺戮禁止の盟約の礎を築いた世界が出来上がったのである―――








 以上がルルティアの話のおおよそである。

 途中各国のおいしい名産物の話や、

 名所に行ったときのびっくりした体験談などが入り何度も脱線しかけたが、

 ここまでのこの世界の状勢を知ることが出来た。

 もちろん聞き足りない事ユウマには数ほどあるが、とりあえず目の前の食事に手を付ける。


 「でもアリスが帰ってきてくれてうれしかったよ!私も皆も毎日あの日の戦いの話するもん。」

 

リーファは耳をぴょこぴょこと動かしにっこり笑う。


「そう・・・私も嬉しいわ」


しかし言葉とは裏腹にアリスに同じような笑みはない。


「でもなんで帰ったのにもう一回帰って来たんだ?。忘れものでもしたのか?」


「忘れ物・・・そうね・・・忘れたというか忘れられたに近いかな・・・」


彼女は質問の返事に困った表情で言葉を濁す。


 「この話には続きがあるんです。」


何かを察したかのようにすかさずルルティアが注目を集める。


 「ゲームによって統制し、殺戮による戦争を無くすって話ですよね。それじゃ別にそこまでピンチじゃないんじゃ・・・」


 「ユウマ様も経験されましたよね・・・ミレディとのあの一戦を。」


 「命をかけた戦いがなんとかってゲームですか?。」


 「はい、この世界は殺し合いによる戦争は無くなりましたが、無くなったのはそれだけ、戦争の道具は武器からゲームになっただけで今も各国の敵対心と戦争によって失った方々の復讐心は心に深く根付いています。

 そしてアリスという世界の英雄がこの世界を去り、今まで武力という力の概念が消えたこの世界は何をしていいのか、何を頼ればいいのか分からなくなってしまったのです。」


 日はすでに沈みかけ、雲に映る小金色が冷たい床を薄らと照らす。


 「そんな決めたゲームも行われることのない空虚な世界に飽いたと、

 【ジョーカー】は再び戦争の火種を起こしたのです。

 《世界を全て手に入れたなら、アリスのように好きな願いを一つ叶える》  

 と・・・そうしてゲームがよりおもしろくなるようにと四大国の王にに世界の秩序すら凌駕する三つの神器をそれぞれ渡しました。」


 すると彼女は三つの小さなガラス細工をテーブルになら並べる。それはそれぞれ装飾を被った小瓶のように見える


 「この三つこそ戦争に怯えた者たちを再び戦地に誘い、

復讐に燃えるもの達の心の灯火をたちまち業火へと変えてしまったのです」

―――

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