322 飲酒量
皇帝とフレドリクにこっぴどく怒られたフィリップは、ボエルの膝枕で甘えまくっていたけど、ボエルは母性本能なんて持ち合わせていないので心ないツッコミをしている。
「殿下が陛下に会おうとしなければ、怒られなかったかもしれないのにな」
「確かに……もうちょっとあとだったら、もう少し落ち着いていたかも?」
今日手紙を出したことは、バットタイミング。城ではここ最近になって答辞の噂が流れていて、ちょうど朝に皇帝たちの耳に入ってしまったのだ。
「てか、なんで会おうとしたんだ?」
「ちょっと相談があってね~……」
「それはできたのか?」
「うん。好きにしていいって許可はくれた」
「あんなに怒っていたのに……陛下は殿下に甘いんだな……」
「全然甘くないよ~~~」
皇帝たちは怒ってはいたけど、フィリップの話は最後に聞いてくれたらしい。それは平民をメイドとして雇いたいという相談だったので渋い顔をされたけど、経費削減とその額を提示したから、なんとか許可が下りたのだ。
というか、フィリップに無茶振りした上に怒り過ぎたから、皇帝も悪いと思って許可を出したというのが真相らしい。
「あ、そうだ。城に戻ってからメイドの話を聞いてなかったから、今日明日は噂を集めて来てよ」
「うっ……最近あんまり絡んでなかったから、心穏やかだったのに……」
「さっき散々僕のこと笑ったでしょ~。それぐらいやってよ~」
ボエル、やっぱり男の中のほうが居心地がいいらしい。しかしフィリップの命令というか仕返しなので、嫌々女の
ボエルは言われた通り、メイドから話を聞くと夜に噂速報。ルイーゼのせいでまた不仲になっていると思っていたが、それはなかったそうだ。
まだ情報は少ないが、これはフィリップのおかげと言うよりフィリップのせい。卒業間際にやったダンスや答辞がメイドの中でも噂されていたし、牢獄送りの話題が面白すぎたらしい。
それならばよかったとフィリップも安心したので追加の調査。翌日のおやつの時間にボエルの発表だ。
「お兄様たちも引っ越してたんだ……」
「ああ。右翼の一番端、代々皇太子殿下が次期皇后様と暮らす屋敷らしい」
追加の調査とはフレドリクを含めた逆ハーレムメンバーのこと。ただ、噂話はほとんど話題に上がっていないそうだ。
「カイたちはなんか言われてない?」
「あの3人のほうが噂が多かったぞ。めちゃくちゃ優秀で出世しまくってるって。それで殿下に取り次いでくれないかって要望があった」
「なんで僕に言うかな~? 僕に言うなら僕でしょ??」
「殿下が相手にしないどころか、親から金を騙し取ったからだろ」
「あ、そんなことあったね~。僕も大人になったからお金稼ぎたいし、誰か言い寄って来ないかな~?」
「詐欺を仕事にするな! オレは手伝わないからな!!」
逆ハーレムメンバーも面白い情報が出て来なかったのでボエルをからかうフィリップ。そんなことをしていたら夜になり、ペトロネラが訪ねて来たので渋々招き入れる。
「あ、ボエルはもうちょっと残って」
「はあ……」
フィリップとペトロネラのやり取りなんか見たくもないボエルを残したら、フィリップはペトロネラのワインを奪い取った。
「なんで取るのよ~」
「僕も大人になったから、そろそろ飲んでみようと思ってね」
「本当? 殿下と飲むの夢だったのよ~。ジュルッ」
「なんでヨダレ拭ったの!?」
ペトロネラは獲物を見る目になっているけど、フィリップはボエルにワイングラスを持って来させて注がせた。
「今日は実験でどれだけ飲めるか調べるけど、1本でやめるね」
「えぇ~。殿下なら3本はいけるって~」
「素人にどんだけ飲まそうとしてんの。あとボエル……僕が倒れたら担いで逃げて。絶対に、ネラさんに奪い取られるな」
「えぇ~。寝てる子に何もしないわよ~……チッ」
「舌打ちしてんじゃん!? 頼んだからね!?」
「お、おう……」
以前、ペトロネラが殿方に一服待って子種を奪う本を熟読していたからの警戒。乾杯してからフィリップはワインに口をつけると、キャロリーナと練習で飲んでいたワインよりかなり美味しいから何杯でもいけそうに感じた。
2杯目も空けると、フィリップの顔は火照って来たが、ここまではキャロリーナとの訓練で、普通に走れる許容範囲と知っている。
「ふう~……ちょっと回って来たかな?」
「殿下~。いける口じゃな~い。グビグビ」
「いや、ネラさんもちょっとは合わせてくれない? そんなんだから、お見合い上手くいかないんだよ」
「ひっど~~~い! グビグビグビグビ~」
「飲み過ぎ。なんかあった?」
フィリップが3杯目も飲み終えると、ペトロネラはラッパ飲み。2本目に突入してるところを見ると、フィリップの適当にあしらった言葉が事実だったみたい。
その愚痴を聞きながらフィリップも4杯目を飲み終え、ボトルは空になった。
「う~ん……1本ぐらいはなんとか動けそうかな?」
そんな中、フィリップは歩いたり屈伸したりしているので、ボエルは不思議そうに見ている。
「なあ? なんで動きの確認なんてしてんだ??」
「そりゃ~……」
フィリップは夜遊びした時にお酒を飲んだ場合のためにやっていたのだから、少し言い淀んだ。そこにペトロネラの助け船。
「子種いただき~~~!!」
いや、ただの酔っ払いが飛び掛かって来ただけだ。
「こういうこと~~~!!」
「な、なるほど……」
フィリップの子種を奪おうとペトロネラが追いかけ回すので、ボエルは「皇族って大変だな~」と、間違った知識が植え付けられたのであったとさ。
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