十三章 卒業前も後も夜遊び
297 大量の手紙
フレドリクの結婚式も披露宴もパレードもなんとか乗り切ったら、フィリップの仕事も完全に終了。酔っ払いのペトロネラにめちゃくちゃ引き留められたけど、フィリップは逃げるように寮に帰った。
3学期が始まるまでもう数日あったので、夜の街に繰り出し夜遊び溜め。奴隷館のキャロリーナには少し城の情報を流していたけど、それよりもショタ成分が不足していたからかフィリップは貪り食われていた。
冬休みが終わると、フィリップはついに最終学年の最後の学期。なのに始業式は、やっぱり寝てる。だから皆は呆れ果ててる。
授業が始まっても寝て過ごし、1週間で早くも仮病を使い出して夜の勉強しかしていない。
夜の街はルイーゼ効果でまだまだ浮かれた感じになっているので、華やいでいる。必然的に女性が多く外に出ているから、フィリップは狩り時だと素人ばかりに手を出していた。
そんなことをしていたら、早くも中間試験は終了。フィリップはベッドに寝転んで仮病に切り替えようと考えていたら、ボエルが手紙の山をドサッと置いた。
「なにそれ?」
「学生からだ。男子からは、護衛や側近。女子からは卒業パーティーのパートナーになりたいと渡された。たぶん、結婚も含まれてると思う」
「ああ~……ラストスパートが始まったか~」
フィリップが3学期も全然部屋から出て来ないので、帝都学院の生徒は作戦変更。手紙を出して、フィリップとお近付きになろうと必死になっているのだ。
「どうする? 全部このまま返却するか?」
「あら? ボエルも僕の気持ち、読み取れるようになったんだ~」
「これぐらいならな。他はサッパリわからん」
ボエルは面倒くさがりのフィリップを3年間見て来たのだから、面倒な貴族からのお誘いぐらいはお手の物。フィリップもようやく執事っぽくなったと拍手だ。
「ま、全部読んで見るよ」
「は? なんで……」
「ボエルのドヤ顔が気に食わないんだも~ん」
「おお~い。
「それそれ~。ボエルのその顔、大好きなの~」
でも、そんなボエルは好みではない。わざと逆の行動をして、ボエルの負け顔を引き出すフィリップであったとさ。
手紙があまりにも多いので、翌日からフィリップは堂々と授業をサボって読み物。男と女で分けて、ボエルが追加で持って来た物は下のほうに足してもらう。
「なあ? 授業出たくないからって手紙を読んでるわけじゃないよな??」
「まっさか~。暇潰しアイテムが手に入ったからに決まってるじゃん」
「言ってる意味、一緒だからな!」
ちょっとした疑問を口にしたら、フィリップはこの始末。ボエルはイライラしながらお茶をいれて戻ったら、フィリップは手紙を読みながら笑っているのでこれも腹が立つ。
「何がそんなに面白いんだか……」
「え~。けっこう面白いよ~?」
「要約すると、職をくれか嫁にしてくれって言ってるだけだろ?」
「そそ。それがいろんな言い回しがあるもんだと感心して読んでるんだよ。そっちに分けてるヤツが、面白かった手紙。絶対に面白いから読んでみな」
「そこまで言うなら……」
ボエルが騙されるだろうと思いながら読んだ手紙は、同学年の男子の手紙。最初は「どこが面白いんだ?」と読んでいたら、途中からツボに入った。
「ククッ……これ、護衛になりたいだけだよな? クククッ……愛の告白みたい……クククッ」
「おお~。殿下の揺れる
「ブハッ! 誰だそんな面白いこと書いてるヤツ!! あはははは」
「トールビョルン君。こいつ、僕のこと完全にディスってるよね?」
「殿下の頭が綿毛って! あはははは」
貴族男子の手紙、プロポーズっぽい言い回しが多数。フィリップはムカついた手紙から抜粋して朗読したら、ついにボエルは耐え切れなくなって腹が捻じれる。
フィリップはこの気持ちがわかってもらえなかったので、不機嫌に新しい手紙を読むのであっ……
「フー……フー……」
「飛んでかないから!?」
「あはははは」
笑いが落ち着いたボエルはフィリップの髪の毛に息を吹き掛けるので、ますます機嫌が悪くなるフィリップであったとさ。
フィリップが「ハゲたらボエルのせい」と説教して、ボエルもやり過ぎたと素直に謝罪。
それでもまだニヤニヤしてるから説教が延びていたが、ボエルが体で機嫌を取ったらすぐに通常のフィリップに戻った。
「こっちの仕分けされた手紙は、女子からのか?」
「うん。女子のもプロポーズっぽいの多いけど、面白いのは少ないよ」
「いや、それ、ちょっと羨ましいんだけど……読んでもいいか?」
「自分がキュンキュンしたいんでしょ~? 将来を約束してる人がいるのに、いけないんだ~」
「別にキュンキュンしないし! 参考にするだけだし!!」
「参考にするなら、男子のほうなのでは?」
逆ギレするのでフィリップは正論で返したら、ボエルはシュンとする。その顔を見れたらフィリップも鬼ではない。
とっておきの手紙を一通、ボエルに手渡した。
「とっておきってことは、殿下でも惚れそうになった文章ってことか?」
「まぁ……そうかな?」
「マジか……それは期待できそうだな」
ボエルは珍しく乙女の顔をして読み出したが、すぐに手紙を落とした。そして拾いながら青い顔を向ける。
「なあ? 呪いって文字でビッシリなんだけど……」
そう。フィリップのとっておきの手紙とは、呪いの手紙。
「たまに『死ね』とか『殺す』って文字も出て来るよ? 間違えたのかな??」
「ちっとはビビれよ。アホなのか??」
そんな恐ろしい手紙なのにフィリップは怖がりもしないので、ボエルは肝が据わっていると思うよりも頭がおかしいと決め付けるのであったとさ。
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