十二章 最終学年になっても夜遊び
269 5年生
「ありがとうございました!」
ボエルはプロポーズが上手く行ったらしく、フィリップが自室に帰って来たら頭を下げた。
「そっか~。彼女、喜んでくれたんだね」
「ああ。これも殿下のおかげだ。感謝してもし足りねぇ」
「いいよいいよ。面白いモノ見せてもらったし」
「面白いモノ??」
「オレと一生一緒にいてくらちゃい! ちょっと噛んでたよね?」
「どどどど、どこから見てたんだ!?」
「アソコ~。マッサージは見てないから安心してね」
「やっぱりオレのことオモチャにしてるだろ~~~!!」
フィリップが覗いていたと暴露するので、感謝激減。しれっと嘘をついたのも信じられず。エロしか頭にないフィリップが情事が始まって我慢できるワケがないと思ってるもん。
そのせいでボエルは「感謝し足りない」と言っていたのに「感謝しすぎたから返せ!」と終日怒り続けたのであったとさ。
その次の日、フィリップはついに帝都学院最終学年の5年生となった。
「「「「「……」」」」」
始業式はフィリップがずっと寝続けているので、出席者は「この馬鹿皇子は……」って目。昨日はボエルを宥めるために、マッサージを頑張りすぎて寝不足なんだって。
短縮授業もいつものように寝て過ごせば、リネーアがゆさゆさ揺すって起こしてくれた。
「ふぁ~……ごはん?」
「そうですけど……今日はまた一段と眠りが深かったですね。春休みは遊びすぎたのですか?」
「いや、ボエルが怒ってね~……」
「それは殿下が悪いのでは……」
「ま、幸せになるんだから、ちょっとぐらいお裾分けしてもらってもバチは当たらないでしょ」
「あ……それでしたら、私も何かお裾分けしないといけませんね」
「リネーア嬢からは貰えないよ~。モブ君でもからかってやるから気にしないで。てか、お祝い品まだだったね。なんか欲しい物ない? 貴族を騙して巻き上げたお金がまだまだ余ってるんだよね~」
「えっと……詐欺をしたお金で、ですか? そこからお話を聞かせてください」
そんな汚いお金で祝いの品を渡されては、喜ぶに喜べない。いちおうフィリップは言い訳してみたけど、どう聞いても詐欺だったので、リネーアも断固拒否だ。
「それにしても、殿下の縁談話ですか……大変だったのですね」
「そうなの。もう辟易だよ~……ん?」
食堂にでも行こうかと、2人で喋りながら廊下に出たところで問題発生。
「「「「「キャー! フィリップ殿下~~~!!」」」」」
帝都学院の女子生徒が押し寄せていたのだ。
「これってもしかして……」
「うん。城で上手く行かなかったから、娘を送り込んで来たみたいだね……」
「ど、どうします? ていうか、逃げないでくださいね? 私、この中に1人残されたら生きて帰る自信ありませんから!」
フィリップの答えはわかっていたから、リネーアも必死だ。
「ボエル貸してあげるから……」
「無理ですよ~」
「オレもこの人数は無理だ。逃げんなよ!」
ボエルの答えもわかっていたフィリップは逃げるフリをしたら首根っこを掴まれたので、諦めるしかない。
「ボエル、リネーア嬢たちを送ってあげて」
「いや、オレは殿下の護衛だし…わかりました!」
「押し問答するなら僕の答えも待ってくれまいか?」
ボエル、まさかの護衛放棄。フィリップなら命令してでもリネーアを守れと言うはずだと先読みしすぎて……というか、女子生徒の目が血走っているから、ボエルも怖いみたいだ。
「ランチ一緒にしたい人、こ~の、ゆ~び、と~まれ~~~」
「「「「「はいはいはいはい!!」」」」」
というわけで、フィリップが女子生徒を惹き付けている内にボエルたちはコッソリ校舎を抜け出して、寮まで逃げ帰るのであったとさ。
それからフィリップは、女子ぎゅうぎゅう詰めの食堂でランチ。いちおう耳を傾けたらどうやら派閥があるらしく、そのトップが話をできるように、下の者がフィリップが逃げないように囲んでいるみたい。
そのせいで、フィリップはガックシ。フレドリクなきいま、今回こそモテていると思っていたのに親や上の指示に従っている女子しかいないのだからセクハラする気も失せた。
さらにいうと、トップの女子たちがフィリップを取り合ってケンカばかりするので、話もままならない。
食事を終えたフィリップは、人知れず消えるのであった……
「ただいま~」
「どっから帰って来てんだよ」
フィリップがバルコニーから部屋に入ると、ボエルのツッコミ。心配して待っていたリネーアとマーヤもウンウン頷いてるけど、フィリップは無視だ。
「てか、あのあと大丈夫だったか? ちゃんと女子たちを宥めて帰って来たんだよな??」
「そんなの無理に決まってるでしょ。逃げて来た」
「あの大群から? どうやってだ??」
「トイレの窓から。置き去りにして来たから、まだ待ってるんじゃないかな~? あ、リネーア嬢、逃げるならいまかも? ここにいたら押し寄せて来るよ~??」
「そ、そうですね! 失礼します!!」
このままフィリップの部屋にいては外に出られなくなるので、リネーアとマーヤは焦って立ち上がった。ただ、もうすでに集まっている可能性もあるから、ボエルがドアを開けて確認してからだ。
「さて……どうしたものか……」
フィリップはベッドに飛び込むと、これからのことを考える。ボエルも同じように考えて、アイデアを出してみる。
「陛下やフレドリク殿下を頼ったほうがよくないか?」
「父上たちは自分たちのことで忙しいからな~……」
「じゃあ、極力部屋から出ないとか? 3学期は病欠が多かったから、寄って来る人もいなかっただろ??」
「それもアリだけどね~……てか、3学期はお兄様の婚約発表で女子は元気がなかったような……」
「あぁ~……確かに。全員、動きが鈍かったな」
フレドリクショックで、女子生徒もゾンビみたいになっていたのは事実。それはもう使えない手だ。
「引きこもっていても、ボエルやリネーア嬢が何かされそうだし、出るしかないか」
「それは助かるけど……何か手は浮かんだのか??」
「ううん。体で決めるぐらいしか……」
「ダメだぞ? そんなことしたら、逆に離れなくなるぞ??」
「あ、そか。僕ってテクニシャンだもんね~。下手なフリしてやろっかな~?」
「それ以前の問題だ! そんなことしたら調子に乗ると言ってんだ!!」
ボエルの心配はフィリップに伝わらず。このあとフィリップはずっとエロイ顔をしているので、懇々と説教するボエルであった……
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