242 決闘の行方
審判役のカイが睨みを利かせるなか、両陣営は分かれて会議。フィリップとボエルで、コニーにアドバイスしていた。
「一瞬で蹴りがつくと後々揉めそうだから、5回は受けるんだよ?」
「なに言ってやがんだ。一発でのしてやれ。それで黙らせるんだよ」
「クマは黙っててよ~」
「誰がクマだ! せめて女か男を付けろ!!」
「えっと……行って来ます……」
でも、揉め出したので、コニーはこそこそエスケープ。第二皇子と師匠の間は居心地が悪いみたい。カイの下へと逃げてった。
「コニーも騎士団に入ったんだな。切磋琢磨して、フレドリクを助けてやろうぜ」
「はいっ!」
兄貴分みたいな同級生のカイの言葉にコニーはいい返事。フィリップが見ていたら「覚えてもらえていたから感動してるんだな」とか思われそうな会話だ。
「双方、準備はいいか?」
「「はっ!」」
「はじめっ!!」
こうしてカイの号令で、コニーとシーグルドの決闘が始まるのであった……
「あの~……終わったのですが……」
「「へ??」」
それから2分。コニーがフィリップたちの下へ戻ったら、2人はまだ揉めていた。
「もう終わったの!?」
「見てなかったのですね……」
かわいそすぎるコニー。決闘の言い出しっぺも剣の師匠にも見てもらえていなかったから、肩を落としたよ。
「ちなみにどんな戦いだったの?」
「殿下の言う通り、5回受けました。6回目で、剣を受けたと同時に押し込んだら、彼は……」
「あんなに飛んだんだ! アハハハハ」
シーグルド陣営は遠く20メートル先に人が集まっているから、そこでシーグルドは寝てるのだろう。ダンプで撥ねられたみたいなものなのに、フィリップはよく笑えるな。
「まぁあそこまで飛んだら、もうイチャモン付けて来ねぇだろう。よくやったな」
「よくやった……じゃなくてですね! ボエルさんの時にはあんなに飛ばなかったじゃないですか! だから僕も思いっきり押したんですよ! 完全にやりすぎですよ!?」
「大丈夫大丈夫。アレぐらいで人は死なねぇって」
ボエルの場合は脳筋だから気にならず。勝者のコニーがこんなに焦っているのに笑顔だ。ちなみにボエルが押されても飛ばなかった理由は、単純にパワー。押し負けないクマなのだ。
「てか、モブ君のこと見逃したから、もう1試合やってね」
「だから、アイツはオレの獲物だと言ってるだろ」
「ボクも今日はやりたくないです……」
「えぇ~~~」
いくらフィリップが言っても、事故を引き起こしたコニーは戦意喪失。戦意垂れ流しのボエルを送り出すしかなかったフィリップであった……
第2試合は、ボエルVSウルリクの同窓生対決。カイの開始の号令から、激しい剣戟を繰り広げている。
「おお~。アイツ、ホントにそこそこやるじゃん」
それなのにフィリップはのほほんと批評。それがコニーには気になるらしい。
「あんなの授業でも見れない戦いなのに、殿下は怖くないのですか?」
「僕がやることないもん。あんなことしなくちゃいけない君たちには同情するよ。アハハ」
「フレドリク殿下はやっていたのですが……」
「お兄様も皇族なんだから、やる必要ないのにね~」
怖がらない理由が人頼みだったので、コニーはなんとも言えない顔。フレドリクと比べてもまったくやる気がないので、才能の全てを吸い取られたかわいそうな人だとか思ってる。
「ボエルさん、かなり押されてますね……」
「だね。この1年……その前からかな? あまり剣を振ってなかったみたいだし、戦闘の勘が戻ってないのかもね」
「はあ……ボエルさんが負けた場合は殿下はどうするのですか?」
「ボエルが負ける? それだけは絶対ないよ」
「いや、押されてますよ??」
コニーは負けると思っているので、フィリップはボエルの顔を見るように指差す。
「あの顔が、負ける人がする顔に見えるの?」
「笑ってますね……ちょっと怖いです……」
「僕もボエルが戦うところ初めて見たけど、アレは戦闘狂だよ。負けそうになっても、自分の命と引き換えに相手の喉元噛みちぎって勝利をもぎ取る輩だ」
「うっ……本当にやってのけそうです……」
「ま、今回は必要ないでしょ。ボエルの勝ちだ」
「おつかれ~」
「はぁはぁ……きっつ。だいぶ
息も絶え絶え戻って来たボエルを労うフィリップ。コニーに大盾を使って扇がせているので、「どんな使い方させてんだ」とかツッコまれていた。
「しっかし、不甲斐ないところを見せたな~」
「まぁ現役騎士相手だと仕方ないよ。でも、絶体絶命のピンチになってから逆転してほしかったな~」
「無茶言うな。そんなことしたら確実に負けてる。それでもよかったのか?」
「演出によってはアリだね。いじめっ子をいじめられっ子が倒すシーンは感動しちゃうかも?」
「どっちの味方なんだよ!」
フィリップがボエルをからかっていたら、コニーも話に入って来た。
「殿下はボエルさんが負けるなんて、これっぽっちも思ってなかったですよ! 信頼されてるんですよ!!」
「そ、そうなのか?」
「モブ君、いまその話よくない? からかって楽しんでるんだから」
「
「だからモブ君、黙らないと処刑するよ?」
コニーは処刑と聞いて両手で口を塞いだけど、ボエルはニヤニヤしながらフィリップと肩を組んだ。
「なんだよ殿下。オレのことそんなに信頼してたのかよ~」
「してるしてる。してるから離れよっか?」
「照れんなよ~」
「浮いてるし! 首も絞まってるから~~~」
デレデレのボエルはヘッドロックしたら、身長差を忘れてフィリップを殺し掛けたのであったとさ。
決闘に全敗したシーグルド陣営が手当てを受けて落ち着いた頃に、審判のカイがフィリップたちの下へとやって来て「何してんだ?」とツッコンだので、コソコソと整列。
カイから決闘の勝者が告げられる。
「勝者、フィリップチーム! ……ところで何を賭けた決闘だったんだ?」
けど、カイは決闘するとしか聞いてないのでこの質問をしたら、フィリップに視線が集中した。
「さあ? ……なんだっけ??」
でも、フィリップも忘れていたので、怒りのボエルが教えてあげる。
「こいつらが地位を使って不正してたから、正そうとしたんだろ。忘れんなよ」
「あぁ~。
「「「「「おちょくる??」」」」」
「うん。決闘は見たかっただけ。だから
唖然呆然。ただ自分が楽しむために決闘させられたのだから、ここにいる全ての者の開いた口が塞がらない。
だがしかし、1人だけ動ける人間がいた。
「フィリップゥゥ~……」
カイだ。馬鹿笑いしているフィリップに、怒りの表情で忍び寄る。
「神聖な決闘をそんなことに使うな! 第二皇子だからって許されるモノではないぞ! その性根、俺が叩き直してやる!!」
「えっと、その……僕、偉いんだぞ?」
「俺はフレドリクに、訓練場で地位を
「てことは~……第二皇子も通用しないっぽい??」
「この訓練場ではな……」
フィリップ、絶体絶命のピンチ。逃げるのは簡単だけど、あまり力は見せられない。
この場にいる全員が「やっちまいな!」と見詰めるなか、カイが距離を詰めたその時、フィリップは閃いた。
「全員、僕の盾となれ! ボエルと上官はアタッカー! 一緒にカイをボコボコにするぞ~~~!!」
「「「「「ええぇぇ~……」」」」」
ここには騎士が10人以上いる。なのでその騎士をムリヤリ味方に付けて、カイと戦うフィリップであった……
「おい! フィリップはどこ行った!?」
「……へ?
「殿下ならやりそう……」
そこまでしたのに、フィリップは真っ先に逃走していたのでカイとボエルはキレて、コニーの忠誠心はだだ下がりするのであったとさ。
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