100 カラフル王子との初接触


 2年生になったフィリップは、最初だけ出席したら仮病を使ってダンジョンに籠り、苦戦しながらも順調にレベルを上げていると、そろそろ中間試験。

 今回はラーシュとダグマーが必死こいて教えたので、最下位は免れた。


「下から3位……」

「あんなにやりましたのに……」

「ゴメ~ンちゃいっ」


 でも、この結果。意気消沈。フィリップがかわいく謝っても、2人はしばらく立ち直れなかったんだとか。



 中間試験が終わっても、すぐに仮病を使ってしまうと変に勘繰られるので、適当に授業を受けるフィリップ。休憩時間になると、あのことを聞いてみる。


「あのカラフル王子って、成績とかどうなの?」

「カラフル王子? あ、小国連合の。あまりいいとは言えないらしいです。真ん中辺りと聞きました」

「あんな簡単なのでその程度じゃ、高が知れてるね」

「殿下は、その簡単な試験で、最下位連発でしたけど……」

「ゴメ~ンちゃいっ」


 ラーシュが蒸し返そうとするのでフィリップはすかさずかわいく謝ったら、毒気が抜けてため息連発だ。


「はぁ~……成績はパッとしませんが、体を使う授業はダントツの上位らしいです。見た目もいいので、女子に大人気らしいですよ」

「へ~……どこかの第二皇子みたいだね」

「どこかの第二皇子は、運動は苦手で人気は権力のおかげだと記憶しているのですが……」

「見た目、見た目! 見た目は僕の勝ちでしょ!!」

「殿下のことだったのですか??」

「ラーシュ君。逆に聞くけど、第二皇子って他に誰がいるの??」


 ラーシュは一向にフィリップと認めずに、平行線が続くのであったとさ。



 それから5時間目が終わって、熟睡していたフィリップを起こすのにラーシュが手間取っていたら、廊下のほうが騒がしくなっていた。

 いま起きたばかりのフィリップは、そのことに気付かずウトウトしながらラーシュに肩を借りて教室を出たら、そこには4人の少年が廊下を塞いでいた。


「お前が帝国の第二皇子か?」

「ん~??」


 赤い髪の毛を立てた少年が問い掛けたが、フィリップはまだ頭がハッキリしてないので、ラーシュが対応する。


「お前だと? このお方を誰と心得る! の大国、帝国が第二皇子、フィリップ・ロズブローク殿下であらせられるぞ! 小国の王子如きが馴れ馴れしく喋り掛けるなど、無礼この上ない! ひざまずき、許しを乞え!!」


 ラーシュ、激ギレである。このためにラーシュは一緒に通っているのだから、やっと出番が来たとドヤ顔してるけど……

 ただし、帝国の高位の者が怒鳴っているのだから、カラフル王子たちもひるんでいる。いまにも足を折りそうだが、青髪の少年はなんとか耐えた。


「ここは子供どうしの学びの場。入学の際にも、学校や寮内では位は関係ないとなっていたのですから、多少の無礼は許されるべきでは?」

「謝罪する気はないと……いいか? 建て前はそうなっているが、ここには明確な位の差がある。殿下の言葉ひとつで、お前たちは退学にできるのだ。これは脅しでもあり、忠告だ。それがわかったなら、さっさと謝罪しろ!!」

「「「「うっ……」」」」


 青髪の少年の言葉もラーシュには通じない。これがカールスタード学院の普通なのだから、最後通告で怒鳴り付けたのだ。


「ふぁ~あ。なに怒ってるの?」


 そこに、フィリップのとぼけた声。こんな騒ぎなのに、ようやく頭がハッキリしたらしい……


「この4人が殿下に無礼なことを言ったので、叱責していたところです」

「そうなの? ま、今回は許してやりなよ……わっ! カラフル王子!? うわ~。近くで見たら、凄い頭だね~。染めてるの??」

「殿下、無礼なことを言われたのも耳に入っていなかったのですか……」


 そして、緊迫した空気はどこかに吹き飛ばした。ラーシュだけでなく、カラフル王子も困っているな。


「さ、先程は失礼しました……」

「よくわからないけど、自己紹介してもらっていい?」


 いちおう青髪の少年は謝罪してみたが、フィリップはどうでもいいこと聞いてる。


「はあ……私はブラオ王国第一王子、バルタサール・ヴァクトマイステルです」

「俺はロート王国第一王子、ロベルト・フロシャウアーです」

「僕はグリュン王国第一王子、トールヴァルド・ヘルツルです」

「我はリラ王国第一王子、ポントゥス・グランバリだ」


 バルタサールの見た目は青髪のリーダー系。ロベルトは赤髪を立てたやんちゃ系。トールヴァルドは緑髪の真面目系。ポントゥスは紫髪ロングの厨二系。

 その自己紹介を聞いたフィリップの感想はと言うと……


「なんか違う」


 とのこと。


「違うとは?」

「もっと派手にかっこよくできない? 決めポーズとかさ~。ポントゥスだっけ? お前、そういうの得意でしょ? みんなに教えてやって」

「なんで我が??」

「その喋り方だよ。隠せてないよ? あとは~……なんか色が足りないな。白が欲しいところだけど……黄色でいいや。ラーシュも、色彩戦隊に加入~。ニヒヒ」

「なんで私まで!?」


 さらには、おかわり。関係ないラーシュまで巻き込んで、自己紹介の練習をさせてるよ。



 5人が練習を終えたら、金髪のラーシュを真ん中に置いて自己紹介の披露だ。


「私はブラオ王国、ブルー!」

「俺はロート王国、レッド!」

「僕はグリュン王国、グリーン!」

「我はリラ王国、パープル!」

「私は帝国、イエロー!」


 5人はなんだかんだあって色で名乗り、腕を大きく回してから、決め!


「「「「「悪は許すまじ。我ら、色彩戦隊ブンテレンジャー!!」」」」」


 ここカールスタード学院に、ブンテレンジャーが爆誕した瞬間であった……


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記念すべき100話がブンテレンジャーに持っていかれてしまった……w

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