032 ボローズ王国の初夜
ダンマーク辺境伯領の西には2ヶ国が隣接しており、フィリップたちを乗せた馬車は北側にあるボローズ王国との国境に到着した。
そこで待ち構えていたのは、多くの兵士。ここはホーコン・ダンマーク辺境伯が対応することになっているらしく、フィリップには絶対に外に出るなと注意して前進して行った。
フィリップは何が行われているのかと馬車の窓に張り付いて見ていたが、遠いし人が多いから諦めてダグマーと喋っている。
「向こうの兵士、うちより多いけど本当に大丈夫なの?」
「はい。カールスタード学院に留学する馬車は攻撃しないと協定で決まっていますので。あの兵士も、ボローズ王国とカールスタード王国の兵士の集合体だと思われます」
「カールスタードの兵士がこんなところにいるの??」
「念の為、国を跨ぐ場合にはカールスタード王国が護衛に入るとのことです。これならば、兵士が揉めた場合も証人がいますから、安全に進むことができるのです」
「あ~……なるほど。
フィリップが納得してウンウン頷いているが、ダグマーは不思議に思う。
「そんな難しい言葉、よく知ってましたね」
「やだな~。小説ぐらい、勉強嫌いな僕でも読んでるよ~」
「勉強をしたほうがよいのでは……」
「アハハ……あ、なんか揉めてない??」
賢さを気付かれたくないフィリップがボケたらダグマーに冷たい目で叱られそうになったので、騒ぎ声が聞こえて来たからこれ幸いと話を逸らした。
「おそらくですが、辺境伯様がボローズ王国のイェルド将軍と揉めているのかと……」
「なんで~?」
「領土問題で何度か兵を出して戦っていますので」
「わ~お。宿敵ってヤツだ。そんなところに足を踏み入れて、本当に大丈夫なの??」
「先ほど申した通り、カールスタード王国の兵士もいますので戦闘にはならないはずです。もしも辺境伯様が帰らなかった場合、全面戦争になりますし」
「ちょっかい出すうちは、まだ大丈夫ってことか……」
「殿下はたまに賢いことを言いますね」
「たまにじゃないよ~? いつも賢いよ~?」
「お
「ひどいっ!?」
ダグマーが勘付きそうだったので、フィリップは演技。というか、本当に賢いので、演技でも馬鹿にされるのはちょっと嫌なので迫真の演技になったから上手くダグマーを騙せた。
そうこうしていたらホーコンが戻って来たけど顔にアザがあったので何があったかを質問したら、イェルド将軍と拳で語り合っていたんだとか……
「思ったより脳筋だったね……」
「はい……これで戦争にならないのが不思議です……」
豪快なホーコンとは、あまり関わらないほうがいいと思ったフィリップとダグマーであったとさ。
ホーコンとイェルド将軍はそれ以降は問題は起こさず、移動を開始する。帝国を移動するより多くの護衛を引き連れて進んでいると、宿場町に到着。
この宿場町は帝国に一番近い町ということもあり、外壁に囲まれて守りが堅そうだ。そこを窓のカーテンを閉めて進んで本日の宿に到着したら、フィリップは周りに見えないように帝国兵に囲まれて最上階の部屋に連れ込まれた。
「仰々しいな~。これじゃあ誰とも喋れないじゃない」
フィリップはボローズ王国にはどんな女性がいるのか見たかったので、ダグマーに文句言ってるよ。
「なにぶん敵国ですので。殿下の顔を見せるわけにはなりません」
「子供なんだからいいじゃ~ん。帰りには大人になってるから、いま見られても関係なくない?」
「それでもです。ここからは窮屈な思いをすることになりますが我慢してください」
「えぇ~~~」
町での唯一の楽しみの女性見学を禁じられたフィリップは、がっくし。部屋からも出られないんじゃ、監禁と変わらない。
それならばと、夜に抜け出そうと考えていたフィリップだが、食事とお風呂の世話を済ませたダグマーが寝巻きのワンピースに着替えて一向に出て行かないどころか、ベッドに入って来たのでさすがに驚いた。
「えっと……これはどういうこと?」
「敵国ですので、しばらくお側で護衛させていただきます」
「つまり、夜のお世話もしてくれるってこと??」
「セクハラです」
「ええぇぇ~~~!!」
つい先程まで全裸でフィリップの体を撫で回していた女性がベッドの中にいるのだから、フィリップは辛抱堪らん。
それに抜け出して夜遊びしようとしていたのだから、興奮して眠れるわけがない。
「あの……ちょっとだけでも……」
「セクハラです」
「触るだけでも……」
「死にます」
「死なないで~~~」
訴えられるだけならフィリップも強行に出たのだろうが、死なれては困る。フィリップはダグマーから離れて眠るのであった。
「ウソ! ウソウソウソウソ! ナイフしまって! ね??」
「危険ですから、寝ている私に触れようとしないでください」
「うんうんうんうん!」
でも、寝付けないから寝息を立ててるダグマーの胸を揉もうとしたら、いきなりナイフが首元に飛んで来たので、そんな気分が吹き飛ぶフィリップであったとさ。
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