016 初めての娼館


「しょ・う・かん♪ しょ・う・かん♪」


 酒場から出たフィリップが消えていた理由は、娼館が楽しみすぎて急いじゃったから。レベルが30以上あるから本気を出すと、オリンピック選手より速く走れてしまうから、一般人では間違いなく追いつけないのだ。

 そうしてやって来たのは、酒場の店主が行き付けではなく店主の友達が行き付けのお店。外観は普通の宿屋みたいだが、入口ではエロイお姉さんが手招きしているので間違いないお店だ。


「ちょっちょちょちょ……ボク、どこ行くの?」


 でも、子供が入るのは間違いだらけのお店だ。なので、焦ったお姉さんにフィリップは肩を掴まれて止められた。


「中だけど……ダメなの??」

「その無垢な表情はダメに決まってるでしょ!?」


 お姉さんはフィリップの笑顔が眩しすぎて見てられないらしい。しかしフィリップも、前世ではお金がなくて入れなかった夢の国が目の前にあるのだから、引き下がれない。


「僕、ハタチなんだけど~?」

「そんな20歳がいるわけない。大人になったら出直して来なさい」

「だから大人なんだって~。女もヒーヒー言わせてるんだって~」

「子供がなんて言葉を覚えてるのよ!?」


 フィリップは女性相手では分が悪い。男だったらボコってなんとかできるのだが、女性では暴力で解決できないので口論となってしまった。


「ピーピーピーピー!!」

「もう黙って!!」


 無垢な子供から出て来ないような放送禁止用語ばかりの……



「うるさいね。何やってんだい」


 そんな揉めに揉めて大声で騒いでいたら、この娼館を切り盛りしている50代ぐらいのドレスを着た強面の女性が出て来た。


「あ、マダム。この子がどうしても入りたいとか言うんで止めてたんだけど……」

「この子って……どう見てもガキじゃないかい」

「だから大人なんだって~。お金だって山程あるんだから入れてよ~」

「……ついて来な」

「やった~~~!!」


 ようやく許可が出たと飛び跳ねてマダムについて行くフィリップ。そうして入った部屋は、ベッドもないのでフィリップはキョロキョロしてる。


「ここでどんなプレイするの??」

「とりあえず座りな」

「あ、待合室か~。どんな子を紹介してくれるのかな~?」


 フィリップはマダムに指差されたソファーに飛び込むように座ると、マダムは対面に座ってキセルを吹かした。


「うちで働く女の子供かい?」

「ん??」

「『ん?』じゃなくて、母親に会いに来たんだろ??」

「なに勘違いしてるか知らないけど、完全に顧客だよ。早く紹介してよ~」

「それ、本気で言ってんのかい??」

「うん。ハタチだもん」

「はぁ~~~……」


 マダム、勘違い。スタッフの子供が母親を探しに来たのだと思って招き入れたみたいだ。


「いいかい? ここは子供が来る場所じゃないんだよ。何をする場所か知ってんのかい??」

「ピーピーピーピー」

「完全に知ってんな!?」


 フィリップは放送禁止用語ばかり言うので割愛。夜の世界に長くいるマダムでも引いてるな。


「仮にあんたが大人だったとして、うちはやめておきな」

「なんで~??」

「うちは安さを売りでやっているからだ。ここだけの話、病気持ちが何人かいるんだよ」

「ああ。性病ね。それは嫌だな~……」


 テンション上がっていたフィリップでも、病気にはなりたくないので諦めの顔を見せた。


「なんで知ってるかは気になるけど……言いふらすんじゃないよ?」

「うん。それは約束するけど、もっといい店紹介してくれる?」

「諦めるという選択肢はないのかい??」

「ここの常連さんに、病気になってないか聞きに行こっかな~??」

「あんた、本当に子供かい? このあたしを脅すなんて……」

「だからハタチって言ってるでしょ。あ、ケツ持ち呼ぶ? そっちのほうが話が早そうだ」


 マダムが睨んでもフィリップは楽しそうな顔だ。


「話が早いってどういうことだい??」

「だって、こういう店ってヤバイ人がバックにいるんでしょ? そのヤバイ人は、同じような店を何軒か運営してるはずだ。てことは、貴族相手のお店もあるかも? そこならかなり安全に遊べていい女もいそうだな~。どんな子いるんだろ~」

「ちょっとは怖がりな!」


 マダムはバックにいる人よりもフィリップのほうが怖くなって来た。


「いいかい? あんたのようなガキは、あたしのバックにいるヤツらからしたら、いいカモだよ。捕まって売られておしまい。少年が好きな変態にもてあそばれるのが嫌なら帰りな」

「だからね。いい店紹介してくれたら帰るって言ってるの。紹介してくれるまで居座るからね!」

「勝手にしな! どうなっても知らないからね!!」


 マダムは優しさから追い返そうとしたけど失敗。とうとう怒って部屋から出て行ってしまった。

 その怒鳴られたフィリップはというと……


「ねえねえ。お姉さん? どんなテクニック持ってるの? あっ! そこのオッサン。どんなことやられたの~?? 聞かせて~~~」


 部屋で待機するわけもなく、娼館内をウロウロして廊下で出会った人に質問しまくってる。


「マダム、アレ、なんとかならないんですか?」

「ほっとけ。ケツ持ちが来たら処理させる」

「それはかわいそうなんじゃ……」

「じゃあ、あんたが相手してやりな」

「子供に病気移せないです!!」


 それを見かねたお姉さんがかわいそうに思っていたけど、自覚症状があるのでフィリップに近付くこともしない。

 それでもフィリップはウロウロして営業妨害をしまくっていたら、ついにマダムもキレた。


「いい加減におし! もう朝になるよ!!」

「あ、もうそんな時間なんだ。また明日来るよ。じゃあね~」

「帰るんか~~~い!!」


 居座ると言っていたフィリップがすぐに帰って行くものだから、マダムは大声でツッコムのであったとさ。


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1日2話更新はここまでです。

これからは、1ヶ月ほど1日1話更新となります。

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