最終話 愉快で騒がしい仲間達と共に――

 霧島の新たな職場 ゼロ分校からの入学式から一週間後――


 時刻は朝の九時をまわったところ――



 ピンポーン――



 とあるマンションの二階 その一室のインターホンが鳴り響く。


「はいはい―― 今開けますよって――」



 ドアを開ける男――



「おはようさん。 修二♪ ちゃんと起きとってエライ♪ エライ♪」


「ああ、つかついさっき叩き起こされたんだが……」


「ん? なんやて?」


「いや……」


「中入ってええか?」


「あ、ああ……」


 なんともバツが悪そうな態度の黒崎。


「ん? どないした?」


「いや、別に……」


 なんや? なんか様子がおかしい様な……


 まあ、ええか!


 そんな事よりも修二も新しい部屋を契約したみたいやし……


 遂に…… 遂に! ど、どどどどどどど同棲や!!!!


 部屋の見学は一緒に見に行ったけど結構広めの三LDK!


 祐真はんの店まで徒歩十分ちょい! 


 ウチの職場からは結構遠いけど通えんくもないし…… もしあれだったら近くの支部に異動もありやし、なんなら治療士として独立も…… いや! 今の仕事と職場も好きやしなあ……


 まあでもこの位の距離ならなんとかなるやろし、まあそのへんは追々考えるとして――




 遂に…… 遂にや!!!


 修二はこれからまた祐真はんのとこで仕事みたいやけどウチは今日非番やしそれに――


 しょっ! しょしょしょしょしょ勝負下着とか! 着けてるし!!!


 こいつが復活してからもなんやかんやでエライドタバタしとったからそれどころやなかったけども、諸々落ち着いてきたし今日こそは!


 怖い位に気合いが漲っている京子!


 だが部屋に入るやいなや、そこには既に意外な来訪者達がいるのであった――



「!!!っ イっ! イステリア様!? それに――」


「おはようございます。 京子さん」

「あっ! おはようございます。 京子お姉ちゃん!」

「あ! 京子おばちゃん! オハヨーです!」


 そう、何故か女神イステリアがお茶を飲みながら座っているのである。


 さらに最高神としてぼちぼち修行中であるアルに閻魔一族 王女のエアリスも一緒であった。


「こら! エアリス! おばちゃんじゃありません! いや実際にはおばちゃんですけどこの位の年の方は例えそうでもオネーサンかオネーチャンって言わないといけないんですよ! それが全世界共通の…… えっと…… セツリ? だそうです!」


 ちなみにそう教えたのはイステリアである。


「! そうなんだ! 凄い! アルお姉ちゃん! やっぱりなんでも知ってるね!」


「でしょ! だって私! お姉ちゃんですから! 大人ですから♪」


「だからエアリスも女性の方にあんまりおばちゃんって言ってはいけませんよ」


「うん♪ わかった! ごめんね! 京子おばちゃん! ホントの事言って! おばちゃんの事ちゃんとお姉ちゃんって呼ぶから! オハヨー♪ 京子お姉ちゃん♪(本人に悪気はありません)」


「ちょっ! ちょっと二人共! !!!!!っ あっ……」


 焦るイステリア!


 当然――



 ブチンっ!!!!!


「…… おはよおおおおおおおおおさああああん!!!!!!!!!」


 バキィィィィィィっ!!!!!!


「がはあああああっ!!!!!!!!!!」

「きゃあああああ!!! なんで私が!?」


 今年一番のカミナリを落とされる二人の大人達(子供を殴るわけにはいかないので保護者と巻き添えという形で黒崎が)――



「いたたた…… うぅ…… 私これでも一応女神なのに……」

「俺に関しては何もしてねえのに……」


「やかましい! ていうかなんなん? この状況!? なんで三人がここにおんねん!?」


「あ~、いやそれが俺もさっき聞かされたんだが――」


「ふふ♪ この僕がそう簡単に君達だけで同棲なんてさせるわけないじゃないか♪」


「抜け駆けなんてさせないよ♪」


「!!!! リーズ!?」


「やあ♪ 京子♪」


「なんでアンタが! …… ん? あれ? アンタどこから…… あれ? そんなとこに部屋なんかあったか?」


「ああ、それが実は――」


 ここで頭をかき呆れながらも状況を説明する黒崎――


 実は彼が京子と同棲する為の部屋を契約したという情報をすぐに掴んでいたリーズレット。


 当然彼女が黙っているわけもなく、その資金力を活用して大家を買収!


 マンションごと買い取って大家をそのまま管理人にして採用!


 さらに自分の部屋を確保する為に隣の部屋を借りていた住人を高級マンション一年分家賃無料に敷金礼金無料という破格の条件を出して即日に追い出し…… もとい快く出て行ってもらい、黒崎の部屋との壁をぶち抜いて改修工事(ちなみに壁は自分で破壊したが改修は業者を呼んで一晩で無理矢理やらせるという強行策に出た)を迷いなく決行!


 こうして、リーズレットのセカンドハウスが晴れて完成したのであった。


 ちなみに例の養成学校の校長室と自身の部屋の一つとを繋ぐ『ゲート』をアルセルシアに頼んで作ってもらい設置!


 アルセルシアも面白そうだからと快く協力!


 二人の間に妙な空気が発生したら、即飛んでいける様にしつつ、自分が手が離せない時にはアルやエアリスを送り込んで二人の邪魔をする様にとの徹底ぶりであった!


 ちなみにイステリアはただのキッズ達の保護者としての付き添いである。


 そして今朝! まだ寝ていた修二に対して転移術からのキッズ共によるダブルボディプレスにより強制的に目を覚ませられ、そして今に至るというわけであった――


 勿論この後、京子とリーズは大喧嘩してしまうのであったが黒崎とイステリアがなんとか仲裁――


 とりあえずはもう契約してしまったしリーズレットも引き下がらないから暫くは三人での共同生活となったわけである。


 それにしてもここまで女難の相が出ている男もまた珍しいものである――


 彼もまだまだ苦労するのは誰の目から見ても明らかなのであった――



 それはともかくとして、黒崎がそろそろ出勤の時間だったので全員で部屋を後にするのであった。


 ちなみにリーズも、例の養成所での入学式での仕事は済ませたので、もう暫くは先日の決闘での傷の療養に専念するとの事で暫くは黒崎についてまわる事にしたのであった。


 勿論、黒崎は京子からしっかりとクギをさされるのだが……


 こうして、黒崎の住むマンションを出た一行は祐真の店まで商店街を通って行く事になった。


 そしてその商店街を通っていく中で様々な店の人達が黒崎へと声をかける。



「! よう! 解決屋の兄ちゃん! なんか買ってくかい!?」


「おう! おはようさん! そうだな…… そしたら…… 林檎買ってくかな。 祐真のやつに店来る前に買って来てくれって頼まれてたし…… とりあえず五個頼むわ!」


「あいよ!」


「あ~!!! 黒崎さん! なに朝っぱらから美女達に囲まれてハーレム状態になってんすか!!! 死ね! このリア充クソ野郎!!! もしくは俺に誰か紹介しろ!!!」


「いやいや! こいつらの性格知らねえからそんな事言えんだろうけど、ぶっちゃけそんな良いもんじゃねえからな! 後、そのリア充って二百年位前の死語だから! もっと言うとお前みてーなナンパ野郎には紹介しねえ!!!」


「性格がなんやって? 修二?」

「僕も聞き捨てならないな~♪ こ~んなおしとやかで綺麗な美女を捕まえて♪」


 笑顔で凄みを利かせる京子とリーズレット。


「―― ハイ。 ソーデスネ。 シツレイシマシタ……」



 …… お淑やかとは一体……



 生きた心地がしない黒崎。


 そしてそんな彼に更なる追撃がっ!


 今度は見た目、二十代中頃位の茶髪のスラッとした美女が自身のクレープ屋から黒崎に声をかける。


「あら♪ 修二君じゃないの♪ それも団体さんで♪ ウチのクレープ新作買っていきなよ♪」


「! クレープ!♡」

「! クレープ!♡」


 甘い物の誘惑に反応するキッズ達。


 そしてこの二人も……


「…… 仲…… 良さそうだね…… 修二……」

「美人やしな…… 修二……」


「おっぱい大きいしね…… まあ僕のが大きいだろうけど……」

「スタイル良さそうやもんなあ…… まあウチには及ばんけど……」


「あの…… ホント…… そういうのじゃないから…… あの、お二人共…… 殺気…… 収めてくれませんかね……」


「つかアンタ復活してまだひと月やろ!!! どんだけ顔広まってんねん!!!!」

「ホントだよ! この浮気者!」

「だからそんなんじゃねえっつの!」

「クレープ! クレープ! クレープ!」

「修二! こういうのは大人の男性が奢るものですよ!」

「あ~! もう! はいはい! わかりましたよ! ったくこのキッズ共は! アル坊に至ってはタメ口だし! それじゃ新作六人分頼むわ!」

「まいど~♪」


「ごっ! ごめんね! シリ…… 修二! 後で私が払うから!」


「ああ、いいって! イステリア。 まあ、たまにはな」


「そ、そう? ありがとね。 修二!」




 というか、この子……


 なんだかシリウス時代よりも苦労してないかしら……


 昔から人を大きく惹きつけるものがあった子だったけれども……


 タラシが更に悪化してるというか……


 人気がありすぎるのも辛そうというか……


 う〜ん…… これはどのみち、ちょこちょこ様子を見に来てあげた方がよさそうね……


 はあ…… 本当にいくつになっても心配させる子なんだから……



 割とガチで黒崎の事を心配をするイステリアであった。


 そしてそうこうしてるうちに祐真の店へと到着する面々――


 すでにぐったりしている黒崎。



「おう! おはようさん。 はは! こりゃまた大勢で!」


「…… 家からここまで近い筈なのにどえらい疲れたよ……」


「これから仕事だっつの! さっさと手伝え!」


「へえへえ――」


 店の仕事を手伝う黒崎。


 イステリア達も本日は店でまったり過ごす予定みたいである。



 そして時刻は進み午後十三時半頃――


 カラン! カラン!


 店のドアが開いた先――


 そこには桃色のショートカット 人の見た目的には三十代前半位――


 丸い眼鏡とそばかす似合う美女が訪れ、店の中へと入ってくる――


「いらっしゃい!」


「お煙草はお吸いになられます?」


「ああ、いえ! 吸わないですけど…… テーブル席でも大丈夫ですかあ?」


「ええ。 大丈夫ですよ。 お一人様ですか?」


「いえ、後もう一人――」

 カラン! カラン!

「やっほー♪ 祐真君♪」


 一件連絡を入れていた為、時間差で店に入ってきたのは閻魔大王ことユリウス・アルゼウムであった!


「! 大王様!? どうしてこんな時間からウチの店に!?」


「ふふ。 いや実は、そこの彼女に『とある事』を頼まれてね。 そこで君達の事を紹介させてもらってここへの道案内も兼ねてエスコートさせてもらった次第さ」


「後、君のコーヒーが恋しくなってしまったのでサボ…… じゃなかった。 少々小休止をしにね♪」


 どうやらこの女性は閻魔大王の知り合いらしい――


「俺達の事を…… それに頼まれ事って事はもしかして……」


「ああ―― って、あれ? 黒崎君は?」


「ああ、あいつなら今二階で休憩入ってますけど――」


「ならウチが呼んでくるわ!」


「ああ、すまない。 ありがと。 京子君」


「いえいえ!」


 そうやり取りして二階へと上がっていく京子。


 ちなみにリーズと、レティとグライプスも後から来て、部屋で黒崎とゲームのストゼロ大会をやっていた。


 そして京子に連れられ、皆でわいわい騒ぎながら店へと降りてくる――



「はよせんかい! お客さん待たせとるんやから!」


「わーってるよ!」


「兄上♪ 来たんだ♪ 来るなら来るって言ってくれればいいのに♪」


「はは! やあ妹よ♪ 新たな愛の巣の住み心地はいかがかな♪?」


「部屋は悪くなさそうだよ♪ 今度兄上も遊びにおいでよ♪」


「おいコラ クソ大王……」


 なんで止めなかったと言わんばかりの殺気をユリウスへと向ける京子。


「!!! ひっ! きょっ! 京子君!? まっ! まあまあ! その話はまた今度という事で! ねっ! 今はお客さんを連れてきている事ですし!」


「む~…… それもそうやな……」


 ホッとする閻魔大王。



 そして――



「やれやれ…… どいつもこいつも騒がしいというか…… お待たせしてすんませんね。 ここのバイトをやってる黒崎という者です。 が――」


「どうやら俺等の『もう一つの方の仕事』に用がある様で…… 大王様のお連れ様って事みたいですし――」


「……」


 黒崎の顔を何故か感慨深そうな表情で見つめるその女性――





「? あの……」


「―― はっ! はい! あ~ えっと! すいませんね~! ガラにもなくちょっと緊張しちゃってまして~!」


「―― そうですか……」


 ? なんだ? この女……


 上手く言えねえが随分と『不思議な気配』というか…… なんだ? この感じは?


「! ……」

「! ……」


 妙な気配の質に違和感を感じる黒崎。


 そしてほぼ同時に祐真とリーズレットもその違和感を感じ取るが『それ』がなんなのかは今の段階ではまだわからないでいた……




「あの~……」


「! ああ、すいませんね…… ところで――」


「間違ってたらすいません…… どこかでお会いした事、ありましたっけ?」


「! …… ごめんなさい……」


「え?」


「あの…… 私…… 年上の渋みが効いたダンディなオジサマが好みなのでその…… 貴方のお気持ちには……」


「ってナンパじゃねえよ!」


「あははは! 失礼しました〜! いや~! 大王様が言った通り! キレっキレののツッコミですねえ~!♪」


「でしょお!♪」


「って、アンタの入れ知恵か! 勘弁してくれよ! 大王様!」


「修二……」

「修二……」


 過敏に反応する京子とリーズレット。


「だからそんなんじゃねえっての!」


「ははは! ごめんなさいね~! ちょっと揶揄い過ぎちゃいました〜♪ あ! それとさっきの質問ですが――」


















































「初対面だと思いますよ…… 少なくとも私には覚えがありませんね――」


 

「…… そうですか――」


 気のせい…… か?


 気さくに接している様にも見えて、上手くはぐらかされた様な気もするんだが……


 でも確かに見覚え自体はねえんだよなぁ……


 これでも一度見た顔はそうそう忘れる方でもないんだが……


 にも関わらず…… なんだ? このなんともいえねえ感覚は……


 それにこの女……


 大王様からわざわざの紹介ってのも『ワケあり』案件の可能性もあるしな――



 まあいい。 今は置いておくか――



「―― 失礼しました。 それで話をもどしますが――」


「―― ええ…… 本日は『解決屋』 黒崎修二さんに『ある依頼』をお願いしたくて、大王様からのご紹介を受け、ここに来ました!」


「―― なるほど――」


「大王様の紹介ともなれば尚更お力になりたいとは思っています」


「ですがまずはお話をお伺いさせて下さい。 依頼を受けるかどうかは話を聞いてから決めさしてもらいますが――」


「どうぞ。 あちらの席にお掛け下さい。 今なら当店自慢のとびきりのバリスタが入れた至高のコーヒーをサービスしますよ」


 そう言って奥のテーブル席へと紳士的に案内をする黒崎。


「! はい! よろしくお願いします! 黒崎さん!」








 こうしてまた今日も解決屋へと頼る依頼人がまた一人――



 またしてもクセのある依頼の予感が……



 それでも――



 黒崎修二は今日も己が道を駆け抜ける――



 愉快で騒がしい仲間達と共に――






         完



 

 *     *     *



 こんにちは♪

 アニマルです(^^)


 よ〜〜〜〜〜やく! 長かったこの作品も終わりました〜!!!💦💦・:*+.\(( °ω° ))/.:+


 こんな長いお話に最後まで付き合って頂いた方々! 本当にありがとうございました!


 まさか初投稿作品で80万近くの文字数とか……


 一年半もかかってしまった……



 やり過ぎたかも……



 そしてとにかく疲れた……


 仕事と両立してのこの長さは……


 楽しいけど体力が限界……


 でも後ちょっとだけ頑張ろう!


 この後オマケエピソードを一話投稿して、それをもって! この作品はひとまずの完結とさせていただきます!


 ただこの作品をここまでお読み頂いた方々はもうとっくにお気付きでしょうが……


この作品は一つの終わりを迎えましたが、この『物語』自体はまだ完結しておりません。


 メインストーリーとはあまり関係がない部分を無理矢理この作品内で回収すると、ただくどくなるだけで更に長くなってしまいそうなので敢えて残している伏線も多くあります。


 なので、その点についてと今後の執筆活動については後日近況ノートにてお知らせしますので良かったらそちらもチェックしてみて下さい♪


 そして良ければこの後のオマケエピソードも近日投稿するので、合わせてお楽しみ頂けたら幸いです(^^)


 ちなみに時系列は大戦後まで遡って、黒崎が復活するまでの間に起きたユリウスとエレインのプチエピソードになります(^^)


 どの登場人物達も好きだったけど、この二人は特に好きだったので最後まで楽しく描かせていただきまーす♪


 それでは! 本日はこれにて失礼させていただきます!


 最後にもう一度!


 ここまで読んでいただいた読者の方々!


 本当にありがとうございました( ^∀^)!

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