第208話 三人の時間……
「…… 逝ったか……」
「ええ。 彼らしい…… 己の信念にどこまでも忠実な見事なまでの生き様でしたね――」
「彼も悔いはないでしょう――」
「ああ、そうだな――」
満足そうな
そして彼女等と共に彼の最期を見届けたミリア。
そんな彼女にアルテミスは声をかける。
「ミリア嬢…… 大丈夫ですか?」
「はい…… 大丈夫ですよ。 アルテミス様。 お気遣いありがとうございます」
「―― そうですか……」
「ところで城の方や各方面の終戦処理は大丈夫ですか? ヴァランも深手を負っているみたいですし――」
「ええ…… ですが今は――」
「私達に気をつかう必要はありませんよ。 こうして最期に成長した貴方とも会えて僅かながらですが言葉も交わせた――」
「今の私達にはそれで十分ですよ」
「ねえ? レオン?」
「ああ! 俺も一目会えて嬉しかったぜ! ただアンタはまだ生きてて! そして今! アンタにしかできない事がある……」
「城の皆はアンタの指示を待ってんだろ? 俺達の事はもういいからアンタはアンタの仕事を全うしてくれ!」
「! いえ、しかし!」
そう言いかけたミリアであったが、すぐに二人の真意に気付き、言葉を止める。
気をつかわせてしまったのは自分の方……
ここで二人の気持ちを無碍にするのもちがう――
ここは二人の心遣いに甘える事にした――
「…… わかりました…… お二人共…… ありがとうございます――」
「アルテミス様…… レオン殿…… 本当に…… お世話になりました――」
「貴方方と同じ時代を歩めた事を…… 私は誇りに思います」
「後の世は我等にお任せ下さい―― 本当に…… お疲れ様でした――」
「ええ。 後の事は頼みます そして…… どうかお幸せに――」
「元気でな!」
「はい―― それでは…… 失礼します!」
最期にそう言葉を交わしミリアは通信を切った――
閻魔の城 とある部屋――
「ふう――」
一息ついた後、ポロポロと涙が零れ落ちるミリア――
皆の前だからと気丈に振舞ってはいたが、やはり思うところはあったのであった。
ゼクス―― 本当に…… 最期まで馬鹿な
お疲れ様…… そして…… ありがとう――
さようなら―― ゼクス――
少しの間、それも声を押し殺してだが一人、涙を流すミリアであった。
そして隣の部屋――
一度は治療を受け、城に帰還したヴァランであったがやはり魂魄を燃焼させた反動は大きく、あれからまた体調を崩し意識を失い倒れてしまったのである。
そして彼が意識を失う前、ミリアに連絡を促したのもまた彼であったのだ。
二人に後悔してほしくなかったから……
そのまま意識を失った彼を空き部屋の中と扉の前にそれぞれ二名ずつ念の為に護衛をつけてベッドに寝かしていたのであった。
そして隣の部屋から出てくるミリア――
ヴァランの部屋に入ってきて、彼女は部屋の中に待機させている方の護衛を外へと外させる。
「―― ちゃんと話せたのか?」
「! 起きてたの!?」
「今しがただがな――」
横になり眼を瞑ったまま、ミリアに話しかけるヴァラン。
「それより―― 思いの丈は全てぶつける事はできたか?」
「ええ――」
「なら、いい――」
「だけど…… 貴方も大概変わってるわね」
「普通、昔馴染みとはいえ敵の…… それも妻の元カレの所に顔を出させに行く?」
「自覚している。 だがあんな奴でも私の大事な友人である事に変わりはないからな――」
「それに…… 悔いは残すものではないしな――」
「そうね…… 本当に……」
「ねえ…… あなた……」
「ん?」
「難しいかもだけど…… アンタは長生きしなさいよね――」
「ふっ…… 無論だ」
「―― ありがとね。 あなた――」
「うむ」
「それはそうと、しばし全体の指示出しは任せた。 私も動けるまで回復したらすぐ戻る」
「って回復してもしばらくは寝てなさい! それでさっきぶっ倒れたんでしょうが!」
「そりゃどうしても貴方の意見が必要な時は申し訳ないけど起こすけど、とりあえず私がいいって言うまで横になってなさい! いい!? わかったわね!?」
「うっ! …… うむ……」
「よろしい!」
両手を腰に置き、途端に凄むミリアに圧倒され、ぐうの音も出ないヴァランであった。
やっぱり旦那の方が尻に敷かれている様である。
「それとさっき雫経由で魔女の里にも連絡を入れたわ。 魂魄へのダメージなら治療士よりも魔女の人達の分野みたいだし、後で私もまた一緒に来るからそれまで貴方は休んでて」
「了解した」
「とりあえず私はこれから天界全域に無線と連携を通じて終戦の知らせを流してくるわ!」
「ああ、頼んだぞ」
「ええ、それじゃ…… また後でね――」
そう言って部屋を後にするミリア――
部分的に止まっていた、昔馴染みの三人の時間……
その時が、
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます