第八話 ショタは団長さんと遊びまくる
団長さんが僕の指を握る。これで団長さんは、僕の遊びからは逃げられない。
「さぁ、団長さん。憲兵とシーフを始めよう。仲間のモンスターさんにタッチすることができれば、牢屋から解放されるからね。特別サービスとして10秒待ってあげるから」
「ラル君、何を言っているのよ! そんなことをしていないで、早く団長を捕まえなさい!」
離れた場所から見守っているソフィーお姉さんが、団長を捕まえるように言ってくる。けれど、お姉さんの言うことは聞けない。だって、それは僕の作ったルールを破ることになるから。
「1、2、3――」
ソフィーお姉さんの言うことを無視して、数を数える。
「くそう。いったい何が起きているんだ。とにかく、あいつらを解放すれば良い」
団長さんが牢屋の前に走ると腕を伸ばす。
「9、10! それじゃあ今から捕まえるね。悪いシーフは、憲兵の僕が牢屋行きにさせてあげるから!」
10秒数え終わったタイミングで、団長さんが大猿のモンスターさんの腕に触れた。その瞬間、大猿のモンスターさんとゾウさんのモンスターさんの間に鉄格子が現れ、大猿さん側の檻が消える。
「なぜだ! どうしてエレファントエンペラーの方の檻が消えない!」
「だって、ゾウさんの方にはタッチしていないじゃないか。タッチできた人しか牢屋から出られないのが、ケイシーのルールなんだから」
ステージの床を蹴って走る。そしていきなり消えた牢屋に不思議に思っている大猿のモンスターさんに触れた。その瞬間、再び檻が現れてモンスターさんを捕まえる。
「あーあ、せっかく10秒も待ってあげたのに一緒じゃないか。これじゃあ詰まらないよ」
頬を膨らませて不満であることを団長さんに伝える。けれど、おじさんは悔しそうに歯を食い縛っていた。
「くそう! くそう! くそう! 何がケイシーだ! 最初から直ぐに捕まえるつもりだったくせに! こうなったら遊びは終わりだ! 私の全力でお前を叩き潰す! 地下に待機させていたモンスターたちよ!出番だ!」
団長さんが声を上げる。するとステージの床にヒビが入った。その後蜘蛛の巣状に広がっていき、穴が空くと中からたくさんのモンスターさんたちが現れる。
「そんな! 団長のモンスターは他にもいたの!」
ステージの下から現れたモンスターさんたちを見て、ソフィーお姉さんが驚く。
けれど、逆に僕はワクワクしていた。
こんなにたくさんのシーフ役のモンスターさんたちがいれば、憲兵役の僕は楽しめるよ!
「いくら何でもこいつら全員を捕まえることなどできない。何せ、飛行するガーラースは、捕まえることはできないだろうからな」
サーカス小屋内を、黒い鳥のモンスターさんが飛んでいる。確かにあれでは捕まえることはできない。でも、もし捕まえることができたら嬉しくってたまらないだろうなぁ。
「タイガーサーベル! お前の俊足なら、あのガキを一瞬で噛み砕けるはずだ!」
団長さんが右手を前に出して、虎のモンスターさんに命令する。口からはみ出ている大きい2本の牙は、刃物みたいに鋭い。
確かにあんなものを突き刺されでもしたら、即死するかもしれない。
「行け!」
団長さんが命令をすると、素早い動きで僕に近付く。けれど、近付いた際に影が前の方に来ていた。だからモンスターさんの影を踏んで動けないようにする。
「あれは影踏み氷鬼とか言う遊び! ケイシーをしながらでも使えるのか!」
僕に牙を突き立てようとした格好で動かなくなったモンスターさんを見て、団長さんが驚く。
まぁ、ふたつの遊びを同時にできることは教えていなかったから驚くのも無理はないよね。
「だけど、それには弱点があることを知っている! 影を踏んでいる間は動くことができない! お前はただの的だ! お前たち、一斉にかかれ!」
再び団長さんが命令すると、たくさんのモンスターさんたちが一斉に襲いかかってきた。
「僕に夢中になるのは良いけれど、熱くなりすぎるのも良くはないよ」
「ラル君に近付くな! ファイヤーボール!」
離れた場所にいるソフィーお姉さんが、火球の魔法を使って僕に近付くモンスターさんたちに当てる。
火球が直撃したモンスターさんたちは後方に吹き飛び、床に転がる。
だけど完全に倒せた訳ではないようで、火傷を負っている状態で立ち上がった。
「そんな! 私のファイヤーボールを食らって立ち上がるなんて」
自分の魔法に自信があったみたいで、立ち上がるモンスターさんたちを見て、ソフィーお姉さんは驚く。
「私のモンスターはそこら辺にいるモンスターと一緒にしないでもらいたい。ファイヤーボール程度で倒されるほど、弱く育ててはいない」
思ったよりも、団長さんはモンスターさんを強く育てているみたい。こうなたら、僕も本気で遊んだ方が良いかな?
「モンスターが現れたと言うサーカス小屋はここか!」
次はどんな遊びで団長さんを懲らしめようか考えていると、サーカス小屋の入り口から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
そちらに顔を向けると、長い青髪にキリッとした目付きの女の人が立っていた。
シルヴィアお姉さんだ。だけどお姉さん以外には他に人はいない。まだローザは、ギルドで助っ人を呼んでいないみたいだ。
「シルヴィア!」
「シルヴィアお姉さん!」
お姉さんの名前を叫ぶと、ソフィーお姉さんと声が被る。
「ラルスにソフィーお前たちも居たのか。ここからはわたしも加勢する。ここにいるモンスターを倒し、元凶を捕まえる」
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